伊藤忠が15拠点に「SAP S/4HANA」を導入 基幹システム刷新成功のヒントが分かる

伊藤忠は海外現地法人および一部の海外グループ企業が利用しているSAP ECC6.0をSAP S/4HANA Cloudへと移行するプロジェクトを進めている。すでにグローバル15拠点で移行を完了し、2025年11月までに残り約30拠点で完了する予定だ。移行プロジェクト担当者への取材から基幹システム刷新成功のヒントが分かる。

 伊藤忠商事(以下、伊藤忠)は1858年に創業し、世界61カ国で繊維をはじめとするさまざまなビジネスに携わる総合商社だ。国内のビジネスだけでなく、輸出入や三国間取引を含むトレードビジネスの他、事業投資など幅広いビジネスを展開している。

 同社は1996年、北米の現地法人の基幹システムとしてグループとして初めてSAPを導入した。そして2002年、北米で導入したSAPを基に開発した「G-SAP」をグローバルの40拠点に展開した。導入時のモディフィケーションおよび20年にわたる追加対応の複雑さから、将来的な新規ビジネスへの対応や安定的な維持運用を鑑みて、2019年に「SAP S/4HANA Cloud on Azure」(以下、S/4HANA)への移行を決定した。

 2019年より、北米拠点へのS/4HANA移行に着手し、以降は欧州やアフリカなど合わせて約15拠点で移行を終えた。現在はアジアやオセアニア、中国での展開を進めており、2025年11月までに全拠点での移行を完了する予定だ。

 基幹システムの刷新で障害が発生すれば、商品の在庫管理や客先の与信管理、決算業務ができなくなるといったトラブルが生じ、業務への影響は計りしれない。伊藤忠はどのようにしてS/4HANAへの移行に成功したのだろうか。移行を主導した伊藤忠のIT・デジタル戦略部の部長とプロジェクトマネジャー(PM)、テストを主導したソリューションベンダーの代表に話を聞いた。

プロジェクトの長期化を防ぐ「テストの効率化」

 S/4HANAへの移行では、旧ERPのアドオンを引き継ぐ「ブラウンフィールド」ではなく、一般的に新規導入の際に採用する「グリーンフィールド」を採用した。システムの標準化(Fit to Standard)を基本方針に、業務プロセス全体のデジタル化を前提とし、将来のイノベーションを見据えた機能拡張と長期安定運用に資する基幹システムとするためだ。

 導入に当たって課題の一つとして挙がったのが「テスト工数の肥大化」だ。ビジネスプロセスや通貨、税金の要件が国によって異なることによってテスト負荷が増加し、約20人のプロジェクトチームで全てのテストを実施するのは難しい状況だった。手動のリグレッションテストではリリースごとに180時間以上が必要で、これを解決しなければプロジェクトが長期化する可能性があった。

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