AIデータセンターが半導体の半分超に 「AIコスト高騰」を招く意外な主役とは
AI向けデータセンターへの巨額投資が続く一方、企業のAI利用コストも膨らんでいる。特にAIエージェントの普及で料金が予測しにくくなる中、企業は最先端モデルと低コストな自社・オープンモデルを使い分ける戦略に動き始めている。
ガートナーが発表した予測によると(注1)、AI向けデータセンターへの支出は今後4年間で急速に拡大し、半導体売上高全体の半分以上を占めるようになる見通しだ。2026年には36.5%だった割合が、大幅に上昇するとの予測だ。世界の半導体売上高は2026年に1兆6000億ドルを超え、前年比でほぼ倍増する見込みだ。
「最先端AI」は高すぎる? 企業が自社LLMや中国AIに注目する理由
メモリ半導体は2026年も半導体市場全体の成長をけん引する最大の分野で、2026年の半導体売上高の54%を占めると推定されている。一方、AI向けデータセンターが占める売上高の割合が高まっていることについて、ガートナーのディレクターアナリスト、ベン・リー氏は、「半導体の価値がどこで生み出されているのか、そして業界全体で需要がどのように変化しているのかを浮き彫りにしている」と指摘する。
AI需要の急拡大は、AIの処理能力を支えるデータセンターの建設を世界各地で加速させている。一方で、AI導入に伴うコストが膨らむなか、企業の経営幹部は、これまでより慎重にAIを導入・運用する段階に入りつつある(注2)。
AIサービスを提供する各社は、従来の定額制サブスクリプションから、利用量や成果に応じて料金を課す従量制・成果報酬型のモデルへと急速に移行している(注3)。Info-Tech Research Groupのテクニカルカウンセラー、ジャスティン・セント・モーリス氏はCIO Diveへのメールで、こうした料金体系の変化に対する企業側の管理が十分ではないと指摘した。
「初期の段階では、多くのベンダーが、企業を自社の技術に『依存』させることを戦略としていた」と同氏は述べる。「導入段階では、実際にどれほどのコストがかかるのかが、事実上見えにくくなっていた」
だが、現在、AIの利用料金は急速に膨らんでいる。セント・モーリス氏によると、その最大の要因の一つが、処理を何度も繰り返すAIエージェントだという。
AIエージェントは、問題を自ら診断し、必要に応じてデータを再処理するなど、複数の処理を繰り返すことがある。そのため、処理回数が想定以上に増え、最終的な利用コストを事前に予測することが難しくなる。
こうした懸念の高まりを受け、Snowflake(注4)、Amazon Web Services、Oracleなどのベンダーは、企業がAI関連のコストを把握・管理しやすくするための機能を相次いで導入している(注5)。
それでも、AIの運用コストをより効率的に抑えたいと考えるCIOや経営幹部は、中国のAIモデルに注目する必要があるかもしれない。セント・モーリス氏によると、中国では米国の最先端モデルに匹敵する性能を持つオープンソースモデルの開発が進んでおり、用途によっては、企業がこうしたモデルの活用を検討する価値があるという。
同氏は、今後のAI活用戦略として「マルチティア・コンピューティング」の考え方を取り入れることも提案している。つまり、比較的単純な処理はデスクトップPCなどの端末側で行い、より複雑な処理が必要になった場合にのみ、より高性能なクラウドやAIモデルへ処理を移すという方法だ。
「今後は、マルチティア・コンピューティングを採用し、デスクトップなどの端末が基本的な処理の大部分を担い、必要な場合にのみ複雑なタスクを上位のコンピューティング環境へエスカレーションする戦略が有効になるだろう」とセント・モーリス氏は述べている。
実際に、米保険大手のトラベラーズ・インシュアランスは、AIの運用コストを抑えるため、自社専用の大規模言語モデル(LLM)を開発した。
同社のエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高技術・運用責任者(CTOO)、モジガン・ルフェーブル氏によると、「TravelersLLM」は保険関連の問い合わせへの対応に特化しており、最先端の汎用(はんよう)AIモデルを利用するよりも低コストで運用できるという。
トラベラーズ・インシュアランスは現在も、より高度な推論やコーディングなどの処理には最先端のAIモデルを利用している。一方で、比較的単純な保険関連の業務には自社開発の低コストなモデルを使い分けることで、最先端モデルの利用によって増加するコストを相殺している(注6)。
ルフェーブル氏は7月のインタビューで、自社モデルと最先端モデルを用途に応じて使い分けることが、AI活用に伴うコスト増を抑えるうえで有効だと説明する。
出典:AI data center spending drives growth in semiconductor market(CIO Dive)
注1:Gartner Forecasts Worldwide Semiconductor Revenue to Reach $1.6 Trillion in 2026(Gartner)
注2:For enterprises, the cautious AI era has begun(CIO Dive)
注3:What CIOs should know about AI-driven SaaS pricing changes(CIO Dive)
注4:Snowflake adds cost control feature to Cortex AI Gateway(CIO Dive)
注5:Oracle, AWS among vendors working to curb rising AI costs(CIO Dive)
注6:Travelers builds its own LLM, cutting AI costs(CIO Dive)
© Industry Dive. All rights reserved.
CIO Dive(キーマンズネット)
米国でビジネスジャーナリズムに特化した記事を掲載するIndustry Diveの、CIO(最高情報責任者)に関する連載「CIO Dive」の記事一覧です。
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Windowsを使い続けるのは正解か? 「Linux化」というモダナイズのもう一つの選択肢
-
2
「情シスやめます」と言われたら――ある日突然「ゼロ情シス」になった企業のその後
-
3
ChatGPTに「おすすめの○○は?」 実は答えが決まっているらしい:893rd Lap
-
4
OSもほぼ丸ごと自作の「AMD Am29000搭載PC」、30年後に動かしてみたら……:892nd
-
5
日本はランサムウェア祭、キヤノンITSが解析サービスを出す理由
-
6
「GPT-5.6 vs. Claude Fable 5」勝者はClaude、でも企業が選びづらいワケ:891st Lap
-
7
悪用厳禁、「ChatGPT」の会話履歴をごっそりとぶっこ抜く“AIハック”:890th Lap
-
8
業務削減率はマックス94%、日本生命保険のRPA「ロボ美ちゃん」の1年
-
9
ランサムウェア対策の3ステップ AWSが提唱する「3-2-1-1-0」ルールとは
-
10
これが最前線の現場だ、ウェアラブルデバイス活用事例3選
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー