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仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」って何?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2016年02月03日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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ビットコインの現状と、ブロックチェーンのこれから

 さて、今のところ唯一の成功例といわれるビットコインだが、運用開始から7年が経過して利用者は世界で約800万人、国内で10万人という規模になり、推定取引高は8710万米ドルに達している。これが多いか少ないかは見方によるだろうが、それだけの利用者と取引があって7年間全く停止していないことは、その仕組みがかなり堅牢であることの証明になっている。

 ビットコインの登場以降、たくさんの仮想通貨が生まれたが、その大半は技術的な裏付けがなく、日本発のNEM(New Economy Movement)などの少数の例外を除いては、長くは生きられないのではないかというのが本間氏の見解だ。

 ただし、国内では仮想通貨を使わなければならない環境にはなく、そう簡単には普及しないと考えられる。金融危機が訪れるなどの極端な環境変化があれば、現在の仕組みよりも高い安全性が求められる可能性が高く、爆発的に普及するかもしれないが、そうでなければインターネットでの商取引や、一部の対応店舗などの支払いなどから徐々に広がっていく見込みだ。

 なお、中国やインド、アフリカなどでは利用が広がる下地があり、欧米での普及進展も合わせて世界的に見れば今後もますます拡大していきそうだ。国内でも仮想通貨の利用に拍車を掛けようとする動きも見える。

 なお、ビットコインによる取引の処理は今のところ秒間で1桁しかできないので、このまま利用者が増えるといずれ処理能力不足になると考えられる。現在、利用者を制限するための手数料値上げか、ブロックサイズを大きくして(現在1MB、数十MBに拡大する案もある)処理能力を上げるか、それともブロックチェーン以外の取引を組み合わせるかで議論されているところだ。

 ブロックチェーン技術は、特に仮想通貨に関わらない領域でも発展の可能性が高い。前述の金融機関の取り組みのように、送金サービス、各種決済、プリペイドカード、ポイントカードなどに利用できる他、例えば受発注システム、Eコマース、在庫管理、請求管理、契約管理、勤怠管理、医療情報管理など、さまざまな用途がアイデアとして出てきている。いずれにせよ、金融機関の取り組みが先行しており、会社を超えた実証実験が始まっている。その動向を注視しながら、ビジネス応用の可能性を考えてみるとよいだろう。

関連するキーワード

P2P(Peer to Peer)

 「ピーツーピー」「ピアツーピア」と読み、多數の端末間で、どれがサーバでどれがクライアントといった役割の差がなく、対等な関係で相互通信することをいう。Winnyなどファイル共有サービスで有名になり、情報漏えい事件も起きたことから不安が持たれることがあるが、認証などのセキュリティ対策を適切に施せば安全だ。クライアントサーバシステムよりもスケーラビリティに優れ、低コスト、サーバダウンがない分可用性も高い。

ブロックチェーン」との関連は?

 ブロックチェーンの応用例の1つであるビットコインでは、参加者それぞれのコンピュータがP2Pで接続し、取引データをブロードキャストする方法をとり、それによりネットワーク全体で合意を形成(取引の成立を承認する)できるようにしている。

NEM(New Economy Movement)

 ブロックチェーンを利用した仮想通貨を作る日本発のプロジェクト。ビットコインのシステムの課題を解決し、一般の通貨と仮想通貨の両方をブロックチェーンでも銀行口座でも保管できるような新しい仕組みを作ろうとしている。

ブロックチェーン」との関連は?

 ブロックチェーン技術を応用した新しい仮想通貨のためのプラットフォームを構築するのが目標だ。ビットコインとは違い、通貨の流通量は一定にして、マイニングは用いず、取引の手数料が参加のインセンティブになる。また参加者の経済活動に関する重要度=貢献度が高い場合により多い報酬がもたらされる仕組みである点も異なる。同じブロックチェーンを利用した、新しい技術的試みの1つ。ただしビットコインに比較しての脆弱(ぜいじゃく)性を指摘する声もある。

仮想通貨

 国などが価値の保証をしていないが、バーチャルコミュニティーが通貨として認め、流通するもののこと。「価値の保存」「交換の媒体」「価値の尺度」という世界の通貨の要件を満たすものがこう呼ばれる。ビットコインを筆頭に、世界に約600ほどの仮想通貨がある。中には詐欺的なものも含まれ、技術的な裏付けのないものも多い。

ブロックチェーン」との関連は?

 ビットコインの中核技術として誕生したのがブロックチェーン。分散ネットワークで取引情報を保存し、改ざんや消去が不可能な特長から、以降の仮想通貨の技術的な裏付けとなっている。

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