ランブックオートメーションは、どちらかというと既存の運用管理タスクの自動化、省力化に主眼を置いたものだが、一方でこれまでにない新たなタイプのタスクが現れたことで、システム運用管理の現場がプレッシャーを受けている現実もある。例えば、エンドユーザーに対する仮想サーバ環境の提供もその1つだ。
社内ユーザーの要望を受け、仮想サーバ環境を手配、構築して払い出す。この一連の作業を全て人手で行っていると、早くても数日、場合によっては数週間かかってしまう。しかしパブリッククラウドサービスなら、その場ですぐ望み通りの仮想サーバ環境が手に入る。自ずとユーザーは、自社の情報システム部門を通さず、直接パブリッククラウドサービスを使いたくなる。
こうして、いわゆる「シャドーIT」が社内にはびこるようになると、IT統制がまったく効かなくなってしまう。こうした事態を避けるには、既存の作業を自動化、省力化してIT統制の取り組みに割く時間を確保するとともに、仮想サーバ環境の払い出しそのものの作業も自動化、省力化しなければ、いつまでたってもパブリッククラウドサービスと同等のサービスレベルを提供できるようにはならない。
このような、クラウド時代に新たに起こってきた運用管理ニーズに対応した自動化・省力化ソリューションも各ベンダーから登場している。例えば、富士通が提供する「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」といった製品がその代表例で、仮想化やプライベートクラウドといった新たなタイプのIT基盤を運用する上で必要なさまざまな自動化機能を提供する。
このように現代の運用自動化ツールは、かつてランブックオートメーション製品が世に登場したころに比べてはるかに進化を遂げており、システム運用管理の現場にとってより現実的で導入、運用しやすいものになったといえる。
しかし、こうしたツールさえ導入すれば自動化がすぐ実現するというわけではない。先にも述べた通り、運用自動化に失敗するケースの多くでは、ツールを導入する以前にそもそも既存の作業手順を可視化、標準化する段階で頓挫している。
まずは、システム運用管理の現場でどのような運用手順が日々行われているのか、その全てを洗い出すことが第一歩だ。それらを漏れなく手順書にまとめた上で、次にそれらの中から作業頻度や作業負荷が高いもの、すなわち自動化の効果が確実に表れるであろう手順を抽出し、それらを順次自動化のスキームに載せていく。
逆に言えば、作業頻度や作業負荷がさほど高くないものは、自動化によって浮く手間やコストより、自動化の仕組みを構築するのにかかるコストや手間の方がかさむことが多い。こうした点に配慮しながら、自動化すべき手順とすべきでない手順を仕分けていくのだ。
とはいえ、大規模なシステムを長年運用してきた企業では、作業手順をざっと洗い出すだけでも、かなり骨の折れる作業になるだろう。そこで、統合運用管理製品を提供するベンダーでは、運用作業手順の可視化、標準化やその結果を踏まえて実際に手順を自動化ツールに実装する一連の作業を支援するサービスを提供している。
こうしたサービスの多くは、単に作業を支援するだけでなく、標準化や自動化に関する独自のノウハウやメソッドの提供をうたっている。ツールの導入と合わせて、利用を検討してみるのも手だろう。
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