専門家が解説、「企業がオンプレADに縛られる理由」とEntra IDへの現実的な移行策

業務システムのクラウドシフトに伴い、オンプレミスのADからEntra ID(旧Azure AD)への移行が急務に。だが、技術的な課題や人材不足で踏み切れない企業も多い。専門家が根本原因と現実的な解決策を分かりやすく解説する。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、業務システムのクラウドシフトが進んでいる。特に「Microsoft 365」を基盤とした統合環境の構築が広がり、従来のオンプレミス型「Microsoft Active Directory」(オンプレミスAD)から「Microsoft Entra ID」(Entra ID)への移行が進みつつある。

 だが、移行の複雑さや技術的な課題の高さから、多くの企業は踏み切れずにいる。特に中堅・中小企業では、検討段階で立ち止まり、オンプレミスADの利用を継続するケースが多い。こうした移行の壁を乗り越えるための対策について、AD移行に精通する東芝デジタルエンジニアリングとクエスト・ソフトウェアの専門家にインタビューし、話を聞いた。

企業がオンプレADからEntra IDに踏み出せない根本的な原因

 クエスト・ソフトウェアの橋場仁亮氏(営業部 シニアアカウントマネジャー)によると、移行ニーズの約6割がオンプレミスAD間の移行であり、Entra IDへの移行は依然として限定的だという。これは、グローバル企業のAD統合案件やM&Aによるシステム統合が要因の一つだと考えられる。一方で、大企業ではEntra IDへの移行プロジェクトが多数進行しており、今後2~3年の間にその成果が中堅・中小企業(SMB)へ波及する可能性がある。

 東芝デジタルエンジニアリングで長年ADの構築・移行支援を手掛ける藤井氏(ITソリューション事業部)は、「中堅・中小企業ではポリシー管理やファイルサーバ移行などの課題から、依然としてオンプレミスADを利用し続けるケースが多いのです」と語る。

 さらに、公共機関では5年ごとのリース切れに伴うハードウェアリプレースのタイミングでAD移行を迫られることが多い。このような組織では、ハードウェアの更新に加えて、セキュリティガバナンス強化の観点から分散していたAD環境の統合を推進する動きが見られる。

 AD移行の最大の障壁は、技術的な複雑さと移行リスクだ。従来の移行手法では、ベンダーが提供する手順書に基づきFSMO(Flexible Single Master Operations)の転送やローリングアップグレードが一般的だったが、これらには根本的な課題がある。

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