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色も材料も接合強度も設計できる3Dデータ仕様「FAV」って何?5分で分かる最新キーワード解説(2/3 ページ)

» 2016年09月14日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

FAVを利用するメリットは?

 FAVは単に外形が分かれば良いCGや意匠デザインのプロトタイピングだけではなく、エンジニアリング用途へのさらなる活用が期待できる。各種の属性が記述できることにより、例えば次のような利点がある。

 複雑な内部構造にさまざまな色を付け、その外部構造を透明または半透明の材料で構成すればデザイン性の高いアクセサリーやパーツを作れる。医療用の臓器模型などに応用すると作成が容易になる他、コンピュータ上での手術シミュレーションなどにも応用が利く。

材料

 1つの製品の各部で軟らかい部分と硬い部分を一度に設計できる。例えば、安価なプラスチックを表面に使い、内部では高価で硬い金属材料で構造強度を確保したり、内部は丈夫な材料にしながら人体に触れる部分だけはゴム材料などの軟らかいものを使ったりと、用途とコストの両面で最適な材料の使い分けができる。

接合強度

 隣り合うボクセル同士に、お互いの接合の強さを記述できる。力を加えた場合にどのように各部に力が伝わるのかを造形方向を考慮に入れて計算可能になり、外から力が加わった場合に変形や破損しやすい部分がシミュレーションによってより詳細に特定できる。接合強度が強い方向に造形方向を変えたり、弱い部分に強度の高い材料や接合強度の高い材料を組み込んだりすることで、製品の強度を適切に設計できる。

製品設計の工数とコスト削減

 エンジニアリング用途での利点をもう少し詳しく説明しよう。図3には、チェスの駒の3Dモデルを作成し、それに力を加えた場合に壊れにくいように設計を変更するプロセスでの応用イメージを示す。

製品の強度を考慮して材料の使い分けを設計するイメージ例 図3 製品の強度を考慮して材料の使い分けを設計するイメージ例(出典:富士ゼロックス)

 最初に作成したモデルは、比較的強度の低い安価な材料で設計したものだ。しかし、シミュレーションによると、上から応力をかけるような場面では部分的に強いストレスがかかることが分かった。

 そこで、その部分のボクセルを取り除き、別途、同じデータで材料のパラメータを強度が高くて高額な材料のものに変えただけのモデルを作成し、先ほどのモデルのボクセルを取り除いた部分にはめ込む。すると全体として丈夫な製品設計が出来上がる。

 実際にはこれを繰り返しながら最適な設計値を求めることになるが、シミュレーションや実出力物のテストの結果を最初の3Dモデリングソフトに戻して再設計することを繰り返す従来の手法に比べて、だいぶラクになることが分かるだろう。また、製品強度を確保するために必要な高価な材料を最小限にすることも同時にできる。

 図3ではモノの表面のボクセルしか見えていないが、内部も同じようにボクセルが充填(じゅうてん)され、同時に材料の変更ができる。図4には、さらに強度を上げるために、内部に支柱を組み込むシミュレーションの例を示す。ソフト上で柱を高強度の材料のボクセルで作成し、先ほどのモデルの内部にはめ込むだけだ。図の右端の断面図のように、ボクセルを簡単に置き換えられる。

内部に支柱を組み込むシミュレーションの例 図4 内部に支柱を組み込むシミュレーションの例(出典:富士ゼロックス)

 このようにCADなどのモデリングソフトに設計を戻さなくてもボクセルのパラメータ編集や加工、置き換えられるところは大きな強みだ。また、ポリゴンベースのモデリングの場合、たとえ構造の変更がなくても、ポリゴンの重なりや抜けなどのエラーがメッシュ作成時に分かることが多い。メッシュデータをそのまま編集するのは困難なので、一度モデリングソフトに戻してエラー部分を修正しなければならない。ポリゴンベースではないFAVの場合はエラー修復の必要がなく、ここでも工数短縮が可能になる(図5)。

モデリングから3Dプリンタへの出力までのプロセスの違い 図5 モデリングから3Dプリンタへの出力までのプロセスの違い(出典:富士ゼロックス)

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