メディア

サーバ移行の第4の選択肢、IaaS最新事情徹底解説IT導入完全ガイド(2/5 ページ)

» 2014年05月26日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

IaaS利用のデメリットは?

 一方、デメリットはあるだろうか。一般にはセキュリティの問題が指摘されることが多い。自社のデータを共同利用されるサーバに置いて大丈夫なのかという不安だ。

 しかし、主要なIaaS業者のデータセンターのセキュリティ対策が、一般企業の対策に比較して徹底していることが知れ渡るにつれ、現在ではむしろ「セキュリティを高めたいからクラウドを使う」という声さえ聞かれるようになっており、この不安感は解消に向かっている。

 次によく言われるのがカントリーリスクだ。サーバが海外にある場合、その国での法律が適用されるために、犯罪捜査などの名目でサーバの差し押さえや情報閲覧が行われる可能性がある。実際に2009年にはFBIによる犯罪捜査の一環として米国のデータセンタへの停止命令と機材押収が起きており、その懸念には根拠がある(この事例は米国の「パトリオット法」によると報道されたが、実際には関係が明らかでない)。

 しかし、それが海外特有のリスクかどうかは判断が分かれるところだ。本当にテロリズムなどの反社会的活動が捜査によって止められる、あるいはその証拠が得られるとすれば、日本の国内クラウドであれ、社内のオンプレミスシステムであれ、日本の警察による強制捜査が入る可能性はあるからだ。

 とはいえ、国内の施設なら海外の法律とは直接的には無関係だ。たとえ米国法で強制捜査が行われても、国内の施設に業務停止を命じたり、機材押収をしたりできるのは日本の警察だけだ。米国からの協力要請があっても、それは国内法に基づいて判断され、必要な手続きを経たのちのことになる。

 その安心感もあり、Amazonやマイクロソフトのサービスは人気があるようだ。ただし、業者の準拠する法制度により、多少の違いは出るかもしれない。例えば、Amazonの東京リージョンは米ワシントン州法に準拠し、所轄裁判所は米国内の州裁判所または連邦裁判所であるとしている一方、マイクロソフトのクラウド事業の日本での契約には日本の法制度に準拠することが明記されている。法制度そのものが未整備な部分もあり、だからどう違うとは一概に言えないが、ユーザーとして法的な面での検討もしてみるべきだろう。

 運用上のデメリットとしては、ディスクアクセスが頻繁に行われるアプリケーションや、ミッションクリティカルでリアルタイムにトランザクション処理するデータベースではレスポンスが遅くなる可能性があることが最大のものかもしれない。VPNの利用や高性能ディスクの選択などである程度カバーできるが、これについてはアプリケーションを選んでインフラを使い分けるのがお薦めだ。

 また、従量課金はメリットの1つでもあるが分かりにくいという指摘もある。来月の予算を今月確定できないのは困るという場合もあれば、さまざまなリソースを追加していくうち、いつの間にか合計が予算を超過していて気が付かないという場合もある。

 それが問題になるとすれば、現在では月額固定制または月額上限固定制でデータ転送料も固定または無料というサービスもあるので、そうしたサービスを選べばよい。ほとんど変動費がなくなり、従来通りのIT調達の慣例とフィットさせることができる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。