同社のTableau利用用途は主に3つだ。1つは売り上げや会員動態管理などのKPIダッシュボード、もう1つはキャンペーンなどの施策の達成率管理などの施策ダッシュボード、さらに1つは、必要に応じて柔軟に分析を行うアドホック分析だ。
吉本氏は「特にアドホック分析により、探索的なデータ分析が気軽にできるのがTableauのメリット」と強調し、数ある分析機能の中でも「LOD(詳細レベル)表現」がよくできていると称賛した。
LOD表現は、いわば分析方法の計算式表現のようなもの。吉本氏は「同じテーブルでも異なる集計次元で集計可能になる」とし、コンテキストフィルターやIIF文などの機能と組み合わせて、目的に沿ったデータ分析と可視化が容易に行えるという。
その一例として、通販などでよく見られる「初回購入の顧客にはサンプルサイズを特別価格で販売し、2回目購入時には本製品を正規価格で買ってもらう」という「2回目引き上げ」テクニックの評価のためのLOD表現が紹介された。表計算の関数利用やSQL記述とは違い、簡単なIIF構文を使った計算式記述とコンテキストフィルターなどの機能の利用により、容易に目的の集計が達成できることが示された。
また、初回購入日から1年間での累積購入金額を「年間LTV」と定義した場合の、LOD表現を使った分析の例も示された。LOD表現を活用すると柔軟にデータを目的に合わせて可視化できるというわけだ。
なお、実際のLTVの予測については「1年待たないと評価ができないのは痛い」とし、最初の数カ月のデータでLTVを予測しているとのことだ。
吉本氏は「モノからヒトへ」のデータ分析の「その先」の抱負として「ヒト中心の分析ができれば、分析のレイヤーは十分。それに加えて、実行(Execution)レイヤーに時間軸を追加したい」と語った。今この瞬間に消費者が考えていることを「モーメント」と呼び、それを捉えてCRMに活用していくことが重要だと述べた。
例えばあるブランドのサイトを見ているユーザーのモーメントは、その時点で新製品に興味を持っている、あるいは商品のリピート購入を考えているなどと推測が可能だ。これらモーメントからの推測を、過去の行動ログの集積であるユーザープレファレンスデータに掛け合わせると、より正確なモーメントが推測できると考えているのである。さらにユーザーインタビューなどの施策も加えて精度高くモーメントが推測できれば、一層効果的なマーケティングメッセージが顧客に発信できるというわけだ。これを「モーメントドリブンメッセージング」と呼び、現在の資生堂ワタシプラスのCRMのコンセプトになっているとのことだ。
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