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無償か有償か? 現代版UCを選ぶ際の6つのポイントIT導入完全ガイド(2/2 ページ)

» 2017年01月30日 10時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]
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(3)無償ツールか有償ツールか?

 現在、世の中で広く普及している「LINE」や「SKype」といった無償の個人向けコミュニケーションツールを、ビジネスでも積極的に活用しようという動きも一部では進んでいる。ツール自体が無償なので、システム導入・運用に掛かるコストを極小化できる上、従業員にとってもプライベートで使い慣れたツールなので、違和感なくすぐ使いこなすことができる。

 その一方で、これらのツールはビジネス用途を想定して作られていないため、企業で利用するとなるとセキュリティや管理、ガバナンスなどの面で課題も多い。そのため、コストメリットだけに目を奪われて安易に個人向けツールに走る前に、一度立ち止まってそのメリットやデメリットを冷静に検討したい。

 ちなみに企業向けに開発されたツールの中にも、例えばシスコシステムズの「Cisco Spark」のように一通りの基本機能は無償で提供されており、より大規模な環境での利用や、高度な機能を使いたくなったら、月額料金の発生するオプション機能を利用するという課金体系を持つサービスもある。また、ITエンジニアに人気の高いツール「Slack」も、これと似たような課金体系を持つ。従って、単に「有償か無償か」の二者択一ではなく、さまざまな製品・サービスの課金体系を見比べた上でコスト比較を行うといいだろう。

(4)「社内利用が中心」か「社外も含めての利用」か?

 クラウドサービスを使ってUC環境を構築するメリットの1つに、社内ネットワークからだけではなく、社外からもインターネットを通じて手軽にサービスを利用できる点がある。これにより、従業員のモバイルワークや在宅勤務など、ワークスタイルの多様化を促進できる。そして同時に、取引先や協力会社など、社外の人間とも手軽にコミュニケーションが取れるようになるメリットがある。かつてのUCは社内で働く従業員個人の生産性向上を狙ったものだったが、現代のUCやコミュニケーション・コラボレーションツールは、社内だけでなく社外も含めた広範な立場の人々との協業を促進することを目指しているのだ。

 こうして社内外問わずあらゆるチームやグループのコミュニケーションが活発化することは、そのままビジネス自体の活性化につながる反面、社外への情報漏えいのリスクが増大するという副作用ももたらす。そこで、社外の相手も含むコミュニケーション基盤を設計する際には、ユーザーの立場ごとに情報へのアクセス権限をきめ細かく制御できる機能が求められる。例えば前出のCisco Sparkでは、社内ユーザーをドメインごとにまとめて管理するため、ドメイン外の社外ユーザーの存在を自動的に認識し、ユーザーに分かりやすく通知することができるようになっている。

(5)管理機能はどれだけ充実しているか?

 ユーザーが退職した際、アカウントをチャットグループから外すのを忘れてしまったために、会社の機密情報が社外に漏れてしまった。チャットツールの業務利用が広がるにつれ、こうした事案が後を絶たない。

 こうした事態を防ぐためには、管理者が社内のユーザーを一括管理できる機能が不可欠だ。それも、単に全ユーザーを横並びで管理できるだけでなく、組織体制に応じてユーザーをグループ分けする、階層に分けて管理できる機能があれば管理効率は大幅に向上する。企業向けをうたったツールの中にも、ユーザーをグループや階層に分けて管理する機能を備えていないものもあるため、ぜひチェックしておくことをお勧めしたい。

 さらにユーザーの日々の利用状況を監査することもできる。何か問題が起きたときに原因を調べる際には、ユーザーの利用履歴が記録されたログデータの存在が不可欠だ。しかし個人向けツールの中には、ログを参照できないものもあるため注意が必要だ。また監査や法令の要請に応じて、ログを一定期間保存するよう企業に義務付けられることもある。たとえログの保存・参照がサポートされている製品・サービスであっても、ログを長期間保存するためには別途オプション料金が掛かることもあるため、この点も自社の要件と照らし合わせてチェックしておきたい。

(6)セキュリティ対策は十分か?

 業務で利用するコミュニケーションツール上では、社外に決して漏らすことができない機微な情報も頻繁に飛び交うことになる。そのため、情報漏えい対策には万全を期したい。この場合の対策には、「サーバ上の対策」と「クライアント上の対策」の2つのレベルが存在する。

 特にクラウドサービスを利用する場合には、サーバ上で自社の情報がどのように扱われるのか、あらかじめしっかり確認しておきたい。自社で利用するシステム基盤は、他社のものとどのように分離されているのか。サービスレベルは保証されているのか。インシデントが発生した際、サービス提供側はどのような責任を負ってくれるのか。個人向けの無償サービスの場合は、こうした点で企業向けサービスと比較して心もとないこともあるため、利用規約の内容を精査しておく必要があるだろう。

 クライアント上のセキュリティ対策で特に気を付けたいのが、端末の紛失や盗難に伴う情報流出のリスクだ。近年のコミュニケーションツールは、スマートフォンでの利用を前提としたものが多い。そのため、スマートフォンが紛失・盗難に遭った際の個人情報漏えい対策があらかじめなされている製品やサービスなら、より安心して利用できるだろう。

 例えば、NTT東日本が提供する「αUC(アルファユーシー)」およびNTT西日本が提供する「スマート光ビジネスUC」では、ユーザーのスマートフォンをオフィスの固定電話(ビジネスフォン)と連携させ、クラウド上で管理するアドレス帳を使って電話の発着信を行う。そのため、ユーザーのスマートフォン上には発着信履歴が残らず、業務用のアドレス帳も保存されないため、万が一端末が紛失・盗難に遭っても個人情報流出の危険性はない。このように万が一を想定したセキュリティ対策がとられつつ、同時にユーザーの利便性も落とさないような工夫がなされた仕組みなら、より業務現場に根付きやすいだろう。

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