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IoTが企業にもたらすインパクトすご腕アナリスト市場予測(3/4 ページ)

» 2015年04月16日 10時00分 公開
[鳥巣悠太IDC Japan]

IoTはどのように利用されるのか

 さて、このように拡大していくIoT市場の背後にある企業ニーズは何だろうか。言葉を変えれば、IoTの利用は企業に何をもたらすと期待されているのだろうか。これを次に考えてみよう。

 IoTの利用形態を分類してみると、図4のようになる。利用目的は、大きく分ければ2つだ。1つは図4の「ケース1」「ケース3」のように、IoTサービスを自社の業務プロセス/コストの合理化を主な目的として利用する「内部用途」、もう1つは、自社の既存の製品やサービスに対して新規にIoT関連の投資を行い、付加価値向上や顧客満足度の向上を実現し、結果的に自社の売上を向上させる「ケース2」の「外部用途」だ。

IoTを利用する企業の利用形態別分類 図4 IoTを利用する企業の利用形態別分類、August 2014(出典:IDC Japan)

「内部用途」のメリット

 IoT事業者から直接的に製品、サービスが提供される「ケース1」、IoTを後述の外部用途として利用する企業から製品、サービスが提供される「ケース3」では、どちらも次のようなメリットが期待できる。幾つかの事例も合わせて紹介しよう。

  • 自社業務プロセスの効率化
  • 自社資産、自社商品の在庫管理
  • 自社資産のセキュリティ監視
  • 自社資産の保守、故障検知、故障の予兆検知
  • 社内意思決定の迅速化
  • 法令順守体制の強化

【事例1】自社業務プロセスの効率化の例

 ある組立製造業者では、自社工場内の工作機械などのセンサーからオペレーションログを収集し、制御システムへ送信、保守履歴、在庫情報、製品情報なども加えて上位の管理システムに連携する仕組みを構築した。これにより情報システムの負荷が軽減し、管理システムの判断を現場にフィードバックする周期が短縮され、業務プロセス全体が効率化できた。

【事例2】自社資産、自社商品の在庫管理の例

 石油の測定機器を提供しているある業者では、測定機器の製造ラインにIoTを活用し、部品の在庫情報を発注システムと連動させる生産管理システムを構築、その情報をERPシステムと連携させた。システムのクラウド化も合わせて実現し、在庫管理の最適化を通じたコスト削減を実現した。

【事例3】自社資産のセキュリティ監視の例

 ある金融関連業者では、機密書類のある書庫への社員の出入りをセンサーで把握、不正な持ち出し検知・自動通報システムを導入した。また、ある電力関連業者は重要施設に振動センサーを取り付けて関係者以外の施設への侵入を検知、自動的に監視カメラの映像を制御センターへ送信する仕組みを作った。どちらもセキュリティ関連の人件費の大幅な削減につながった。

【事例4】法令順守体制の強化の例

 ある地方自治体では、担当する地域の発電所敷地の周囲に人感センサーや圧力センサー、監視カメラを設置して警備を行っている。電力会社独自のセキュリティ対策とは別に、政府団体の一部として自治体が法令順守の観点からこれを行った。

「外部用途」のメリット

 もう1つの利用形態である「ケース2」における「外部用途」では、次のようなメリットが期待できる。

  • 顧客に提供する製品、サービスのリモート管理、制御
  • 顧客分析、マーケティングへの活用
  • 顧客に提供する製品、サービスの利用コスト合理化
  • 顧客に提供する製品、サービスの利用付加価値向上
  • 顧客に提供するサービスの安心、安全確保
  • 公共サービスにおける安心、安全確保

【事例1】顧客に提供する製品、サービスのリモート管理、制御の例

 ある電子機器メーカーでは、自社製品のバイオマスボイラーに温度センサー、故障センサー、CO2排出量計測センサー、燃料切れ感知センサーなどを装備した。顧客の敷地に設置したボイラーの状態をリアルタイムにリモート管理/制御を行い、サービス品質の向上に貢献している。

【事例2】顧客分析、マーケティングへの活用の例

 ある小売業者では、新たに在庫センサーや画像解析センサーを搭載した自動販売機を設置し、在庫状態のリアルタイムな把握や、画像情報を基にした顧客層の分析により売上を急速に伸ばしている。

【事例3】顧客に提供する製品、サービスの利用付加価値向上の例

 ある医薬品製造に関わる事業者では、自社で販売する血液製剤商品全てにRFIDタグを取り付け、利用履歴を長期保存する医療機関の満足度を向上させた。またトレーサビリティが改善し、事故対応にも役立っている。

【事例4】顧客に提供するサービスの安心/安全確保の例

 ある鉄道関連業者では、線路沿いに風速計、雨量計、ドップラーレーダーを設置し、沿線の天候をリアルタイムに把握することで素早い速度規制や運転見合わせを可能にし、安全性向上につなげている。

 また、あるガス関連業者では、ガスメーターやエネルギー機器とセンターを通信で結び、ガスやエネルギーの使用状況を遠隔監視し、遠隔操作による停止で危険を避けたり、エネルギー効率などの情報を提供したりして、顧客満足度向上を図っている。

【事例5】公共サービスにおける安心、安全確保の例

 ある地方自治体では、管理下にある河川の脇の道路に水量検知センサーを設置し、一定水量、飽水が生じた場合に通知するシステムを活用している。これにより土地の多くを占めている畜産業の土壌が河川に流れ込むことによって引き起こされる水質汚濁の被害を未然に防いでいる。

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