「Windows 10」のサポート終了が近づく中、MicrosoftがPCの買い替えを促す目的で、ある“動き”に出た。一部では「ちょっとズルいのでは?」との声も。その仕掛けとは。
「Windows 10」のサポート終了が目前に迫っているのは周知の通りだ。「Windows 11」へのアップグレード要件を満たしていないPCでは、すでに全画面で警告が表示されるケースもある。突然、「このPCは、Windows 11に対応していません。間もなくサポートが終了します」といった全画面ポップアップが表示されれば、ユーザーが動揺するのも無理はない。
Microsoftがこうした手法を採る背景には、PCの買い替えやアップグレードを促したいという狙いがあるのだろう。ただし、このような移行促進のアプローチに対しては、「やや強引なのではないか?」といった疑問の声が一部から上がっている。
そこで、またMicrosoftは新たな考えを出したようだ。だが、PCを売りたいためにある意味でズルい施策では?と非難の声もある。その物議を醸している方法とは?
それは、旧「Microsoft Surface」シリーズにおける「ベースモデル」(最廉価モデル)の販売を停止することで、旧ラインアップのハイエンドモデルの価格を実質的に引き上げたのではないか、という疑惑だ。この件については、「Ars Technica」が2025年5月9日(現地時間、以下同)に公開した記事で報じた。
まずはSurfaceシリーズを整理しよう。SurfaceはノートPC型の「Surface Laptop」シリーズと、タブレットにもなる2in1型の「Surface Pro」シリーズの2系統が主軸となる。他にも大型ディスプレイ一体型の「Surface Studio」や折りたたみスマートフォンの「Surface Duo」などがあるが、本稿では、話題の中心になっているSurface LaptopとSurface Proに触れていく。
Surfaceシリーズは明確な型番がない代わりに、発売年ごとに「第X世代」として区別されている。2024年に発売されたSurface Laptopは第7世代、Surface Proは第11世代に該当し、いずれもMicrosoftが提唱するAI PC「Copilot+ PC」に含まれている。
そして2025年5月6日、Microsoftは新型として「Surface Laptop 13インチ」(第8世代)および「Surface Pro 12インチ」(第12世代)を発表した。米国では2025年5月20日から、日本では6月から出荷が開始される予定だ。両モデルはQualcommのチップセット「Snapdragon X Plus」を搭載し、Copilot+ PCの要件を満たすAI機能対応製品だ。2025年10月に「Windows 10」のサポートが終了することもあり、Microsoftとしては買い替えを促したい構えだ。
新製品の価格は、Surface Laptop 13インチ(第8世代)が899ドルから、Surface Pro 12インチ(第12世代)が799ドルからと発表された。これらはベースモデルに当たるが、価格発表を受けたユーザーからは歓迎の声も多かった。というのも、前世代の価格が999ドルからであったため、「新製品はよりお得では?」という印象を与えたためだ。
だが、Ars Technicaはこの点に疑問を投げかけている。なぜなら、新製品の発表と時を同じくして、前世代のベースモデルが販売ラインアップから消えたからだ。Microsoftは新旧モデルを併売しているが、肝心のベースモデルは前世代で姿を消した。
前世代と新世代の主な違いとしては、Surface Laptopが13.8インチから13インチに、Surface Proが13インチから12インチにサイズダウンしており、これがセールスポイントとなっている。ただし、ストレージは256GBと控えめで、チップセットも大きな変更がない。つまり、今回の新世代モデルは、前世代ベースモデルのブラッシュアップ版にすぎない。
逆を言えば、性能面で大きな進化が見られないため、「前世代のベースモデルを購入し、自分でストレージを増設した方が今のベースモデルよりコストパフォーマンスが良い」と考えるユーザーも一定数いるだろうと記事では指摘している。
だが、その選択肢はすでに消えている。記事によれば、前世代のベースモデルはMicrosoftの販売リストから除外されており、例えばストレージを512GBにアップグレードしようとすると上位モデルを選ばざるを得ず、結果として価格は1199ドル(+200ドル)になる。この事実が、実質的な「ハイエンドモデルの値上げ」だと記事では主張されている。
さらに同記事では、MicrosoftがSurfaceの一部アクセサリーの価格を値上げしている点や、「Xbox」本体や関連ゲームについても価格引き上げの動きがあると指摘。トランプ政権時代に発動された関税の影響などもあり、今後も価格変動の可能性があるとしている。
いずれにせよ、今回のMicrosoftの手法は、旧モデルの選択肢を絞ることで最新ラインアップへの注目を集め、購買意欲を喚起するという意味では理にかなっている。ただし、ユーザーにとって「お得に買える機会」が失われたこともまた事実だ。あまり注目されていないこの販売戦略が、今後より大きな議論を呼ぶことになるのだろうか。
上司X: Microsoftが新型のSurfaceを発売するに当たって、旧型のベースモデルの製造、販売を中止することで旧モデルの実質的な値上げをしている、という話だよ。
ブラックピット: なるほど。旧モデルのベースモデル、つまり最廉価モデルの販売を停止することで、残りのハイエンドモデルの値上げになるんですね。
上司X: そういうことだな。
ブラックピット: それにしても、Windows 10がもうすぐサポート終了なのに、2025年5月時点でもデスクトップのOSシェアだと50%ぐらいあるらしいじゃないですか。
上司X: そのようだな。
ブラックピット: Copilot+ PCもMicrosoftが推してますが、売れ行きはどうなんですかね。
上司X: 2024年5月に正式に発売されてから丸1年が過ぎたけど、一般ユーザーはもとより企業ユーザーにも普及しているとは言いがたいようだな。
ブラックピット: もう少しCopilotがユーザーに欠かせないような状況になればいいんでしょうけどねえ。でも、Windows 10のサポートが切れた瞬間、世界は一気に変遷するかもしれませんよね。
上司X: そうかもな。新SurfaceはWindows 10のサポート切れの側面もあるだろうし、Copilot+ PCの普及を促進させたいというMicrosoftの思惑もあるだろう。いずれにせよ、2025年10月、Windows 10のサポートが終了するタイミングはPC業界にとって大きなターニングポイントになる可能性は高い。状況を見守る必要があるだろうな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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