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マルチベンダーストレージ環境の自動運用を可能にする「SDS」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

単一ベンダーでしか構築できなかったストレージ仮想化をソフトウェア定義で実現するSDSが登場。SDNからSDSへ、どこまで広がるか?

» 2016年02月17日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 今回のテーマは「SDS」(Software Defined Storage、ソフトウェア定義ストレージ)だ。コモディティからハイエンドまで、社内に分散するストレージを全部プール化し、ソフトウェアで制御すれば無駄も省け、システムコストの多くを占めるストレージコストも削減できるはず。ビジネスに直結する柔軟なインフラの1要素として活用すれば、ビジネス変化への対応や新サービスの市場投入などをタイムリーに行う決め手にもなりそうだ。

「SDS」って何?

 分散して運用されているストレージを仮想的にプール化し、ストレージ利用アプリケーションの要件に見合う最適なリソースをソフトウェアが判断して用意(自動プロビジョニング)する、コンピュータとストレージ間にわたる運用モデルのことだ。

 この発想は古くからあり、SAN(Storage Area Network)は同様の概念を具現化した一例だ。しかしSANは誕生から今日まで単一ベンダー製品による枠組みを超える拡張ができていないのはご存じの通り。もっと自由に拡張でき、しかも管理工数を省ける仕組みが作れないかと考えられたのがSDSだ。

SDSの構成はどうなっているのか?

 名前から連想されるように、いわゆる「SDx」の1つであり、ハードウェアとその制御部分を分離、制御はもっぱらソフトウェアが担当して運用を自動化可能にしようというコンセプトをもつ。「Software Defined」は「ソフトウェア定義」と訳される。

 簡単にいえばリソースの利用の仕方を何通りか決めて、ポリシーあるいはメニューとし、アプリケーションが要求するワークロードに応じて最適ポリシーに基づく制御を行う仕組みだ。そこに人間はかかわらず、全てソフトウェアで自動化するのがSDxの考え方だ。

 SDSの場合はストレージ環境を「データプレーン」と「コントロールプレーン」に分割する。データプレーンは既存あるいは新規導入ストレージハードウェアで構成され、データ格納と転送処理だけを担当するレイヤーになる。

 コントロールプレーンは、完全にソフトウェアだけで実装されるレイヤーになり、アプリケーションとはAPIで連携し、アプリケーションの要求する条件に見合うよう、あらかじめ設定されたポリシーベースで自律的な制御と運用を担う。この全体のイメージを図1に示す。

SDS 図1 SDSの構成要素(資料提供:ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション日本支部)

 このように、データプレーンはさまざまなベンダー製のディスクアレイやサーバ搭載HDD/SDD、オールフラッシュストレージなどの物理ストレージの集合体になる。

 コントロールプレーンはポリシーベースの自動化エンジンが中心となり、幾つかの抽象化されたストレージプールが定義される。図のGold、Silver、Bronzeはいわばストレージプールのグレードを表している。

 具体例でいえば、各筐体内に混在するストレージから、例えばSSDの能力をプールした高速だが高価格なプール、それに準じたFCディスクの能力のプール、SASディスクの能力のプール、SATAディスクの能力のプールはアーカイブ用途に使うというようなパターンが考えられる。

 アプリケーションとコントロールプレーンは、標準化されたオープンインタフェース(API)で接続する。一般的にはHTTP/RESTfulなAPIがサポートされる。またデータプレーンとコントロールプレーンは、データプレーンの物理ストレージのネイティブAPIなどで接続する。

 SNIA(Storage Networking Industry Association、ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション)が開発する標準仕様SMI-S(Storage Management Initiative - Specification)にのっとるAPIも候補になろう。APIの利用により、人間による作業の工数とミス発生リスクをなくせる。

 なお、図1の色分けされたブロックは、以下に述べる「SDSの必須要件」のそれぞれに対応する箇所を示している。

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