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NTTデータが語る、デジタル時代の8つの技術トレンドKeyConductors

膨大なデータから有益な知見を見つけ出すために、自動車レース「インディ500」でNTTデータが取り組んだこととは?

» 2016年12月21日 10時00分 公開
[宮田健キーマンズネット]

 2016年12月1日、製造業においてCAD(コンピュータ支援設計)、製品ライフサイクル管理(PLM)、サービス管理(SLM)ソリューションを提供するPTCジャパン主催のイベント「PTC Forum Japan2016」が東京・新宿のベルサール新宿グランドで開催された。

 本記事では講演群の中から、大手SI企業がIoT時代をどう迎え、どう価値を提供していくのかというビジョンを共有すべく、NTTデータが自社の取り組みを紹介した「デジタル時代を創るITのチカラ」をレポートしよう。

デジタルの力で資産を未来につなげる

岩本敏男氏 岩本敏男氏

 登壇したNTTデータ代表取締役社長 岩本敏男氏はまず、同社の取り組みの1つである「バチカン教皇庁図書館デジタルアーカイビング事業」を紹介した。これはバチカン教皇庁が2500年以上にわたり所蔵する8万2000部の文献を全てデジタル化し、将来の子どもたちに資産をつなげるというプロジェクトだ。

 この資産は「Digital Vatican Library」で公開されており、「ネットでオープンにしたいという意向をもとに、デジタルアーカイブした資産が公開されている。ドネーションも受け付けているのでぜひ寄付もしてほしい」と述べた。


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デジタルとは何か

 NTTデータにおける「デジタル」の取り組みが紹介された後、岩本氏はその「デジタル」とは何かを深く掘り下げる。アルビン・トフラーが「第三の波」として情報通信革命を掲げ、これまで経済を発展させる原材料は「土地」や「鉄」だったが、今や「データ」が情報化時代を作り上げている。岩本氏は、2014年までは「SMACS」がITの潮流(図1)であったが、もはやそれもいわれなくなりつつある。それらの全てに「IoT(Internet of Things)」のインパクトが加わり、進化が加速していると述べる。それが、岩本氏による「デジタル」の定義だ。

図1 SMACSは「Social」「Mobile」「Big data Analytics」「Cloud」「Security」 図1 SMACSは「Social」「Mobile」「Big data Analytics」「Cloud」「Security」
図2 現在ではさらに「IoT」「AI」が加わり、進化が加速したと定義づける 図2 現在ではさらに「IoT」「AI」が加わり、進化が加速したと定義づける。

意志決定のための「情報の三階層」

 そして岩本氏は、情報の3階層という考え方を述べる。「データ」と「情報」と「インテリジェンス」の3層に分かれており、意味を持つとは限らない大量な「事実」をフィルタリングし、その中から意味を持つ情報を抽出する。そしてそのうち「意志決定をする源泉」であるインテリジェンスを取り出すという考え方だ。

図3 情報の3階層。膨大なデータを適切にフィルタリングする。 図3 情報の3階層。膨大なデータを適切にフィルタリングする。

 「行動をジャッジするとき、意志決定には「インテリジェンス」のレベルにまで情報を引き上げているはずだ。例えば企業のM&Aもそうだろう。ただし、これまでは人間の経験値や優れた人からのアドバイス、企業の信念といったものを取締役会で「フィルタリング」するなど、あいまいとしていた」と岩本氏は述べる。

 しかし、その源泉となる「データ」は大量だ。IDCによると、世界に流通するデータは、2020年には44ゼタバイト(44兆GB)にも達すると考えられている。また、そのデータの内容は写真、音声、動画などの非構造化データが中心になるだろう。「そのような非構造化データをどのようにハンドリングし、意志決定に使うか――ここに、ITのパワーが使える」と岩本氏は述べる。

図5 膨大なデータをITの力でインテリジェンスに引き上げる。データの収集は「IoT」が活躍する。 図5 膨大なデータをITの力でインテリジェンスに引き上げる。データの収集は「IoT」が活躍する。

インテリジェンスのその先にあるもの

 IoTの力により、膨大なデータが収集できるようになり、その膨大なデータをAIが適切にフィルタリングできると、その先にはまた1段階上がった「IT」の世界が待っている。コンピュータが行動・判断まで行い、自律的に動く時代だ。

図6 その先にあるのは「自立行動」「自立判断」 図6 その先にあるのは「自立行動」「自立判断」

 もはやこの時代に私たちは生きているのかもしれない。既に株式売買の世界では「アルゴリズムトレード」と呼ばれるメカニズムが使われており、1000分の1秒単位での売買が行われている。

 さらに、IoTの世界でもデータ集約からインテリジェンスを取り出し、ビジネスにつなげている。米GEの事例では、当初保守のために飛行機のエンジンに付けた各種センサーのデータを解析することで、最適な飛行経路の算出が可能となり、現在ではコンサルティングビジネスも行うようになっているという。

図7 米GEにおけるビジネスの例 図7 米GEにおけるビジネスの例
図8 膨大なIoTデータからインテリジェンスを取り出した事例といえる。 図8 膨大なIoTデータからインテリジェンスを取り出した事例といえる。

「×Tech」の世界がインサイトを提供する

 岩本氏はこのような「テクノロジー」があらゆる場所に使われることにより、従来とは異なる視点が得られるようになると述べる。例えば「FinTech」「MediTech」「AgliTech」などと表現されるようなものが展開され、この潮流をどう読み取るかが重要だと述べた。

 例えばNTTデータがスポンサードしていた「Chip Ganassiレーシングチーム」では、インディ500のレースにおいて走行距離や速度、ハンドル位置などの斜体情報だけでなく、ドライバの心電位や筋電位を取るためのセンサーを付け、レース中にどのような負荷がかかるのかを可視化した。「残念ながら優勝はできなかったが、興味深いデータが取れた」と岩本氏は述べる。

図9 インディ500では「ドライバーの情報」もデータとして取得した。 図9 インディ500では「ドライバーの情報」もデータとして取得した。

 そしてNTTデータは、そのような「インサイト」が何を導き出すかを、将来のために研究、開発を続けている。「NTT DATA Technology Foresight」(http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html)では、世界に変化をもたらす重要課題を抽出し、近未来の情報社会を予見し、そのために必要な技術は何かというレポートを毎年発行している。これは2017年初頭には最新版が公開されるとのことだ。

図10 NTT DATA Technology Foresight 図10 NTT DATA Technology Foresight
図11 NTTデータが考える、世界に変化をもたらす60の重要課題 図11 NTTデータが考える、世界に変化をもたらす60の重要課題
図12 多くの革新技術から8つの技術トレンドが紹介されている。 図12 多くの革新技術から8つの技術トレンドが紹介されている。
全英オープン X NTTデータ・NTTデータ 全英オープン X NTTデータ・NTTデータ

 「NTT DATA Technology Foresight」では60の重要課題と、247の革新技術を抽出し、近未来の情報社会を予見しようとしている。その革新技術の1つとして紹介されたのは、ゴルフの世界大会「全英オープン」における取り組みだという。近未来の観戦スタイルとして、360度カメラで撮影したデータを世界に向けて配信を行っている。また、実際の会場で発生するさまざまなデータをリアルタイムにビジュアライズし、観戦できるようにするなど、テクノロジーを使って新しいスタイルのゴルフ観戦を提案している。

経営とは「環境適応業」

 最後に岩本氏は、アルビン・トフラー氏の言葉を引用した。変化は人生にとって必要不可欠なだけではない。変化こそが人生なのだ――。その言葉を受け、岩本氏は述べる。

 「経営とは環境的横行の私の考え方だと思っている。われわれも変化を恐れるのではなく、進んでその変化を受け入れ、そして新しい価値を創造していきたい」。

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