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事例で理解するワークフローツールの最新活用法IT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2017年01月16日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

ビジネス変革を成功へ導くワークフローツール3つの事例

 また、同社が実施した別の調査によれば、「意思決定の80%が紙のプロセスに依存している」という。その結果、「承認に時間がかかりすぎていると感じる」(33%)、「機密情報が誤って露呈するリスクがある」(25%)といった問題意識があり、従業員が1日の労働時間の3分の1を紙のプロセスに費やしているという結果にもつながっている。

 これらの課題はワークフローツールを導入することで解決できる可能性がある。そのためのヒントを3つの事例で紹介しよう。

ペーパーレス化には社員への意識浸透とルール整備が大事

 精油事業の国内最大手であるJ-オイルミルズは、内部統制強化を主目的にワークフローツールの導入を決めた。従来の紙による業務フローでは、申請情報の共有が正しく行われているか、承認が適切に行われているかに不安があったからだ。

 紙ベースの運用からワークフローツールへの移行に当たっては書類の電子化が不可欠だった。まずは情報システム部内の交通費申請フローから運用を始め、各種申請フローをツールによって電子化していった。

 しかし、運用範囲を業務部門へと広げてみると「印鑑を押す」ことへのこだわりが根強く、申請から承認までのルールに曖昧な部分もあった。そこで情報システム部がワークフローの仕組みを各部門に説明するとともに、ルール整備の議論を進めていった。

 地道な基盤整備が功を奏し、3〜4カ月後には承認プロセスのスピードアップや正確さといったワークフローツールならではの業務改善効果が現れ、他部門からも「使いたい」との声が上がるようになった。当初は約50人でのスモールスタートだったが、その後、全社規模(約1000人)での運用へと移行した。

 同社で使われる申請書は約70種類、処理件数は年間1万7000件に上る。申請作業の効率化によって、年間1000万円のコスト削減効果が生まれている。スモールスタートから実績を積み上げ、社員の意識を変えつつ、基盤ルールの整備を図ったことが、大規模運用によるコスト削減につながったのだ。

導入成功のポイント

  • 目的を定めてスモールスタート
  • 実績を示して納得させ、ルール整備を並行

導入製品

  • パナソニック ネットソリューションズ「MajorFlow」

給与明細やタイムカードをなくし、社員と店舗スタッフが共通で利用するワークフローを実現

 牛丼を中心としたフードチェーンを展開する松屋フーズでは、アルバイト店員を含め約2万人の従業員が働く。もともと本部社員とエリアマネジャーはグループウェアのワークフロー機能を使って運用していたが、店舗を含めた業務効率化のためにワークフローツールのリプレースに踏み切った。

 新ワークフローツールの選定は、アルバイト店員でも簡単かつすぐに使いこなせることを第一に考えた。そのためには紙の帳票と同じ感覚で電子帳票を作成でき、従来の業務フローと大きな違いが生じないことが大切だった。当初は4帳票でスタートしたが、半年足らずで新システムへの全面移行を完了した。現在は80種類を超える帳票類をペーパーレス化している。

 また、紙で配っていた給与明細の電子化も行った。社員はいつでも参照、印刷できるようにし、アルバイトには店長が印刷して配布するようにした。それまで特殊な用紙に印刷し、折り込み、のり付けして各店舗に配送していた毎月1万4000枚の給与明細の作成作業がなくなり、大きなコスト削減を実現した。

 さらに、タイムカード機能もワークフローツールに取り込んだ。実績の確認から申請、上長承認までを行ったデータを給与システムに転送して給与計算を行っている。

導入成功のポイント

  • 従業員のリテラシーを問わない優しい操作性を生かす
  • ペーパーレス化で労力とコストの大幅削減

導入製品

  • エイトレッド「X-point」

業務部門の「セルフ運用」、業務自動化も実現

 大和証券グループのシンクタンクである大和総研では、以前から一部業務で独自ワークフローシステムを運用していた。しかし利用可能な業務が限定され、メンテナンスも難しく、全社展開には至らなかった。

 そこで紙ベースの申請書から迅速に電子化でき、しかも全社標準となり得る新ワークフローツールの導入を決めた。このとき、重視した3つの要件があった。1つ目は「セルフ運用」で、現場が情報システム部門に頼ることなく独自にワークフローを運用できることだ。これは短期間で成果を出すために不可欠と考えた。残りの2つは操作性と信頼性である。

 現在、申請書は約900種類になり、月間処理件数は2万5000件に達する。例えば、各ビルを訪れる来客の入館申請、PCの貸与やメールアドレス作成などの申請、交通費申請、支払や請求などの費用関係の申請、各種稟議書の申請などに利用されている。

 また、一部業務の自動化もワークフローツールによって達成した。1つはシステムの運用管理業務で、システム連係指示コマンドを管理者が承認すると自動的に実行する仕組みを作った。これにより作業遅れ、作業ミスの防止ができ、省力化とスピードアップが実現した。もう1つは、セキュリティルームの入室申請と利用実績の自動突き合わせだ。人間によるログの突きあわせを省力化し、リスク管理面でも強化につながっている。

導入成功のポイント

  • セルフ運用、操作性、信頼性で全社展開
  • 複雑な業務処理の自動化が可能

導入製品

  • エイトレッド「AgileWorks」

オンプレミスとクラウド、その分かれ目は?

 ワークフローツールには、オンプレミス環境用のパッケージ製品と、クラウド型(SaaS)製品がある。そのどちらを導入するかは企業規模やワークフローの利用実態によって定まるケースが多い。ちなみにオンプレミス版でも自前でサーバインフラを用意することは減少傾向にあり、IaaS上に構築するケースが増えている。

 ざっくりいえば、独自のワークフローやフォームを作り込みたい場合にはカスタマイズ性に優れたパッケージ製品が向き、クラウド型製品は汎用的な機能や豊富なテンプレートを利用してノンカスタマイズで導入する場合に向く。

 また、独自に作り込んだ既存の業務システムや管理システムとの連係を図る場合にはパッケージ製品の方が作り込みやすく、一般的なグループウェアなどとの連係を望む場合にはクラウド型製品の連係機能でも十分に対応可能だ。

 ワークフローツールには、グループ企業などのマルチテナント環境への対応やワークフローの世代管理、多言語対応など、新しい機能も次々に盛り込まれているので、ベンダーの発信する新情報を収集し、検討する必要があるだろう。

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