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» 2015年04月16日 10時00分 公開

IoTが企業にもたらすインパクトすご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)

[鳥巣悠太,IDC Japan]
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IoTの3つの方向性と、IT部門に求められること

 このようにIoTは、既に製造業、小売業、金融業、交通事業、公共事業、政府/自治体などあらゆる業種で導入され、リモート管理/制御、顧客分析/マーケティング活用、サービスコスト合理化/サービス付加価値向上、安心/安全の確保といった、顧客満足度向上や売上拡大に結び付くようになっている。また人件費削減などのコスト削減といったトラディショナルな用途でも引き続き採用されている。

 国内のIoT市場は、参入事業者の増加によるエコシステムの多様化、リソースの調達コスト/利用コストの低下、テクノロジーの高度化や応用先の拡大、周辺環境の改善といったさまざまな成長促進要因に支えられこれまで成長を続けてきた。そうした「事業者」「コスト」「テクノロジー」「環境」といった成長促進要因は今後も継続的に市場後押しすると見込まれるが、2015年にフォーカスするとIDCでは図5に示した通り「Who」「Why」「What/Where」という3つの方向性に特に成長していくと見ている。

国内IoT市場の2015年の成長方向性 図5 国内IoT市場の2015年の成長方向性、February 2015(出典:IDC Japan)

 「Who」とは、導入する業種の多様化だ。IoTと相性のよい業種への導入は一巡し、新規事業開拓のためのIoT導入が始まる。使いやすいプラットフォーム(IBM IoT Foundation、PTCのThingWorx、富士通IoTプラットフォーム、KDDI M2Mクラウドサービスなど)が登場し、これまでIoTとの親和性がそれほど高くなかった業種のユーザーも気軽にIoT導入が可能になってきたことが背景にある。

 「Why」とは、IoTの導入目的/用途の多様化だ。例えば、高度な技術を採用した分析ソリューションによって、製造機械の予知保全(故障の予兆を検知して事前に実施するメンテナンスサービスなど)などが徐々に採用される傾向にある。また人工知能技術を活用した画像分析ソリューションなども今後浸透していく見通しである。さらにはセンサーデータの処理/分析をクラウド側だけでなくエッジ側でも実行することで、これまでにない付加価値を実現するサービスも登場してきている。注目されるのはGEのPredix、日立Global e-Service on TWX-21、NEC CONNEXIVE、Cisco IOxなどの分析プラットフォームだ。。

 「What/Where」とは、IoTの導入機器/地域の拡大だ。クラウドに機器やセンサーを安全に接続するPTCのAxedaのように、クラウド側とエッジ側を含めた一貫性を確保する仕組みがより一層求められるようになる。同時にグローバルシームレスな利用が徐々に実現していくことになるが、docomoM2Mプラットフォーム、vodafone GDSPなどはその基盤となるものだ。

 このようにさまざまなIoTプラットフォームが、3つの方向に市場が拡大する上での「How」の役割を果たしているとIDCでは捉えており、2015年に国内IoT市場は成長を継続するとみている。ユーザー企業としてはIoTによって実現する目的を明確にした上で、必要となる製品やサービスを適材適所に選んでいくことが肝要になるだろう。

IT部門はIoTとどう向き合うのか

 さて、人間が関与せずにデバイス同士およびプラットフォームが情報をやりとりしあうIoTの仕組みがいったんできてしまうと、これまで運用管理などの業務を担当してきたIT技術者は何をすればよいのか分からなくなりそうだ。

 従来型のシステム運用管理業務は、なくなりはしないものの、相対的に重要度が薄れていくことは否めない。しかもIoTは、どちらかといえば、IT部門よりも業務部門が主体的に行うものでもある。なぜなら、業務プロセスの効率化によるコスト削減でも、売上拡大などのビジネス成長策でも、業務知識が必要不可欠だからだ。

 よく言われるように、今後はIT技術者であっても業務知識を積極的に獲得する必要がある。業務部門の人々との横の連携が可能な体制をつくり、交流し合ってお互いの知識やノウハウを高め合う努力が求められるだろう。ビジネスの目的が分かれば、IoTの仕組みづくりの方向や順番が分かる。

 そのときのために覚えておきたいキーワードに「システムオブレコード(SoR)」と「システムオブエンゲージメント(SoE)」がある。SoRは、ERPを始め基幹業務システムなどに蓄積されたデータ(構造化データが多い)など、過去の業務のありようを記録する、安全に保管可能な堅牢性の高い情報のことである。一方のSoEは、これからのビジネスに不可欠な顧客やパートナーとの強い関係性を生み出す、ソーシャル情報、音声情報、センサーデータなど、多くは非構造化データのことだ。

 ビジネス環境変化に即応できるようにするには、従来IT部門が主に取り扱ってきたSoRに加え、SoEをうまく取り扱うことが欠かせない。取扱いに注意しながらSoRとSoEを組み合わせていくことで、合理的でビジネス効果を生むIoTが構築可能になるはずだ。

 IoTに向き合おうとすると、分析システムの理解から始めようとする場合が多いかもしれないが、実際は、それよりも先に業務を理解した方が役に立つ。IoT導入で効果を上げることを考えるなら、業務部門の人を巻き込み、業務知識やノウハウを学ぶことを意識的にした方がよい。

 少なくともSoRに関する知識やノウハウは業務部門よりも上のはずだ。それに加えたSoE知識と業務ノウハウにより、IoT時代のビジネスをけん引する主役になれる可能性がある。IT担当者はこれまでの殻を破り、自分たちのビジネスをどうしていきたいかという視点から、未来を考えるべき時代に入っている。

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