「これからはモデルより自社に寄り添うAI」 Microsoft最新発表をプロはこう読む

AIは高性能であればいいわけではない。「どの場面でもフェラーリが必要なわけではないのと同じだ」と語るMicrosoft MVPの太田氏。AIモデルが次々と登場する時代に企業が見直すべきは、最新モデルへの依存ではなく、自社の業務や知識をAIが理解できる環境だという。

 情報システム部門の関心は「どの生成AIを使うか」から「自社の業務でどう活用し、AIが価値を発揮できる環境をどう作るか」へと移りつつある。一方で、AIモデルは次々と進化し、用途に応じた選択肢が広がっている。高性能モデルほど高度な処理が可能になるが、利用量に応じたコスト負担も大きくなる。これから企業に求められるのは、常に最高性能のAIを選ぶことではなく、業務や目的に応じて最適なモデルを見極め、組み合わせて活用する判断力だ。

内田洋行 太田浩史氏

 2026年6月2~3日にかけて開催されたMicrosoftの開発者向けイベント「Microsoft Build 2026」では、新たなAIモデルをはじめ、AIをローカル環境で実行するための基盤や開発環境の強化など、企業のAI活用の進め方に関わる発表が相次いだ。

 では、選択肢が広がるAIを企業はどのように使いこなしていくべきなのか。長年にわたりMicrosoft Buildを追い続ける内田洋行の太田浩史氏(エンタープライズエンジニアリング事業部、Microsoft MVP)は、今回の発表から見えるAI活用の変化をどう捉えたのか。企業が押さえるべきポイントを独自取材で聞いた。

なぜあの会社のAIは賢いのか? 考えるべきは「コンテキスト」

 2025年のMicrosoft Buildでは、AIエージェントを「どう作るか」という開発環境やフレームワークが大きなテーマだった。一方、2026年は、作成したエージェントを企業の業務でどう安全に運用し、コストを管理しながら活用するかという、実運用を見据えた仕組みづくりに焦点が移った。

 こうした流れの中で注目されたのが、AIエージェントを一元管理する仕組み「Agent 365」だ。Microsoft Build 2026では、エージェントを安全に開発、運用するための管理やガバナンスの重要性が強調された。エージェントごとの権限や利用状況、行動履歴を管理し、人のアカウントと同じように統制できる環境を提供する。これまで企業ごとに設計する必要があったAIエージェントの管理基盤を、Microsoftのプラットフォームで利用可能にするものだ。

 つまり、AIエージェント活用の課題は、「作れるかどうか」から「どう管理し、業務に定着させるか」へ移りつつあるということだ。企業に求められるのは、どの業務でエージェントを使うのか、誰が管理するのか、どの程度のコストを許容するのかといった運用ルールを設計することだ。もっとも、エージェントを安全に管理できる土台が整っても、それだけで業務で価値を出せるわけではない。

 AIを巡る関心は、これまで「どのモデルを選ぶか」「どれだけ高性能なAIを使えるか」が注目されてきた。一方で、太田氏は、実際の業務でAIが価値を発揮できるかどうかを左右するのは、モデルそのものの性能だけではなく、「AIが企業の業務や状況をどれだけ理解できるか」だと考える。

 そこでキーワードとなるのが「コンテキスト」だ。

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