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業務改革の次の一手となる「RPA」

» 2017年01月06日 10時00分 公開
[RPA BANK]

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欧米諸国などと比べ、生産性が低いと言われ続けている日本のホワイトカラー。その理由の一端は、定型業務(単純作業)の多さにあるとアビームコンサルティングの金弘潤一郎氏は指摘する。こうした定型業務から解放し、生産性を高めるツールとしてRPAの活用が期待されている。しかし、これまでIT投資を通じて業務改革を進めてきた企業にとってもRPAは有効な手段となり得るのだろうか。企業のRPA導入をサポートしてきた金弘氏に聞いた。

2016年から「RPA(Robotic Process Automation)」という言葉を聞くことが多くなってきた――。そう感じる人は多いのではないだろうか。経営コンサルティング会社のアビームコンサルティング 経営改革セクター 戦略ビジネスユニット ディレクターの金弘潤一郎氏もその1人だ。「RPAを導入検討したいというお客様が、2016年は前年に比べて10倍以上増えました」と金弘氏は明かす。

アビームコンサルティングは、アジアを基点にビジネスを展開するグローバルコンサルティングファーム。企業の業務改革の構想策定から実現までをサポートとすることを事業としている。そして最近、業務改革を行うためのツールとしてRPAを選択肢に入れる顧客が増加しているという。

とはいえ、これまでも膨大なIT投資を通じて業務改革を進めてきた企業もある中で、なぜRPAが注目されているのだろうか。そして、RPAは具体的にどのような業務改革を実現してくれるというのだろうか。

IT投資を通じて筋肉質になった企業の次なる一手「RPA」

金弘氏によれば、RPAを導入する企業には大きく分けて2タイプあるという。1つはこれまで業務改革に取り組むことができていなかったか、あるいは取り組むきっかけがなかった企業。もう1つはこれまでIT投資を通じて、徹底的に業務改革を進めてきた企業である。前者にとってRPA活用が有効なことはもちろんのこと、後者においてもRPA活用はその力を発揮すると金弘氏は説明する

「IT投資など従来の手法で業務改革を進めてきた企業は、作業の無駄やむらを絞りに絞ったいわば“筋肉質な企業”です。そうした企業がもう1段シェイプアップしようとするときにRPAは大きな効果を発揮します」(金弘氏)

では、どんな作業にRPAを導入することができるのだろうか。「業務がしっかりとシステム化されている企業であっても、手作業で行っている仕事が残っていることが少なくありません。中でも縦割りの仕組みとなっている組織においては、手作業で行っている定型業務が見つかることが多くあります」と金弘氏は説明する。

例えば、様々な情報を組み合わせて計画や実績などの資料を作成し、報告する作業。「当社では、“Excelバケツリレー”と呼んでいますが、Excelで作ったファイルをメールで1段階ずつ上げて行くようなことが、大企業でも少なからず見受けられます」と金弘氏。各階層で担当者がExcelファイルを少しずつ加工していくため、そのファイルを最終的に利用する人物に届くまでに多くの時間が掛かってしまうという。

「本来であれば、それぞれの階層で意思決定や戦略を考えることに時間を使うべきなのですが、様々な情報を組み合わせた資料の作成や届いたメールの転記作業、添付ファイルの加工作業やまとめ作業などに多くの時間を取られてしまうといった話を聞くことが少なくありません」(金弘氏)

RPAはこうした定型業務を人間に代替して行ってくれる。それによって人間は、新しいビジネスアイデアを考えることなどいわゆるクリエイティブな業務に集中できるようになるのだ。

「ほかにも、RPAは最新の市場情報をインターネットで大量かつ定期的に集めてくるような“正確さとスピード”が求められる作業にも有効です。広範囲の業務における利用が期待できるRPAの導入は、筋肉質な企業にも大きな効果をもたらしてくれます」(金弘氏)

RPA活用によって創造性を必要とする業務が中心に

 IT投資による業務の標準化を行ってきたにも関わらず、日本企業におけるホワイトカラーの生産性が低いことは長らく指摘され続けてきた。日本生産性本部の「日本の生産性の動向2015年版」によると、日本の労働生産性はOECD加盟国34か国中21位となっている。

「それは、業務の標準化はシステムなどのIT投資を通じて行われてきましたが、定型業務をロボットに代行させるというRPA的な発想がなかったからです。もう1段進んだ状態つまり、定型業務をRPAに代行させることで、日本企業のホワイトカラーはよりクリエイティブな仕事に時間を使うことができるようになり、生産性も上がるはずです」と金弘氏は説明する。

RPAは今後、1つのビジネスインフラとして広がっていくと金弘氏は予測する。AI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)と密接に連携し、RPAはより広い範囲で人間の作業を代替していくようになるというのだ。

「それだけではありません。RPAは時間や場所に縛られない柔軟な働き方を行う上でも重要な役割を担うでしょう。アビームコンサルティングとしても、それに寄与するソリューションを提供していきたいと考えています」(金弘氏)

企業は競争力を高めていくために生産性を上げていくことが求めれる一方、残業や休日出勤を減らすなどといった従業員のワークライフバランスに考慮していくことも要請されている。また今後、労働人口が減少するに従い、優秀な従業員を採用することも難しくなってくる。

こうしたビジネス環境の中、従来の手法で業務改革を行ってきた筋肉質な企業などが、次の一手としてRPAを導入するケースは今後、ますます増えていくだろう。金弘氏が言うように、RPAは今後、ビジネスインフラとして欠かせない存在になっていくに違いない。

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