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ネスレ日本がIoTで物流課題を解決、実装まで約3週間の高速開発の秘訣事例で学ぶ!業務改善のヒント(4/4 ページ)

» 2017年05月17日 10時00分 公開
[日下諒子キーマンズネット]
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物流のグリーン化にも貢献

 同システムの恩恵はそれにとどまるものではない。ネスレ日本が近年積極的に進めている省エネ、グリーン化、環境負荷抑制にも貢献するものだ。「物流のモーダルシフト」はそうした取り組みの1つ。従来のトラックによる物流倉庫への配送、倉庫から小売店などの顧客への配送の環境負荷を、鉄道や船舶などその他の輸送手段の併用によって軽減しようというのがモーダルシフトだ。同社は直接配送の部分でトラック輸送に比較し8分の1と環境負荷の少ない鉄道輸送を利用するなどし、2014年度のグリーン物流優良事業者として国土交通大臣表彰を受けた。

 現在では商品を出荷したコンテナに復路では原材料を積み込むなどの往復輸送による合理化、あるいは他業者との連携によるコンテナへの物品混載などによる空きスペースをなくした効率的な輸送などにも挑戦しているが、それでも工場や倉庫からのコンテナ輸送はトレーラーが使われる。その運用の合理化に、今回のトラック呼び出しシステムを適用すれば、さらなる物流グリーン化が図れることは間違いない。コンテナの合理的な活用と、トレーラー物流の合理化というこのアイデアは、2016年度の国土交通省グリーン物流優良事業者表彰を受賞している。

サプライチェーンの最適化のために

 伊澤氏は、このような工場の出荷現場の業務改善、物流のグリーン化・合理化などは、広い意味での「顧客価値向上活動」の一環だと考えている。「これからは人材不足の時代。トラックドライバーも出荷・入荷に関わる作業人員の不足はどんどん深刻化します。サプライチェーンがこうした時代変化に対応しなければ、いくら商品を作る能力があってもお店に届けることができなくなります。顧客の価値向上はネスレ日本の基本コンセプトです。私の立場では、物流会社や倉庫業者も顧客と捉えており、サプライチェーンの変革によって顧客価値向上を図ることが使命だと考えています。そのためにIoTはこれからますます大きな役割を担ってくれると確信しています」(伊澤氏)

 トラック呼び出しシステムは、今後、他の2つの工場の出荷業務に適用される予定だ。また運用過程で蓄積される情報はクラウド上に蓄積され、ビッグデータ解析による物流状況の統計的な可視化や、それを元にした予測と言ったアナリティクスの活用につなげていくという。

 IoTによるビジネスイノベーションが声高に語られる中で、大上段に振りかざした議論が空ぶりに終わることも多いようだ。具体的な成果が見えるところから始め、地に足がついた業務改善を行った本事例から学べることは多いはず。IoT導入に着手できずにいる企業の参考になれば幸いだ。

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