業務システムを開発したくても、費用や人材の確保がネックとなり、なかなか着手できない会社は少なくない。こうした課題に対し、専門知識がなくても開発を進められる手段が広がりつつある。
多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を理解しながら、最初の一歩を踏み出せずにいる。中小企業庁の調査では、DXに本格着手できていない中小企業は95.4%に上る。やらなければいけないと分かっていても踏み出せない背景には、コストの高さ、IT人材の不足、開発にかかる時間という障壁がある。
2026年6月4日にオンデマンド形式で開催されたカンファレンス「DX/AI RUNNER EXPO 2026」(主催:RUNNER EXPO運営事務局)に、SoloptiLinkの小貫太秀氏が登壇した。日本語で指示するだけでシステムを自動構築するというAIサービスを軸に、中小企業がDXの壁を越えるための実践的なアプローチを語った。
小貫氏はまず、中小企業がDXに踏み出せない構造的な要因を整理した。同氏によると、必要性は理解していても行動に移せない原因は、意識の問題ではなく、これまでの選択肢そのものにあるという。従来の選択肢は、コストが高く、時間がかかり、手続きが複雑で、踏み出すこと自体のハードルが高かった。
立ちはだかる壁は「ヒト・モノ・カネ」の3つに集約される。たとえば資金面では、大手システムインテグレーターへの開発依頼に数百万円から数億円、高額なAIサービスの利用に年1,200万円規模の費用がかかる。人材面では、エンジニアの採用コストが月80万〜150万円に上り、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測される。時間面では、要件定義から本番稼働まで6〜12カ月を要し、その間に技術が陳腐化するリスクもある。
これら3つの壁を、一言の指示で越えるAIサービスを提供すると小貫氏は語る。
同社が提供する「SoloptiLinkAI」は、ユーザーが日本語で作りたいシステムを伝えると、企画、設計、実装、テスト、セキュリティ対策、本番公開までを自動で進めるサービスである。エンジニアの経験は不要で、開発時に生じるエラーへの対応もAIが担う。
例えば「顧客管理システムを作ってください」と指示すると、105体のAIが連携して開発を進める。本番環境への公開を指示すれば、共有用のURLが自動で生成され、誰でも利用できる状態になるという。指示の方法も柔軟で、自社のホームページの情報を読み込ませれば必要なシステムを提案し、社内の業務連携についての要望は議事録のデータから形にできると小貫氏は説明する。
品質はどのように担保されるのか。小貫氏によると、AIが20軸・3,400点満点で検証を重ね、一定の基準点に達しなければ出力しない仕組みになっている。検出されたエラーは最大50回まで自動で修正されるため、一発目に出力された時点でエラーのない状態になると説明した。本番公開後に生じるバグへの対処も自動化しているという。
小貫氏は、生成AIの代表的なツールとの違いを説明した。同氏は「ChatGPT」を料理のレシピ、AIがプログラム開発を支援する「Claude Code」を料理道具に例え、いずれも最終的に手を動かすのは人間だと指摘する。これに対しSoloptiLinkAIは、完成品そのものを届けるサービスだと位置づける。
また、「Claude Code」は使いこなすのが難しいという課題もある。プロンプトの作成に手間がかかり、やり取りも一問一答で完結してしまう。生成されるコードの品質にばらつきが出るため、その管理やエラー対応に大きな工数がかかり、結果としてエンジニアのスキルが欠かせなくなる。
「一般的な生成AIによるプログラム開発では、品質チェックやエラー対応、セキュリティ対策は考慮されず、テストやデプロイも手動で対応する必要があります」と小貫氏は説明する。一方SoloptiLinkAIでは、エラーの自動検出と修正に加え、攻撃用のAIが実際にシステムへ攻撃を仕掛けて脆弱性を検知し、修正するところまで自動化しているという。これにより、専門知識がなくても利用できるとした。
SoloptiLinkAIを構成する105体のAIは、役割ごとに階層化されている。全体最適や優先順位を判断する経営層が5体、開発の骨格を担う部隊が23体、専門技術を持つAIが50体、顧客から見た利用体験を仕上げるAIが27体という構成だ。これらは群知能による意思決定で動く。各AIが方針について意見を出し合い、投票で決めながら開発を進める仕組みだ。小貫氏は、この方式によってAIが事実と異なる内容を生成するハルシネーションが大幅に減り、認識の齟齬なく開発を進められるという。
法令への対応も特徴の一つだ。建設、医療、介護、宅建をはじめとする44業種の法令や判例、税務知識をAIが備えており、法を踏まえたシステム開発や契約書の相談ができるという。CRM、EC、在庫管理など22の業務テンプレートも用意し、業界ごとの業務内容と法令を理解した状態で開発を進める。経営層と現場で異なる閲覧権限の設計や、外部システムとのAPI連携も自動化している。
SoloptiLinkAIは、部署や業務に応じた幅広いシステムに対応する。総務部であれば「社内ポータルを作って」、営業部であれば「顧客管理システムを作って」、経理部であれば「経費精算システムを作って」と伝えるだけで、それぞれに必要な機能を備えたシステムが構築される。経費精算であれば、レシート登録や承認フロー、月次レポートの自動生成、会計ソフトとの連携までを含む。
同社によれば、2026年3月13日にサービスをリリースし、現在40社ほどが導入しているという。営業支援、IT・SES、人材・採用、不動産、弁護士事務所、会計事務所、農業など、導入先の業界は多岐にわたる。年内には500社への導入を目標に掲げる。
小貫氏は、中小企業がこれまで大手にしかできなかった事業の進め方を、より速いスピードで実現できる点に価値があると語った。自社専用のパッケージサービスやSaaS、プラットフォームの構築にも活用されているという。事業計画づくりを相談すると、AIが解像度の高い計画を示し、「こんなプラットフォームがあってもよいのではないか」とAI側から提案することもあると紹介した。
費用対効果について、小貫氏は人材コストの観点から説明した。一般的に、システム実装を担うシニアエンジニアやQAエンジニア、セキュリティやAIの専門人材、法令対応のコンサルタントなどをそろえると、月額で400万〜800万円程度がかかる。さらに採用そのものの難しさも、多くの企業が抱える課題だ。SoloptiLinkAIは、同社は、こうした人材が担う業務をこの月額費用で代替できるとしている。料金体系は初期費用60万円、月額20万円で、1端末ごとの契約となる。
時間面のメリットも大きい。従来は設計書の作成に約4週間、実装に約3カ月、テスト対応に約4週間を要していたが、設計は数分、実装は数時間で完了し、テストやセキュリティ監査、本番公開、法令適用は即時に自動化されるという。スプレッドシートや手書きで管理している業務を、自社でシステム化できる時代になったと述べた。
小貫氏は、導入先で収益向上につながった例も紹介した。SES企業やシステム開発会社では、単価50万〜70万円だった案件が、このサービスの活用によって200万円程度まで上がった例もある。エンジニアがいなくても運用できるのか、セキュリティは十分か、既存のExcelデータを活用できるか、といった懸念に対しても対応可能だと語った。
同社は全国に営業網を持つアシストホールディングスと提携し、サービスの提供体制を広げている。小貫氏は最後に、オンラインでの相談やデモを通じてその場でシステムを作って見せると案内し、「成果を再現できる仕組みを、全国の中小企業や大手企業に届けていきたい」と締めくくった。
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