同じ製品のアップグレードであっても乗り換えであっても、最新機能の恩恵を受けるには、少なからずアプリケーション側に影響が出る可能性がある。影響が出ないことの検証やテストにも相応の工数が発生するのはもちろん、また、導入と併せて運用プロセスの切り分けや統合といった見直しも検討したいところだろう。重要な基幹業務システムへの適用となると、アプライアンスなどを用いたとしても相応の導入期間が掛かる。
では、「いま目の前にある処理遅延を解消する」という短期的な課題解決には、どんな選択肢が考えられるだろうか。まずはここから考えていこう。
「いま目の前にある処理遅延を解消する」際に、特に問題となりがちなのはバッチ処理の“突き抜け”だ。十分なバッファーを読んでシステムを導入していても、想定を超えてバッチ処理対象データ量が増加したり、必要なバッチ処理そのものが増えたりすると、夜間バッチのはずが始業時間を過ぎても処理が終わらずに突き抜けてしまう。
予算面でも計画より早く既存システムの限界が来た場合、最小限のコストで「生きながらえる」には、既存のシステムに極力手を入れず、高速化のメリットだけを享受する方法を考えたい。
この場合の最善策は、これまで「ディスクアレイ」を使っていたならば、そのまま「オールフラッシュストレージアレイ」やフラッシュとディスクストレージを組み合わせた「ハイブリッドストレージ」に置き換える方法が最適だ。フラッシュストレージについては過去に解説しているので、そちらも参考にしてほしい。ストレージ置き換え施策に加えて、バッチプログラムに逐次処理があるようならば、それらを、I/O性能が高いフラッシュストレージの利点を生かす目的で並列処理に書き換えると、劇的に処理時間が改善する。これは、現在のデータベースシステム高速化の定石といえる手法だ。
従来、HDとの比較で高価とされてきたフラッシュストレージだが、生産量の増加などを背景に、一説には2017年ごろにGB当たりの単価が逆転すると予測されている。2016年データベース周辺のハードウェア見直しがある場合には、必須で評価・検討しておくべきだろう。
データベース高速化を実現するストレージはフラッシュだけではない。フラッシュストレージはこれまでのHDの置き換えと考えられ、アレイ型であればインタフェースには40Gbpsのファイバーチャネルなどが利用される。
高速なストレージという意味では、フラッシュストレージアレイよりも高速な「PCIeバス接続型フラッシュストレージ」やメモリバスに接続する「NVDIMM」といったハードウェアも挙げられるが、容量に限界があるため、こちらはリード/ライト キャッシュなどの用途で使われることが多い。
NVDIMMはDDR4の追加規格として2015年に標準化されたばかりのメモリバスに直結するタイプのストレージだ。利用方法や設定によって、メモリとしてもストレージとしても利用できるようになっている。DDR4の帯域を利用できるため、一般的なオールフラッシュストレージアレイと比較すると約20倍もの応答速度になるという。現在では8GBのNVDIMMを16枚、128GB分の容量を確保することができるようになっている。
NVDIMMは今後普及が見込まれているデバイスであることから、いまデータベースシステムの変更を検討中であれば併せて評価してみても良いだろう。
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