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光で組み合わせ最適化問題を解く「量子ニューラルネットワーク」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2017年02月22日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

量子ニューラルネットワークによる組み合わせ最適化問題の解き方

 量子ニューラルネットワークは、スピンをレーザーの位相に置き換えた。イジングモデルでは、相互作用する2つの状態がなければならないので、まずレーザー光の位相が0とπ(パイ)の2つだけとなるような位相感応増幅機を開発した。これにより、2つの位相の光パルスを確率的に作り出す光パラメトリック発振器(Optical Parametric Oscillator: OPO)が出来上がる(図3)。

光パラメトリック発振器(OPO)による人工スピンの生成 図3 光パラメトリック発振器(OPO)による人工スピンの生成(出典:NTT)

 OPOの数は、レーザーのパルス間隔が短いほど、また光ファイバーの長さが長いほど大量に生成できる。OPOが多ければ多いほど、大きなサイズの問題が解けることになる(巡回セールスマン問題で言えば、より多くの都市を対象にした計算ができる)。

 NTTによる実験では、一度に約5000個のOPOを1つの光システムで発生させることに成功している。このOPOが、いわば磁石(=人工スピン)である。Sを向いているかNを向いているかに相当するのは、発振する光が0位相なのかπ位相なのかである。

 では磁力(磁石間の相互作用)はどう設定されるのだろうか。それを説明するのが図4に示す量子測定フィードバックシステムだ。OPOパルスの一部を取り出し、位相と振幅を測定し、1つ1つのOPOの適切な相互作用の強さを計算し、その結果で「注入光パルス」を変調して光ファイバー内に入れる。それが光ファイバー内のOPOに作用して、やがて全体のエネルギーが低くなる方向で落ち着いていく。

量子測定フィードバックによる量子ニューラルネットワークの実現 図4 量子測定フィードバックによる量子ニューラルネットワークの実現(出典:NTT)

 これが量子ニューラルネットワークのごくおおまかな仕組みである。神経系に置き換えて言えば、OPOパルスがニューロンであり、量子測定フィードバック回路がシナプス結合(ニューロン同士の結合部分)ということになる。

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