モバイル脅威対策「MTD」とは? MDMやEMMとの違い、製品選定のポイント(2/2 ページ)
ほとんど差がないMTD製品、選定の決め手はどこにある?
市場にはすでにいくつかのMTD製品が提供されている。その多くが、モバイルを狙った脅威を「デバイス・OS」「ネットワーク」「アプリケーション」「ユーザー意識」と4つに分類し、OSの脆弱性を突く攻撃をブロックしたり不正なアプリを検出したり、不正なアクセスポイントを検知して中間者攻撃(MITM)を防ぐといった防御・検知機能を実装している。
注意が必要なのは、PCセキュリティで言うところの「アンチウイルス」的な機能は存在しないことだ。なぜなら、iOSにせよAndroidにせよサンドボックスによる権限隔離を前提とした設計になっているため、アンチウイルスというアプリが、権限の壁を超えて他のアプリやOS内をスキャンすることはできないからだ。
製品の選び方についてマクニカネットワークスに話を聞くと、「コンシューマーをターゲットにした製品を除くと、エンタープライズ向けのMTD製品の脅威検知機能には、現状ほとんど差がない」という。製品選定の決め手は運用機能になりそうだ。
例えば「MobileIron Threat Defense」は、もともとMobileIronが提供していたEMM製品「MobileIron UEM」と統合したMTD製品だ。以前からMobileIron UEMを導入していた企業ならば新規にアプリを導入する必要はない。
管理する端末が多いほど、セキュリティアプリケーションを配布しインストールするのは面倒だが、MobileIron Threat DefenseはMobileIron UEMと連携させることで、端末の利用者側で操作することなく端末を保護できる。モバイルデバイスのセキュリティ対策に投資する以上、全ての端末を効率よく守り費用対効果を高めたいと考える企業に適しているという。また、EMMと一体化しているため、検知した脅威に応じた端末の設定変更処理もMobileIron Threat Defenseで完結できる。
Broadcom(Symantec)が提供するMTD製品「Symantec Endpoint Protection Mobile」(SEP Mobile)は、「AirWatch」など他のMDMと組み合わせても利用できる。SEP Mobile単体で利用するか、他の製品と組み合わせて利用するかどうかは利用するシーンによって考えなければならない。
例えば、BYOD(Bring your own device)で私物のスマートフォンを職場で利用する場合、MDMやEMMで端末利用を極端に縛ってしまうと利用者の反発を招く恐れがあるため、MTD単体で利用した方が良い場合もあるという。
その他の特長としては、脅威を検知すると自動的にVPNを起動し、中間者攻撃や盗聴に備える。また、脅威インテリジェンスを活用してSMS受信時にフィルタリングし、フィッシングサイトが含まれる怪しいメールは自動で迷惑メッセージに振り分ける。
モバイル脅威は「対岸の火事」、危ない国内のセキュリティ意識
クラウド利用が当たり前となり、ネットワークの境界が薄れてきた今、PCと同様にモバイルデバイスにおいても、ID認証に基づいたセキュリティモデル「ゼロトラスト」のアプローチが求められている。ユーザーが認証を経てはじめてアプリやクラウドにアクセスできるようにするMTDは、それを実現する手段とも表現できそうだ。
深刻化するPCのセキュリティ問題を経て開発されてきたこともあって、モバイルOSのセキュリティはPCのOSよりも堅牢(けんろう)だ。しかしPCでは、さまざまなセキュリティソリューションが提供され、それを組み合わせた多層防御によってセキュリティレベルが高められている。モバイルデバイスもデフォルトのまま放置していては、むしろリスクは高いといえるだろう。
だが依然としてモバイルデバイスの脅威は「対岸の火事」で、自分ごとのリスクとして考えられていない企業もまだまだ多い。モバイル端末に保持するデータの重要度も年々増しているにもかかわらず、「モバイル端末は大丈夫でしょ」と思考停止している企業も珍しくない。すでに水面下で被害が生じている恐れもあるのに、だ。
PC以上に身近で、個人の特定が容易かつ重要なデータを扱うモバイルデバイス。PCにアンチウイルスを入れるのが当たり前になっているのと同様に、モバイルデバイスにもMTDが必要な時代に変わっていくのではないだろうか。
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