Microsoftは2024年6月に、AI処理をローカルで実行できる「Copilot+ PC」を発表した。Copilot+ PC対応モデルのPCは企業の生産性向上にどう寄与するのか。
Microsoftは2024年6月に、AI処理をローカルで実行できる「Copilot+ PC」を発表した。この製品はどのような機能を持ち、どのように企業の生産性に影響するのか。
Copilot+ PCは生成AIと高度なAIモデルへのアクセスを可能にする製品であり、Microsoft Copilot製品群および成長中のテクノロジーの一部に位置付けられている。「Microsoft Copilot」はWebベースの生成AIチャットサービスとして、さまざまなユーザーリクエストに応じた回答を生成する。一方で、Copilot+ PCはこのサービスをデスクトップの作業フローに統合することに特化する。
Copilotは「Copilot in Edge」など無料で利用できるものもあれば、「Copilot Pro」や「Microsoft 365 Copilot」といった有償のサービスもある。AIをローカルで実行するPCの新ブランド「Copilot+ PC」は企業に大きな可能性を提供する一方で、コストの増加も伴う。
Copilot+ PCは、NPU性能などMicrosoftが指定するハードウェア要件を満たすPCを指す。Copilot+ PC対応モデルは、いわゆるAI PCと呼ばれるものだ。
Copilot+ PCを利用するためには、「Windows 11」のサポートに加え、一定の性能基準を満たす必要がある。具体的には、「Qualcomm Snapdragon X Plus」または「Snapdragon X Elite」のプロセッサ、16GBのメモリ(最小要件)、そして256GB以上のSSDストレージを搭載していることだ。
これらのコンポーネントの中で最も注目すべきなのは、Snapdragon Xプロセッサだ。これは、Qualcomm Oryonのコンピューティング処理ユニット(CPU)、統合されたQualcomm Adrenoグラフィックス処理ユニット(GPU)および統合されたQualcomm Hexagonニューラル処理ユニット(NPU)を含む、Armベースのシステムオンチップである。特にNPUは、大量のデータを同時に処理する能力を持ち、CPUやGPUと比べてエネルギー効率が高い。その結果、パフォーマンスの向上とバッテリー寿命の延長を実現している。
QualcommとMicrosoftによると、Copilot+ PCは1秒間に40兆以上の演算ができ、一部の推定ではそれが45 TOPSに近いとされている。NPUはCPUやGPUと連携してこれらの閾値を達成し、デバイス内のAIに関するインテリジェントな体験をユーザーに提供する。
CPUとGPU、NPUが一体となってAIワークロードをサポートするために必要なパフォーマンスを発揮し、高度なAIモデルへのアクセスを可能にし、AIを活用したサービスや体験を実現する。
Copilot+ PCには、「Microsoft Pluton」セキュリティプロセッサが搭載されている。このプロセッサは、ゼロトラストの原則に基づいたセキュリティ技術で、チップからクラウドまでを保護する仕組みを提供する。
Plutonはデフォルトで有効化されており、安全な認証や暗号サービスを提供するとともに、ハードウェアベースの信頼のルートとして機能する。この技術はCPUに組み込まれており、安全なサブシステムを通じて、アイデンティティーや認証情報、個人データ、暗号化キーを保護する。
ITチームは、Windows 11を搭載した他のPCと同様に、Copilot+ PCを展開および管理できる。既存のツールやシステムを活用しながら、効率的に運用が可能だ。管理者は「Windows Autopilot」を使用して新しいCopilot+ PCをプロビジョニングし、「Windows Autopatch」で自動更新を行い、Microsoft Intuneでセキュリティポリシーを展開できる。
Copilot+プログラムには、「Surface Laptop」第7世代や「Surface Pro」第11世代などのMicrosoftのSurfaceモデルが含まれるが、プログラムには第三者ベンダーの製品も参加している。Copilot+ PCを導入したい組織は、Dell、HP、Acer、ASUS、Lenovo、Samsungといった各社の製品から選択できる。
Copilot+ PCは、Snapdragon Xプロセッサを搭載しており、AIワークロードを効率的にサポートしながら、ユーザー体験の向上とともに高いパフォーマンスを提供する。Copilot+ PCは、「Microsoft Azure」で稼働する大規模言語モデルの恩恵を受けている。
これらの大規模言語モデルは、ローカルNPUを活用する小規模言語モデルと連携して動作することで、高度なAI機能を実現している。
これらの技術により、Copilot+ PCは、他のPCでは利用できない以下のAI強化機能を提供する。
「Recall」機能は当初、Copilot+ PCの初期リリースに含まれる予定だった。しかし、セキュリティとプライバシーに関する懸念が指摘され、Microsoftは正式リリースを見送った。セキュリティ研究者や専門家から、Recallスナップショットがマルウェアに悪用され、ユーザーの機密情報が漏えいする可能性があるとの懸念が提起されたためだ。
これらの懸念に対応するための改良が加えられ、ユーザーはRecall機能をより詳細に管理できるようになった。例えば、フィルターを追加する、スナップショットの保存を停止する、その他のRecall設定をカスタマイズすることが可能だ。また、IT管理者はスナップショットの自動保存を禁止する設定も可能だ。さらに、Microsoftはスナップショットのセキュリティを強化し、スナップショットをローカルコンピュータにのみ保存する仕組みを導入している。
これらのセキュリティおよび管理機能の強化が、Windowsユーザーや業界批評家の懸念を払拭するのに十分かどうかは、今後の評価を待つ必要がある。
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