“回転すし屋”のアプローチが必要なIoTセキュリティ実装(2/3 ページ)
IoTセキュリティの実装方法
IoTセキュリティに応用できるセキュリティスタンダード
IoTは比較的新しい技術であるため、セキュリティ対策にも従来とは別のアプローチが必要だという話もあるが、すでに国際的なセキュリティ規格が幾つかある。その一つが「IEC62443」というOT(Operational Technology)の国際標準セキュリティ規格だ。このOTセキュリティを参照すれば、IoTセキュリティをどのように進めれば良いかを体系的に理解できる。
IEC62443には開発と運用の両方のアプローチがあるが、ここでは開発を中心に紹介しよう。IEC62443では、機能安全規格である「IEC61508」のV字モデルをベースに開発を進めていく。具体的には、設計と施工に分けて仕様を策定し、それぞれに対してセキュリティテストを実施する。
IoTセキュリティの根幹となるSecurity by Design
この設計で最初に実施するのが、昨今よく耳にする「Security by Design」だ。これは単に安全を考慮した設計をおこなうという意味ではない。ライフサイクル全体で安全対策をどうデザインするかを考えるデザイン手法である。例えば、IoT機器の内部で暗号化した場合、たとえ解読困難な暗号処理であっても鍵さえ入手できれば簡単に復号できてしまう。安全を確保するには、物理的な揺らぎから鍵生成を行うような、設計者でも分からない鍵生成ロジックが必要になる。しかし、機器内部にそうした鍵生成ロジックを実装するにはコスト的に難しいかもしれない。その場合は、その鍵を工場で入れ込むことが現実的な解となるかもしれない。このケースでは、工場の責任になる。設計者からみれば、セキュリティ対策の一端を工場に託したことになるわけだ。場合によってはキッティング時にセキュリティ対策を施すなど、商品ライフサイクルの「川下」にセキュリティ対策を委託するケースもある。
どこでセキュリティ対策を施すのかは、企画や開発からセキュリティ保守に至るまで各ステークスホルダーとのコミュニケーションが重要である。いわゆる「マルチステークホルダー・プロセス」というアプローチだ。場合によっては、ユーザーに同意を求める必要もある。
しかし、せっかく役割分担しても各部署がセキュリティ対策を正しく運用しなければ意味がない。そこで、しっかりとしたモニタリング活動が必要となる。このモニタリング活動はPSIRT(Product Security Incident Response Team)が担当する。PSIRTはSecurity by Designで計画されたセキュリティ対策が各部署で適正に運用されているかを監査する。
このあたりの考え方もIEC62443を参照しておくことをお勧めする。
IoTセキュリティは高級すしよりも回転すし
次は、IoT機器の適切なセキュリティ対策についてITセキュリティと比較しながら紹介しよう。
いわゆるITにおけるセキュリティは機密性重視のため、守るべき情報資産を防御するための対策検討、いわゆる設計検討を行った上で、技術的な検討を行うことになる。しかし、トップダウン的なアプローチではコストが膨らむため、IoT機器へのセキュリティには適していない面がある。すし屋で例えるならば、おいしさを追求した握りを考える設計検討を最初に行い、それに合った材料を実装検討でそろえていくという“高級すし屋”の発想といえるだろう。対してIoTのセキュリティにおけるSecurity by Designでは、コストを抑えるため、まずは採用するセキュリティソフトウェアなどを検討し、そのあとにその技術を活用した設計検討を行う手法が有効だ。これは安価で提供することを前提に材料を集めておいしい握りを考える“回転すし屋”の発想だ。IoTセキュリティは、モノづくりの世界と同様に“開発購買”と同じ発想で考えることが現実的な解といえるだろう。
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