企業のITコストの約7割が、既存IT環境の維持や運用に費やされるといわれる。システム運用の自動化、省力化を支援するツールを導入しても思うように効果が上がらないケースも多い。
企業のITコストの約7割が、既存IT環境の維持や運用に費やされるといわれる。ビジネスのITへの依存度がますます高まる今日、維持運用コストを削減し、浮いたリソースを戦略的なIT施策に振り分けることがビジネス成長の鍵を握るとされてきた。
この目的を達成するために、システム運用の自動化、省力化を支援するツールを各ベンダーは提供してきたが、導入しても思うように効果が上がらないケースも多いと聞く。これまでの運用自動化ツールが抱えていた問題点とは一体何だったのか。そして最新のツールは、それをどうやって克服しようとしているのだろうか。
「システム運用の自動化」と一口に言っても、それが意味するところは1つではない。例えば、どの企業でも当たり前のように行っているジョブ管理も、これはこれで立派な自動化の取り組みの1つだ。ただし、現在問題になっているのは、ジョブのように定期的にプログラムで自動処理できるタスクではなく、不定期に発生し、人間が介在しないと処理できない作業の方だ。
例えば、サーバに対するパッチ適用や、ユーザーのパスワード変更などが典型例だ。これらは不定期かつ頻繁に発生し、これまでは人間の手で直接行われてきたため、ジョブ管理のような自動化の仕組みに載せることもできず、長らく運用管理作業の工数を圧迫してきた。
それでも、これまでは何とか“現場の頑張り”でこなせてきた。しかし「コスト削減」の名の下、多くの企業でITの予算や人員が極限まで削られているにもかかわらず、上層部からは「ビジネスに寄与するITの活用を考えろ」と言われ、セキュリティ意識の高まりに応じてパッチ適用やパスワード変更の作業は増え続ける一方だ。さらに社内でのクラウドサービスの利用が増えるにつれ、ITガバナンスの維持にもこれまで以上に手間が掛かるようになってきた。
このように「人手は減る一方なのに、仕事量は増え続ける」状況では、これまでの仕事のやり方を大幅に効率化できない限り、現場の仕事は到底回らなくなる。こうした切実な理由からシステム運用の自動化が今求められているのだ。
こうした課題を解決するために開発され、2010年前後から統合運用管理製品の一機能として、あるいはそのオプション製品として提供されるようになったのが、システム運用管理の自動化ツールだ。その多くは、いわゆる「ランブックオートメーション」と呼ばれる製品ジャンルに属している。
ランブックとは、作業指示書や作業手順書のことを指す。従ってランブックオートメーションとはその名の通り、システム運用管理の作業手順書に記述された一連の作業をオートメーション化(プログラムによる自動実行)しようというものだ。
具体的には、紙の作業手順書に記された内容を、GUIの開発ツール上でワークフローとして定義(あるいは別途プログラムを記述)すれば、一連の作業を周辺システムと連携して自動実行するプログラムが自動的に生成される。これを管理コンソール上から個別に実行するか、あるいはスケジューリングして自動実行させれば自動化が実現するというわけだ。
一見すると、この仕組みを導入しさえすれば、システム運用の自動化や省力化はすぐに実現するようにも思える。しかし実際には、これまで日本企業のシステム運用管理の現場で、ランブックオートメーションが広く受け入れられてきたとは言い難い。その普及を阻む最大の理由は、自動化すべきタスクを区別することに、あまりにも時間と手間がかかりすぎるためだ。
ある程度以上の規模のシステムを長年運用し続けてきた企業では、そもそも運用管理の現場でどれだけの種類(件数)の作業手順が存在するのか、その全貌を把握するのさえ大変な作業だ。もし仮にそれらを全て洗い出して手順書に明文化したとしても、恐らくその数は膨大に及ぶだろう。それらを全てランブックオートメーションで自動化するとなると膨大な開発工数が掛かり、逆に手間とコストがかさんでしまうのだ。
作業手順を標準化してその数を絞り込んだり、頻繁に行われる作業だけを選抜して自動化したりするとなっても、個々の作業の内容を精査するだけで相当な手間と時間がかかる。結果、勇んでランブックオートメーション製品を導入したはいいものの、肝心の自動化の取り組みははなはだ中途
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