2つの課題は、デジタルワークスペースで解消できるとして、3つ目の課題である「社員や経営者の意識の壁」にはどう対処したらよいのだろうか。ヴイエムウェアでは、「Work@Anywhere」というコンセプトの下、幾つかの施策を行っている。「どこでも働ける、すなわち社員が柔軟に働ける環境を提供することで、社員のワークライフバランスが向上するだけでなく、アイデアやイノベーションが増えて効率も上がる」とロバートソン氏は話す。
実際に、ロバートソン氏が一時期働いていたシンガポールでは、人が会社に長時間いることがなく、皆テクノロジーを使って効率的に働きつつ、成果を出していたという。「日本のチームワークは世界の中でも最高で、そこから素晴らしいサポートやサービスも生まれるが、付き合い残業や過労死という良くない文化がある。そもそも海外には『work to death』(過労死を無理やり英訳)なんて言葉はないからね」とロバートソン氏は話す。
では、具体的にヴイエムウェアでは何を行っているのか。「Work@Anywhere」において同氏が行った施策の1つが、オフィスのリフォームだ。会議室の他に、モニターの付いたフリースペースを用意してフリーアドレスを採用し、社内のどこでも働ける場を作った。「デスクの上で仕事をするよりも、社員の気持ちがリフレッシュする」だけでなく、「『ちょっと話そうか』と軽食をとりながら気軽にコミュニケーションが生まれることで、生産性も向上した」(ロバートソン氏)
もちろん社外でのテレワークも推奨している。「営業であれば、外出してお客さまに会うことが仕事。バックオフィスの社員の仕事も、家や喫茶店でできる」と話すロバートソン氏。こうした柔軟な働き方をすることで、従業員の効率も上がったという。
「テレワークで『サボっていると思われるかもしれない』と心配する人もいるでしょう。でも、『会社で何時間も仕事をして頑張りました』ということが、お客さまの満足度につながるわけではない。営業であれば、柔軟に働くことで無駄な時間がなくなり、より多くお客さまに訪問することができるかもしれない」(ロバートソン氏)。「会社に長く居ても、全体の3割くらいはワークじゃないよね」とも話した。同氏は、テレワークを推進するために、60分だった会議を45分に抑える、テレワークの妨げにならないように会議は月曜日にしか行わないといった試みを行っている。
もちろんテレワークを浸透させるのは難しいが、ロバートソン氏は「技術の準備が整っている今、文化を変えていかなければならない。個人の意識を変えるためにトップダウンで行う部分も必要だ」と話した。同様に田澤氏も「まずはとにかくやってみて、できなかったことができると実感することが大事。テクノロジーの準備は完了しているから、後は一歩踏み出すだけ」とテレワーク導入に際して、心理的なハードルをなくしていこうと語った。
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