バックアップ時間の増加や物理環境と仮想環境が混在した時の運用の困難さといった課題が浮き彫りになった。仮想マシンの増加や移行時に注意するポイントは? 実際にあったトラブル事例も紹介する。
企業の事業継続にとって、万一の障害発生時に備えて情報システムのバックアップを図り、いざという際のリストア作業を迅速に行う仕組みを構築することは非常に重要だ。さらに最近では、仮想化環境の普及に伴い、企業システム内に物理環境と仮想環境が混在する状況が生まれてきた。こうした混在環境におけるバックアップも大きな課題となってきており、バックアップツールに対するニーズもさらに高まってきている。
今回の特集では、新たな課題として浮かび上がってきた仮想化環境を含むバックアップ方法について紹介する。また、製品選定時の注意点を明らかにするとともに、ユーザー企業が犯しがちな失敗についても触れる。
サーバ仮想化環境が普及するにつれて、企業システム内には従来の物理環境と仮想環境が混在する状況が当たり前になってきた。この時のバックアップ方法は、大きく2つのパターンが挙げられる。
まず1台のサーバ内にハイパーバイザーとバックアップツールのエージェントをインストールし、その上に複数の仮想マシンを構築してその構成は固定で変えないという場合には、物理/仮想の違いを意識することなく、従来の物理環境だけのときと同じ運用方法でバックアップを行うことができる(図1左下のケース)。つまり内部構成の変動がないのであれば、仮想環境が存在したとしても、今まで通り、1台の物理サーバとしてバックアップすることができるということだ。
ただしこの時に注意が必要となるのは、「バックアップ時間」だ。物理環境だけのバックアップのときにはサーバにテープ装置が接続され、サーバとテープ装置間でバックアップが完了していたが、混在環境では、各仮想マシンのバックアップデータはサーバからLANを介してバックアップサーバに転送されることになる。
通常バックアップは夜中に行われるとはいえ、例えばファイルサーバは24時間稼働しているのが一般的で、十分なネットワーク帯域が確保されていなければ、夜間はファイルが全然落とせないという状況も生まれてしまう。
そこでこうした課題を解決するために、最近のバックアップツールには差分データだけをバックアップする重複排除の機能を提供する製品がある。今までにバックアップしたことのないデータのみを転送することで、ネットワークの占有量を低減し、バックアップ時間を短縮することが可能だ。
もう1つは、1台の物理サーバ上に構築した仮想マシンの台数が、ビジネス側の要求に応じて増えたり、移行したりする場合(図1右下のケース)には、バックアップツールが各仮想マシンをユニークに認識する必要がある。企業によっては、物理環境だけのバックアップ時に使っていたバックアップツールがそのまま使えないところも出てくるだろう。
このときには、ハイパーバイザーとバックアップサーバ内のバックアップツールが連携し、物理サーバ側で仮想マシンのスナップショットを獲り、ストレージに保存したスナップショットイメージをハイパーバイザーのAPIをインタフェースとして、ファイバーチャネル(FC)経由でバックアップサーバに転送するシステム構成が考えられる。
この方法は先のようなLAN経由ではなく、FC経由でバックアップを行うので、バックアップ時間も短くて済む。
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