ERPの利用状況(2022年)/後編
後編となる本稿ではERPに対する「不満」と「課題」にフォーカスを当て、問題となるポイントを探る。使い勝手だけではなく、「製品の設計思想」も理解する必要があるとの声もあった。
前編ではERP分野でも徐々にクラウドシフトの動きが見られ、それを裏付けるものとして、2018年から2022年までの4年間でERPの導入形態としてクラウドサービスを利用、選択する割合が25.3ポイント増加したことなどに触れた。後編では現在利用するERPの問題点や、基幹業務に関連するインボイス制度とその対応について調査結果を紹介する。
なお、本稿で紹介する調査結果は、キーマンズネットによるアンケート「ERPの利用状況」(実施期間2022年6月17日~29日)から得たものだ。回答者数(196人)の所属については、情報システム部門が33.2%、製造・生産部門が13.3%、営業・販売部門が11.7%、総務・人事部門が9.7%であった。グラフ内の合計値および合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合もあるため、あらかじめご承知いただきたい。
新製品が出たのに……旧バージョンを強いられる現場から不満の声
ERPに限らず、システムやアプリケーションには使い勝手や機能面などにおいて、何らかの課題は付きものだ。特にERPは財務会計、人事、販売管理など業務範囲によって利用する機能が異なり、利用者の満足度も業務によって異なるだろう。
まずは、ERP全般の課題を探るために、現在利用しているERPの満足度を尋ねた。その結果、「とても満足している」が5.9%、満足しているが45.1%で、「満足」とした割合は合わせて51.0%となった(図1)。2018年に実施した前回の調査では「満足」とした割合は53.4%であり、2.4ポイントほど微減した。2017年と2018年の調査結果を比較すると「満足」の割合は18.2ポイントという大きな下落が見られたが、今回の調査ではそれほど大きな減少幅は見られなかった。
次にERPの課題を探るために「やや不満」「不満」とした人に対してその理由を尋ねたところ、以下のコメントが寄せられた。
多く寄せられた声が、「製品が自社業務にフィットしていないため、追加開発を余儀なくされる」といったカスタマイズに関する不満の声だった。当然、業務フローは部署や組織ごとで異なる。特に歴史の長い企業であれば、全てのフローをスタンダードに合わせることは困難かもしれない。こうした、業務フローへの「適合性」はERPにおける課題の一つだろう。
「ERPも設計思想を理解すべき」使い勝手だけじゃない、現場の声
ここまではERPの利用者に対して満足度を尋ねた結果を紹介したが、ここからはERPの導入、未導入にかかわらず、「既存のERPパッケージおよびサービス全般について、率直に思うことや求めること」を聞いた。その一部を抜粋して紹介しよう。
全体を通して目立ったのは「導入や運用コストの割に導入成果が出ていない」といった費用対効果に関する声や、「現場からはデザイン性も重視してほしいとの要望がある」「入力項目が多く現場から不満が出ている」など、「使いづらさ」や「システムの分かりづらさ」を課題と捉えている声だ。
中には「エンドユーザー側に使い方ではなく、どのような目的を達するためにどのような意図があってこうした設計となっているのかをきちんと説明し、理解した上で使いたい。そうでなければ導入後の理解が追い付くまでに時間がかかる」と、設計思想を明確にしてほしいといった声もあった。
その他、「必要な機能を全体最適の観点で考えられていないため、ピンポイントで機能を追加しており、それが無駄に感じる」「ERPは長期スパンでの利用を前提としたシステムのため、(ベンダーから)3年後、5年後はどう考えればいいかなどのアドバイスがほしい」といった現場の声も挙がった。
インボイス制度、対応済み企業は14.8%止まり
基幹系業務に関連する問題として、2023年10月に始まる「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が話題になっている。これは、売手が買手に対して消費税率や消費税額などを正確に伝えるための制度で、「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」「取引年月日」「取引内容」など6つの記載要件を満たしたインボイスの発行事業者とならなければ仕入額控除ができなくなる。つまり現在の請求書ベースでの申請からインボイスを用いた申請に変わるため、記載要件を満たした運用体制に変えなければならない。
まず、インボイス制度に関する理解度を尋ねた項目では、「詳しく理解できている」が6.6%、「おおむね理解している」が44.4%となり、「理解している」とした層は合計で51.0%となった(図2)。インボイス制度に対する理解度は約半数にとどまる結果となった。この結果を部門別でみると、営業・販売部門や製造・生産部門といった、売買のやりとりが定常的に発生する現場での理解度が低い傾向にあった。
インボイス制度への対応状況について尋ねた項目では、「対応済み」が14.8%、「対応中」が26.5%と、制度対応にアクションを起こしている割合は41.3%となった。(図2)。100人以下の中小企業では「対応している」とした割合は少ない傾向にあった。インボイス制度は消費税の課税事業者が基本対象となるため、企業規模を問わず多くの企業が対象となることが予想される。3月決算の多い国内企業においては、期中に対応が急がれる。こうしたことも念頭に置いて準備を進める必要があろう。
既に「対応済み」と回答した人に対して対応内容を尋ねたところ、「ERPのバージョンアップで対応」「内製のシステムにインボイス制度に関わる機能を追加開発した」「影響範囲を洗い出し、対策が必要な業務およびシステムの対応を急いだ」などのコメントが寄せられた。
「現在対応中」とした企業では、「取引先に支払う消費税の計算方法や、締日、取り決めなどを洗い出している。今後は取引先に問い合わせ、逐一確認しながら対応を進める予定」「顧問税理士と調整中」など関係各所と連係しながら対応を進めているフェーズの企業も多く見られた。
経営資源である「ヒト・モノ・カネ」に関するデータを一元的に管理し、スピーディーな意思決定を実行するために重要な役割を担うERP。思うように機能していないのであれば、目的に合致した設計になっていないという可能性もある。そうであれば、自組織の課題にあらためて向き合う必要があるだろう。
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IT担当者300人に聞きました
業務課題、注目のITツール……。話題には上るけれど、実際のところはどうなのか。キーマンズネット会員の声で知る、隣のカイシャのIT事情。読者のホンネを紹介します。
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