コカ・コーラは、アプリを使って「シュッとかざしてがちゃんと出てくる」新しい経験を生むことで反響を呼んだ。その裏側には、ビーコンの仕組みを使った技術がある。ビーコン技術は売り上げ向上の鍵となるのか。
日本コカ・コーラの「Coke ON」という自動販売機(以下、自販機)アプリを知っているだろうか。Coke Onに対応する自販機で飲み物を買うと、アプリ上にポイントがたまり、15ポイントでドリンクが1本無料になる(図1)。同サービスでは、スマートフォンを「シュッとかざすと、がちゃんとドリンクが出てくる」という新しい経験が若者の反響を呼び、アプリのダウンロード数は300万を超えた。
このサービスを支えているのは、自販機に設置されたビーコン発信機とスマートフォンを連動させる技術である。Bluetooth Low Energy(BLE)を利用して、ビーコン発信機が発するビーコン信号をスマートフォンなどのデバイスにキャッチさせることで、「シュッとかざしてがちゃんと出てくる」が実現する。
モノが売れない時代といわれる昨今、どのように顧客と接点を持ちモノを売っていけばよいのか、頭を抱える企業は多いかもしれない。コカ・コーラも、年々自販機市場が縮小していくという課題を抱えており、ビーコンを使った技術を搭載するCoke Onは1つの重要な戦略となっている。
「この仕組みはコカ・コーラだけでなく、あらゆる企業に活用できる」と話すのは、ビーコン発信機のネットワークを使ってマーケティング事業を展開するunerry(ウネリー)のCEO、内山英俊氏だ。実際に同社がスーパーマーケットと共同で行った事例では、売り上げを約16%アップさせた。本稿では6月6日「Interop Tokyo2017」の同社のブース内における講演で、内山氏が語ったビーコンの活用事例を紹介していく。
ビーコンとは、無線局や発信機が発射する電波、すなわち「ビーコン信号」を受け取ることで位置などの情報を取得する仕組みを指す。今回取り上げるのはBLE(Bluetooth Low Energy)を使うものだ(以降、BLEビーコン)。ビーコン信号を専用アプリをインストールしたBluetooth対応スマートフォンで受信することで、さまざまなサービスが展開できる。
1つ目は、位置測位を利用したサービスだ。例えば、ビーコン発信機を店頭に設置しておけば、対応アプリをインストールしたスマートフォンを持つ顧客が来店したことを検知できる。屋外であればGPSを使うことも考えられるが、人工衛星からの電波が受信できない屋内であってもBLEビーコンでは位置測位が可能である。
2つ目は、ビーコン信号の受信圏内に入ったスマートフォンに対する情報配信サービスだ。ビーコン発信機が設置してある場所やモノから半径20〜30メートルのエリアに、対応アプリをインストールしたスマートフォンが接近した際、サーバを介してメッセージのプッシュ配信やコンテンツへの誘導が行える。
そして3つ目は、BLEビーコンによって得られたデータを顧客の行動分析につなげられるサービスだ。内山氏は、これにより一人一人に最適化した情報配信も可能になると話す。
こうした特長を持つことから、米国ではBLEビーコンを使った技術を販売促進に活用する例もある。例えば、BLEビーコンによる行動分析によって、「Aという店に行った人は、Bという店に行く傾向にある」というデータを取り、店舗間で相互送客を行っている。内山氏によれば、2017年には米国の主要な小売100社の売り上げのうち、20%に当たる400億ドル(約4.5兆円)がBLEビーコンからの情報提供を起点に生まれるものとみられている(図2)。
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