2014年9月に実施したNRIの調査では、スマホ、タブレットを導入している企業の割合は、それぞれ40%を超えていた。スマートデバイスは、既に企業クライアントの一部として普及期に突入している。スマートデバイスは、モバイルワーク実現の期待を高めてくれた。今後登場するウェアラブル端末は、製造の現場やフィールドワークなど、これまで利用が難しかった分野におけるIT活用を支援してくれそうだ。
企業が選択するクライアント端末は、管理者サイドからコントロールのしやすさだけでなく、端末の利用者であるユーザーの利便性も考慮してOS、端末を選定すべきである。例えば、Windows10はPCだけでなくタブレットOSとしても採用され、企業が有するアプリ資産の移植も容易である。導入済みのiPhone、iPadと連携させてシームレスな端末操作を実現させるならばアップルの製品も魅力的である。webブラウザ利用に特化した単機能を求めるならChrome端末も候補となるだろう(表2)。
2015年は、クラウドファースト、モバイルファースト時代をけん引する主要OSベンダーの製品が出そろう好機である。企業は、次世代の企業クライアント環境の実現に向けた検証活動を加速させることを推奨したい。
ここで着目しておきたいのは、将来「デジタルネイティブ」世代の社員が企業活動にもたらすインパクトだ。彼らは、スマホやソーシャルメディアなどの最新の消費者向けITの利用に長けた社員である。
従来とは異なるIT活用スタイルを提案する彼らが、イノベーション実現の即戦力となったり、社内外のネットの集合知を活用してビジネス課題の解決に必要なヒントを提供できる可能性を秘めている。
ビジネスの変化へ柔軟に対応できる俊敏な組織づくりを行う企業にとって、「デジタルネイディブ」世代の可能性を無視すべきではない。彼らのスキルやノウハウを生かすことのできるクライアント環境作りも視野に入れるべきであろう。
「デジタルワークスペース」は、このような時代における企業の新しいIT環境を示す概念として、海外で提唱され始めたキーワードである。「デジタルワークプレース」とも呼称される。「デジタルワークスペース」では、社員は消費者向けITと同じような利便性を企業ITでも享受できる。
例えば、移動中にスマホ上で作成していたメールの続きを、自席のPCからも作成できるなどシームレスに作業を継続できる。また、クラウドサービスの利用もサポートする。その際、企業のセキュリティポリシー上、データファイルをクラウドに置くことができない場合は、ファイルのリストのみクラウドで管理し、実際のファイルは企業内のデータベースに格納するといった運用も可能である。
「デジタルワークスペース」の実現には仮想化技術やスマートデバイス端末管理技術などのさまざまな技術が必要になる。そんななか、社員に対して一貫したユーザー体験を提供したり、高い利便性を維持するための機能として、オーケストレーション機能やマネジメント機能の重要度が増す(図1)。
上記のアーキテクチャで紹介される機能の全てを実現する製品は、現時点では存在しない。そんななか、大手仮想化ベンダーや海外のベンチャー企業が「デジタルワークスペース」実現に向けた取り組みを開始した。
例えば、ヴィエムウェアやシトリックスは、仮想デスクトップなどのシンクライアント製品とモバイルデバイス管理製品、ファイル管理ツールなどを組み合わせた「ワークスペーススイート」の提供を開始した。彼らの取り組みは始まったばかりであるが、今後は製品毎にバラバラであった機能の連携に加え、ポータル機能やコミュニケーション機能の追加を通じて、社員の生産性と利便性を高める製品へと進化していくと期待される。
これまで、新しいOSや端末が登場するたびに、企業クライアントとしての可能性が論じられてきた。しかしながら、「木を見て森を見ず」的な導入をした企業の多くは、十分な成果を上げることができなかった。
今後、「デジタル・ワークスペース」の構築に必要な技術やサービスが登場するなか、企業は自社の「デジタル・ワークスペース」のあるべき姿について議論できるようになる。その際、企業クライアントの利用シーンや期待する効果を関連するステークホルダも巻き込んで議論したうえで、実現に向けたストーリーを立てていくことが重要になろう。
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