では、具体的なSDSの活用イメージを見てみることにしよう。以下に3つの類型を示す。
マルチベンダーのストレージを簡単にSDS化できるのがこのタイプ。既存環境から仮想化エンジンへのつなぎ替えがいるが、仮想化エンジンがコントロールプレーンからの制御に従ってデータフローを処理するため、どのような物理ストレージでも利用できる良さがある。その半面、ストレージ側の固有の機能や特徴が活用しにくい面も指摘されている。製品としてはNetApp FlexArray、IBM SVC、EMC VPLEX、Hitachi VSPなどがある。
もう1つの既存ストレージ活用型は、既存環境をほぼ変更せずに導入でき、ストレージのネイティブ機能(レプリケーションや自動階層化管理機能など)も活用可能な方法だ。ストレージの仮想化はデータプレーンの外で行われる「アウト・オブ・バンド管理」と呼ばれる手法をとる。ただし機種対応にはコントロールプレーンで定義するAPIに対応したドライバが必要になる。
製品としてはOpenStackモジュールであるCinderやEMC ViPRなどがこのタイプ。例えばCinderをコントロールプレーンに使い、オープンソースの分散ファイルシステムのCephと組み合わせれば低コストにスケーラビリティの高いSDSが実現すると考えられる。現在、最も関心が寄せられているのがこのタイプだ。なおSAN上で複数の管理アプリケーションを動作させることを目指すSMI-Sも、これに近い考え方である。
汎用x86系サーバが搭載するHDDを仮想化してプールするタイプ。ストレージ機能は各サーバのOS上のソフトウェアが担当し、それがSDSレイヤーとなり、コントロールプレーンと連携して制御を行う。製品としてはCeph、GlusterFS、EMC ScaleIO、VMware vSANなど多数がある。
以上のように、ストレージベンダーや仮想化ツールベンダーがSDS製品を提供する一方で、オープンソースのCephやGlusterFS(Red Hatから商用提供あり)、OpenStackを利用する方法があり、どちらかといえばオープンソース製品を利用する方法が現在は注目されているようだ。
サーバやネットワーク仮想化のようにはハードウェアとAPIの標準化が進んでおらず、まだSDSの解釈も実装方法も多様である。普及のためにはベンダー側のさらなる協力が必要だろう。また今後はCPUやサーバサイドフラッシュなどの高性能化が見込まれるため、コモディティサーバベースのSDSが発展していくと考えられる。
SDSのあらましは、ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション日本支部(SNIA-J)技術委員会副委員長の山川 聡氏への取材を参考にした。SNIA-JではSDSに関するホワイトペーパーをはじめ関連資料を公開している。
1997年に米国で発足した国際的なストレージ業界団体。ストレージネットワーキングソリューションの教育、啓発、標準化を推進している。日本支部(SNIA-J)は2001年、国内主要ストレージ関連企業を中心に設立されている。
「SDS」との関連は?
ストレージ関連技術の標準化にも積極的に取り組んでおり、かねてSDSについて議論を重ね、2015年には、その成果となるホワイトペーパーを公開した。
「SDN」(Software Defined Network)や「SDI」(Software Defined Infrastructure)「SDDC」(Software Defined Data Center)など「SD=Software Defined=ソフトウェア定義」の文字が付く技術を総称する表現。従来ハードウェアに組み込まれていた制御機能を切り離し、仮想化されたハードウェアをソフトウェアで制御して、効率よく利用しようという考え方がとられている。中でもSDNは一足早く実現して事例も多数出てきている。
「SDS」との関連は?
SDSもSDxの1つで、従来のストレージ装置が備えている制御機能を管理ソフトウェア(コントロールプレーン)が肩代わりし、マルチベンダーのストレージ(データプレーン)をソフトウェアで制御する。さまざまなSDxが実現して連携すれば、アプリケーションの設定1つでITインフラがダイナミックに変化し、ビジネス変化に即応すると期待されている。
複数のストレージ装置やサーバ搭載のストレージを仮想化し、アプリケーションが共通して使える集合体=プールとしたもの。
「SDS」との関連は?
ストレージの仮想化とストレージプールの構築、管理ソフトウェアによるその運用は従来行われてきているが、制御対象が単一のストレージベンダー製品に限られることがほとんどでユーザーの選択肢が乏しかった。マルチベンダー環境でストレージプールを作るためにはSDSが必要とされている。ただしSDSは概念の誕生からまだ日が浅く、定義が定まっていない。単一ベンダー製品で実現する同様の仕組みはやはりSDSと呼ばれる場合があるので注意が必要だ。
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