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» 2023年03月03日 07時00分 公開

迷惑動画の投稿者もすがりたくなる「デジタルタトゥーの消去法」が怪し過ぎる:700th Lap

「客テロ」とも呼ばれる迷惑行為を撮影した動画が拡散され、大炎上するケースが増えている。こうした情報は「デジタルタトゥー」としてインターネットに残る。刻まれたデジタルタトゥーを消去する方法があるというが、何やら怪しい……。

[キーマンズネット]

 若者たちが飲食店などで迷惑行為をはたらき、それを撮影してはSNSに投稿して大問題に発展するケースが増えている。拡散された投稿から、氏名や居住地、学生ならば学校名や所属する部活動などが特定されることも珍しくなく、それらの情報は「デジタルタトゥー」としてインターネットの海を漂うことになる。

 最近であれば、回転ずしチェーンで起きた騒動が記憶に新しい。もちろん許せる行為ではないが、「消せるものならデジタルタトゥーを消したい」と願う投稿者もいることだろう。一度インターネットに刻まれたデジタルタトゥーを完全に消去することは困難だが、それを可能にする方法があるらしい。しかし、話を聞くとなんだかうさんくさそうだ……。

 デジタルタトゥーを負うのはそれなりの理由がある。単なる悪ノリであれば、自業自得、因果応報といえるだろう。しかし、場合によっては誤情報がデジタルタトゥーとして残る場合もある。また、過去に従業員が犯した罪によって企業の悪評が残り続けることもある。一刻も早くデジタルタトゥーを消去したいと思うだろう。

 スペインの企業Eliminaliaは、インターネットのさまざまな情報やコンテンツから顧客にとって不利な情報を消去するサービスを提供している。だが、英国The Guardian紙はEliminaliaの事業には怪しいところがあると指摘し、2023年2月17日に同紙Web版の記事でその件を報じた。この問題は、もともとフランスの非営利団体Forbidden Storiesが5万点に及ぶEliminaliaの内部文書を独自に入手して、マスコミに公表したことで明らかになった。

 The Guardian紙によれば、Eliminaliaは数年にわたって「非倫理的、欺瞞(ぎまん)的な手法」で顧客が不利だと主張する情報を削除し続けてきたという。特定の情報を削除するために、第三者になりすましてGoogleなどの検索サービスに著作権侵害を申し立てていたという。もちろん、それは虚偽の申請だ。さらに、無関係の記事を大量に投稿することで、依頼者にとって不利な記事を埋もれさせていたという。

 EU圏では「忘れられる権利」が認められており、正当な依頼であれば検索サービスやコンテンツ配信者は該当する情報を削除しなければならない。しかし、不正な手段による情報の削除は問題だ。

 Eliminaliaは不法な手段を執っていただけではなく、麻薬密売業者や詐欺師、性犯罪者などを顧客として迎え、彼らに不利になるデジタルタトゥーを消していたという。記事によれば、Eliminaliaは2013年に設立され、2021年までに50カ国1500以上の個人や団体から依頼を受けてきたという。

 The Guardian紙の記者は、Eliminaliaに依頼したことのある人物にインタビューを敢行した。その人物は、2017年に麻薬カルテルのためにマネーロンダリングを行ったとしてアルゼンチンの警察当局から起訴されていた。証拠不十分で無罪になったものの、その情報はデジタルタトゥーとしてインターネットに残った。その消去をEliminaliaに依頼したという。

 その人物をインターネットで検索してみると、「アメリカンフットボールのルール」や「哲学を日常生活で利用する方法」「チワワの生態」などがヒットする。もちろん全て無関係だ。デジタルタトゥーの消去を依頼した本人はその理由を全く知らないようだが、The Guardian紙によれば、Eliminaliaは依頼者の情報とどうでもいい情報を結び付けるための「スパム記事」をネットに送り出すメディアを600以上も運営し、デジタルタトゥーを押し流していた。

 さらにEliminaliaは、知的財産の保護を目的とした「デジタルミレニアム著作権法」(DMCA)も悪用していたという。これは米国の法律で、企業や個人が他者に自分のコンテンツを盗用されたときに著作権侵害の削除申し立てを可能にするものだ。申し立てに際して証拠を提出する必要はない。もちろん虚偽があれば偽証罪になるが、同社は特にそれを気にすることもなく、申し立てては特定の情報を消していた。

 不正な方法によって、犯罪に近しい人物や企業にとって不利になるデジタルタトゥーの消去にEliminaliaが携わっていたことは明確だ。その手法が白日の下にさらされたわけだ。

 同社は2023年に社名を「iData Protection」に変更した。今回の報道を予測していたのかもしれない。しかし、一連の報道から「世界中のメディアで公開されたこの件は、そう簡単には消すことはできないだろう」とThe Guardian紙の記事は結んだ。皮肉にも、Eliminaliaのグレーな振る舞いがデジタルタトゥーとして刻まれてしまったわけだが、それを消すために同社は今後どう動くのだろうか。


上司X

上司X: デジタルタトゥーの消去を請け負っていた企業が、不正な方法でヤバい顧客のデジタルタトゥーを消していた、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: なんとしても自分の情報を消したい人とそれを不正な手段でもかなえようとする業者……。


上司X

上司X: 両者の思惑が一致した結果だろうけど、不正はどうかと思うね、やっぱり。グレーな業者に頼るのは良くないんじゃないのかね。


ブラックピット

ブラックピット: でもまあ、なんとかしてデジタルタトゥーを消したいと思う人はいるんでしょうね。


上司X

上司X: そうだな。しかし、ホント最近の若者は、一体何を好んで自分でデジタルタトゥーを刻むようなことをするのか、俺には理解できんよ。悪質な業者に頼むぐらいなら、そもそもデジタルタトゥーが刻まれるようなことをすべきじゃないと思うが。


ブラックピット

ブラックピット: もちろん彼らも望んじゃいないでしょう。あれはなんというか、拡散されないと思っているんでしょうね。SNSの、24時間で消える機能なら大丈夫と思っていたとか。


上司X

上司X: 24時間もあれば、世界中に拡散されるには十分な時間なのにな。オマケにデジタルだからコピーだって難しくない。


ブラックピット

ブラックピット: 今後はデジタルネイティブ世代にそういう知見を広めていく必要がありそうですね。しかし、今回告発されたのはスペインの業者でしたけど、日本でもそういう消去業者はいるんですかね?


上司X

上司X: 検索すればどっさり出てくるかもよ。実際、どういう手法で消すのかは分からんけどな。あまりにもあくどい手法だと、今回の件みたいにいろいろさらされて、自分たちのデジタルタトゥーがしっかり刻まれることになるだろうよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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