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レガシーITをレノボが破壊するか? データセンター向け新ブランドを発表(2/2 ページ)

» 2017年07月24日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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エンタープライズITの変化

 新ブランドの目標は、エンタープライズITの3市場で優位に立つことだ。3市場とは、仮想化以前の従来型サーバ中心の「レガシーIT」、現在主流となったサーバ/ネットワーク/ストレージがオールインワンで提供されるコンバージド/ハイパーコンバージドインフラ中心の「New IT」、HPC(High Performance Computing)および極めて高い拡張性を備える「Hyperscale(ハイパースケール)」の3つをいう。

 スチーブンソン氏は2020年のIT市場予測を示した。上述の「レガシーIT」は全体の20%に縮小、「New IT」市場が全体の40%を占め、さらに「Hyperscale」市場も全体の40%を占めるようになると語る。

図 企業情報システムのワークロード変化とレノボの戦略 図 企業情報システムのワークロード変化とレノボの戦略

レノボ史上最大の製品ポートフォリオで臨む「ThinkSystem」

 これら3つの市場に対してレノボが提供するのは、まずは安定性と機能性に優れたサーバだ。「ThinkSystem」ブランドとして新しく登場したサーバは、System Xと同じ設計チームの手によるもの。ラインアップは従来の1U/2U 2モデル展開を大きく超えて、バリューモデル1U/2U各2モデル、メインストリームモデル1U/2U各1モデル(合計6モデル)に増加した。またタワー型が1モデル、ハイエンドサーバとして2U/4Uの各1モデル、ブレードサーバ2モデル、高密度サーバ2モデル(うち1モデルは水冷)も発表された。

 サーバの最低構成価格が32万8000円の普及モデル(SR530:Xeonスケーラブル・ファミリー最大2基搭載可能)から最低構成価格278万円のミッションクリティカル用途モデル(SR950:プロセッサ当たり最大28コアのXeonスケーラブル・ファミリー最大8基搭載可能)までが取りそろえられ、最適なコストと機能、性能の兼ね合いで、投資対効果の高いモデル選定が可能になった。

図 ThinkSystem SR650(サーバ) 図 ThinkSystem SR650(サーバ)

 また、これらサーバには、管理エンジンとして「XClarity Controller」を組み込み、統合管理を容易にする一方、業界標準のサーバ管理APIであるRedfish APIを採用し、他社の管理ツールによっても管理できるためベンダーロックイン回避が可能という。

 これらに加え、オールフラッシュ/ハイブリッドSANアレイを3モデル(最低価格で88万円)、10Gイーサネット対応スイッチ3モデル(最低価格で128万円)、100Gイーサネット対応スイッチ1モデル(最低価格で592万円)、FC-SANスイッチ(最低価格で88万円)、FC-SANディレクター(最低価格で2080万円)も同ブランドに加えられた。10G BASE-Tスイッチでは他よりもポート単価で25%低い価格設定にしたとのこと。

図 オールフラッシュ/ハイブリッドSANアレイDS6200 図 オールフラッシュ/ハイブリッドSANアレイDS6200

 「ThinkSystem」ブランドの特徴を、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのデータセンターソリューション事業本部本部長 工藤磨氏は「導入・運用の負担軽減と、投資から効果を得るまでの時間短縮を追求した」と説明する。サーバ自体の信頼性とXClarity Controllerなどによる導入・管理の容易性が管理負担削減につながり、製品ポートフォリオの拡大(レノボ史上最大)、保証・保守の選択肢の拡大、オプション点数の削減といった要素が投資効果最適化あるいは納期改善に寄与している。

 また、他社の管理アプリケーションとの連携、オープン系アプリケーション、NOS(Network Operating System)などへの対応、サードパーティーアプリケーションとの連携API実装などのポイントを挙げ、ソリューションへの対応力があることも強調された。

俊敏性と柔軟性に優れたSDDC構築を図る「ThinkAgile」ブランド

 もう1つのブランド「ThinkAgile」は、「SDDC(ソフトウェア・デファインド・データセンター)」構築に寄与するサーバとソフトウェアを組み合わせた製品群を提供する。その第一弾として登場するのは「ThinkAgile SX for Microsoft Azure Stack」(ThinkAgile SXM=24U/42U、最低構成価格4400万円、9月下旬出荷開始)だ。これはMicrosoft Azure Stackをサーバに組み込んだラックレベルのソリューションとなる。Azureとオンプレミスシステムの相互運用を容易にし、ハイブリッド・クラウド構築に特化した製品となっている。

 これに加えて、ハイパーコンバージドインフラストラクチャとなるNutanixソフトウェアを統合したアプライアンスHXシリーズ、SDS(Software Defined Storage)ソフトウェア(Cloudian、DataCore、Nexenta)を搭載したストレージ製品(DXシリーズ)を、今後ThinkAgileブランドに統合していく。こうした製品も、ThinkSystemと同様にXClarity管理エンジンによって一元的な運用管理が可能だ。

 ThinkAgileブランドの特徴として、第1に「ITの俊敏性」が挙げられた。導入から投資回収までの時間を80%短縮可能という。また運用コストは23%もの削減が可能で、TCO削減にもつながるとのこと。さらに、注文から出荷までの時間を他社に比べ3倍早くし、きめ細かいサービスを行うなど、カスタマーエクスペリエンスも変革していく予定だ。

 ThinkSystemとThinkAgileブランドの製品群により、レガシーデータセンターから次世代のSDDCまでの全領域をカバーする製品ポートフォリオが提供されることになる。

 なお、スチーブンソン氏が強調したのがHPC分野に向けたインフラへの注力である。「現在のレノボは世界第2位のHPCベンダー。3年以内に1位となることを目指す」とし、IoT、ビッグデータの活用と、巨大データをベースにしたディープラーニング、AIといったソリューションとともに、パブリッククラウドを取り込んだハイパースケールのコンピューティング環境を実現する製品を提供していくという。グローバルなサプライチェーンをベースにした規模の経済による価格競争力をベースに、高速処理能力を加えて産業のイノベーションを促進していくというレノボ。本気の次世代データセンターソリューションに期待だ。

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