AI投資、元は取れる? コスト爆増に悩む企業に向けたGoogleの新料金プラン
AIエージェントの普及で企業のAI関連支出が膨らむ中、Googleがコスト管理機能を強化した。柔軟な料金プランや支出上限の設定、利用コストの試算機能を提供し、AI活用と予算管理の両立を支援する。
Googleは、企業がAI関連のコストを管理しやすくするため(注1)、柔軟な課金オプションやAIエージェント向けのコスト管理機能を拡充した。開発者向けプラットフォームの「Google Antigravity」と「Android Studio AI」も、「Gemini Enterprise」のサブスクリプションに組み込む。
同社のブログ記事によると、新たな料金オプションとして「Flexible Savings Plan」を提供する。AIワークロードが安定している、あるいは今後の増加が見込まれる企業は、月間の利用額をあらかじめ確約することで、トークンコストを最大20%削減できる。また、AI関連の月間支出に上限を設定することも可能だ。
AIがより複雑な業務を担うようになる中、企業の経営層には、エージェントを活用してイノベーションを加速させながら、利益率と予算を維持するという新たな課題が生じているという。
膨らむAI予算をどう抑える? 企業に求められる「コストと成果」のシビアな見極め
Gartnerのレポートによると、世界のエンドユーザーによるAIモデルおよびAIプラットフォームへの支出は、2026年では63%増加する(注2)と予測されている。こうした支出の拡大を背景に、CIO(最高情報責任者)はAI予算の管理を強化している。
特に、エージェント型AIの普及によってコストの増加が見込まれる中、CIOは支出の抑制だけでなく、AI導入による成果の測定や利用効率の向上にも取り組んでいる。
企業側でも、AI関連コストを抑える動きが広がっている。
保険会社のTravelers Insuranceは、より高度なAIモデルの利用に伴うコストを削減するため(注3)、社内向けの大規模言語モデル(LLM)「TravelersLLM」を構築している。
TravelersのEVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)兼最高技術・オペレーション責任者のMojgan Lefebvre氏は、2026年7月に「CIO Dive」のインタビューで、同社では保険関連の問い合わせをTravelersLLMに振り分け、より高度な推論やコーディングを必要とする処理には最先端モデルを利用していると説明した。
加熱するAIベンダーの「コスト削減」競争
CIOがAI関連コストの削減策を模索する中、AIベンダー各社も次々と対応している。
Snowflakeは2026年8月初め、同社の「Cortex AI Gateway」をはじめとするAI製品にAIコスト管理機能を実装した。タスクの品質とコストを考慮し、適切なAIモデルに処理を自動的に振り分ける仕組みだ(注4)。
Oracleは2026年初め、AIエージェントの料金体系を企業が得られる価値とより適切に連動させるため、トークンバンドルを限定的に提供している。Amazon Web Servicesも、コストの異常を調査するFinOps特化型エージェントのプレビュー版を公開した。
AIコストの上昇は、Linux Foundationも注目している。同財団は、企業がAIを大規模に利用する際の管理手法やベストプラクティスを策定するため、「Tokenomics Foundation」を設立した(注5)。
「年間1兆トークン消費」が500社超
GoogleがAIコスト管理機能を強化した背景には、「Gemini Enterprise」の利用拡大がある。同サービスは以前、「Vertex AI」と呼ばれていた(注6)。
Googleは火曜日、金融業界向けの「Gemini Enterprise for Financial Services」(注7)と、法律業界向けの「Gemini Enterprise for Legal」(注8)を発表した。いずれも、各業界のニーズに合わせて設計されたエージェント型AI製品だ。
Googleのスンダー・ピチャイCEOは、2026年7月に開催された2026年第2四半期決算説明会で(注9)、Fortune 100企業の約90%がGemini Enterpriseを利用していると説明した。
Googleのエンタープライズ顧客であるPepsiCoは、AIや分析業務にGemini Enterpriseを活用している。また、Macy'sは同製品を利用し、コマース体験の強化を進めている。
ピチャイCEOによると、こうした利用拡大が同社における有料トークンの利用増加を後押ししている。
同氏によると、過去1年間で約500社に及ぶGoogle Cloudの顧客が、それぞれ1兆トークン以上を処理した。さらに、直近12カ月では2000社を超える企業が1000億トークン以上を利用したという。
Googleが提唱する“AI×FinOps”の重要性
今回のAIコスト管理機能のアップデートでは、「Google Cloud Pricing Calculator」も追加された。
企業は同ツールを使ってGemini Enterpriseの利用コストを事前に見積もれるほか、プロジェクトごとに支出上限を設定したり、上限を超えた場合の追加利用を管理したりできる。
AIエージェントが担う業務が広がる一方、利用量の増加に伴って企業のAI関連支出が膨らむ可能性も高まっている。Googleは今回、柔軟な料金体系に加え、支出上限の設定やコスト試算といった機能を提供することで、企業がAIの活用とコスト管理を両立できる環境を整える。
同社はブログ記事で、AIから実質的な投資対効果(ROI)を得るには、FinOpsやコスト管理もAI技術とともに進化させる必要があると指摘する。
出典:Google rolls out flexible billing, cost controls for AI agents(CIO Dive)
注1:FinOps for the AI era: New flexible billing and cost controls for agents(Google Cloud)
注2:End-user AI spending to soar as CIOs grapple with costs(CIO Dive)
注3:Travelers builds its own LLM, cutting AI costs(CIO Dive)
注4:Oracle, AWS among vendors working to curb rising AI costs(CIO Dive)
注5、6:Foundation to tackle AI token cost management(CIO Dive)
注7:Gemini Enterprise Agent Platform の名称変更(Google Cloud)
注8:Google Cloud Launches Gemini Enterprise for Financial Services(Google Cloud)
注9:Google Cloud Launches Gemini Enterprise for Legal(Google Cloud)
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