SaaS ERPの導入メリット8選 メリットに隠れたデメリットも解説
SaaS ERPはインフラコストを削減できるなどさまざまなメリットがある。一方で、データ漏えいのリスクが存在する可能性があるといったデメリットもある。8つのメリットと、それに伴うデメリットを解説する。
SaaS ERPは、ベンダーがユーザーにサブスクリプション形式で販売し、インターネット経由で提供するクラウドベースのERPだ。
ベンダーが保有するサーバにホストされており、運用管理、アップデートの適用も提供する。オンプレミスあるいはカスタマイズが施されたクラウドERPよりも低価格で導入できることからSaaS ERPはスタンダードになりつつある。一般的にベンダーはカスタマイズやオプションを推奨せず、ユーザーはオンラインでアクセスする。
本稿はSaaS ERPの8つのメリットと、メリットにより生じる可能性があるデメリットを解説する。
1. 低コスト
SaaS ERPを含むクラウド型ソフトウェアの利用は、ベンダーがソフトウェアをホストすることにより、ハードウェアにかかる費用が少なくなることを意味する。企業がハードウェアを購入する必要はなく、場合によっては交換する必要もない。
また中小企業は、SaaS ERPを利用することでコストを節約できる可能性がある。中小企業は必要な機能モジュールが少なく、大人数のユーザーの利用料金を支払う必要がないためだ。
加えて、マルチテナントのSaaS ERPを利用すれば、コストの一部(メンテナンス費など)を他社と分担できるため、さらなる費用の節約につなげられる。
ただし、こうしたコストの削減はベンダーが保証しているわけではない。したがって、SaaS ERPを実際に選ぶ前には、他のさまざまな要因も考慮に入れるべきだ。すでにオンプレミス型のERPを一括購入している企業の場合、無期限のSaaS ERPサブスクリプションを購入すると、さらに費用がかさむことになる。ユーザー数が予想以上に増えた場合も、SaaS ERPの方がオンプレミス型よりも割高になる。
新規ERPへの移行にシステムインテグレーターの助けが必要になった場合も、新たな費用が発生する。さらに、大量のデータを移行する必要がある場合は実装コストが上がる可能性がある。
2. 自動アップグレード
マルチテナントのSaaS ERPは、ベンダーがシステムのアップグレードをほぼ全て管理する。そのためIT部門のリーダーは、オンプレミス型を利用する場合と違って、タイミングに頭を悩ませたり、方法を学んだりする必要がなくなる。
ただし、アップデートの日程が休暇や繁忙期などと重なると、アップデートを延期しなければならない企業もある。そのような企業は、ベンダーがアップデートのタイミングを決めてしまうマルチテナントのSaaSの利用は避けた方がいい可能性がある。
一般的にシングルテナントのSaaSならアップデートのタイミングを自社で管理しやすくなる。しかし、アップデートの実行に対する責任はIT部門が部分的に負うことになる。
3. メンテナンスの容易化
マルチテナントのSaaS ERPは、メンテナンスもベンダーが引き受けるためIT部門が負う責任は少なくなる。また一般的に、SaaSの方がユーザー追加の手間が少ない。
4. 最新のユーザーインタフェース
ユーザーフレンドリーであることは、従業員のデジタル体験(DEX:Digital Employee Experience)のカギを握っている。その結果、マルチテナントのSaaS ERPを販売するベンダーは細かい設定が不要なシンプルな機能にフォーカスしている。カスタマイズしたクラウド型やオンプレミス型よりも、SaaS型の方が一般的には操作しやすい傾向にある。
しかし一般的にマルチテナントのSaaS ERPをカスタマイズできない。そのため、ERPを追加したり修正したりする必要がある企業は、別のタイプのソフトウェアを選んだ方がよい。
5. データセキュリティ
それでも企業は自社のデータガバナンスやセキュリティガバナンス、ユーザーアクセスに関する諸問題といったセキュリティの重大な側面に対処する必要がある。
一般的に、ベンダーは一つのインスタンスを複数の企業で共有していても、マルチテナントのSaaS ERPのデータは安全であると断言する。しかし、データ保護を最優先にしている企業は、マルチテナントではなくシングルテナントのシステムを選んだ方がよいという考えもある。
6. データ共有の容易化
SaaS ERPにおいて、従業員はオンラインでソフトウェアにアクセスする。そのため、どこからでも簡単にログオンして、企業データをベンダーや顧客に送信できる。オンプレミス型の場合、通常はサードパーティー製品を経由する経路からアクセスする必要があるため、従業員は簡単にソフトウェアにリモートでアクセスできない。また企業も、オンプレミス型ソフトウェアにリモートでアクセスする従業員に頻繁にセキュリティチェックを実施する必要がある。
従業員がデータを簡単に共有できれば、ベンダーとのやりとりやカスタマーサービスの改善につなげられる。
7. 導入の容易化、高速化
オンプレミスERPの導入には手間もコストもかかる。また、コストの超過やスケジュールの遅延などのリスクがある。
対照的に、SaaS型ならシステムをローカルインストールする必要がない。レガシーERPが抱える諸問題が足を引っ張る可能性はあるものの、理論上はこちらの方が導入は容易なはずだ。
8. 最新ツールへのアクセス
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの最新技術は、データ分析やカスタマーサービスの改善といった、さまざまなメリットを企業にもたらす。その一方で、例えばAIなら、その導入には多くのデータストレージや高い演算能力が必要になる。そのため、オンプレミス型ソフトウェアを利用している企業はハードウェアの追加が必要になる可能性がある。その点、SaaS ERPを含むクラウド型ソフトウェアなら、こうした最新技術も簡単に利用できる。
また多くのクラウドベンダーは、プラグ&プレイ方式のAIクラウドサービスを提供しているため、その意味でも利用を開始しやすいだろう。
モーリー・ドリスコール氏
TechTargetのアソシエイトサイトエディター。HR、ERP関連のソフトウェアを主に担当。過去、マーケティング会社のSkywordでエディター、Christian Science Monitorでエディター/レポーターを歴任。
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