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大和ハウス、「みんなで使う」巨大物流拠点がすごかったイベントレポートアーカイブ(2/2 ページ)

» 2017年08月17日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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物流プラットフォームを構築し、次世代物流ソリューションサービスを提供

 WMSを担うフレームワークスの秋葉淳一社長は、DPL流山を次世代物流プラットフォームと位置付ける。そのプラットフォームを活用し、「物流に関わる企業へのサービスプロバイダーとしての機能を果たす」のが基本的な考え方だという。

秋葉淳一氏 秋葉淳一氏

 従来の物流倉庫は取扱い商材に特化した建物や、どのような商材にも対応できるフルマルチ型の建物が多く、建物、設備、マテリアルハンドリング、ロボット、WMSを企業が自前で用意する必要があった。

 しかしDPL流山では物流特性に共通性がある業種の企業が供用できる「カテゴリーマルチ」型の建物・施設を加え、テナント各社がインフラをシェアリングすることによるOPEX(Operating Expense/運用コスト)改善を目指す。

 例えばアパレル業界で求められる物流施設・設備と、冷凍食品業界で求められるそれとは温度管理設備や天井高などの大きな違いがある一方、同一業界内では大きな違いはない。そこで各業界で必要とされるインフラを備えて同業界内の複数テナントがインフラを共有しようという考え方である。これが可能になれば、各テナントが使っただけ料金を支払う従量制料金体系が実現できると秋葉氏は言う。うまくシェアリングできれば最新技術を使った設備を低コストで利用しながらビジネスの繁閑吸収、つまり繁忙期にはリソースを大量に使える一方で、閑散期には経費を抑えることでOPEX最適化が図れるというわけだ。

 また「スピードを持って最新技術を提供する」のも重要なコンセプト。ビッグデータを背景にしたAI、自動化機械、搬送ロボット、ピッキングロボットなどのような大規模投資が必要な技術も、複数企業でのシェアリングを前提にすれば、投資を抑えて最新のものを早期に、比較的容易に利用できるようになる。

 これら2点がシェアリング、OPEXモデルを考慮したサービス提供につながる。加えて物流に関わる人間の労働環境改善にも継続にトライすることも考え方のベースになっている。

図3 DLP流山で活用される新技術 図3 DLP流山で活用される新技術

 具体的なソリューション例として紹介されたのはアパレル通販/EC業者のケースである。DPL流山に建てられるアパレルカテゴリーの物流センターでは、商品の入荷から、格納、在庫、ピッキングという庫内での業務は物流ロボットのオペレーションが主になる。オペレーションのログデータはWMSに蓄積され、データを基にした機械学習によってオペレーション最適化が短サイクルで実行できるようになるという。

 また、倉庫で荷物を積み込み配送に当たるトラック業務の方は、深刻化するドライバー不足、車両不足への対応が急務。そこでは庫内のオペレーションと連動したトラック運行スケジューリングがますます重要な要素になる。この領域にはオンラインの配送依頼サービスと各車両に搭載する端末アプリを利用するクラウド型の求貨・求車マッチングサービスを連携し、合理的・効率的な配送計画や運行管理を実現していく。(詳しい仕組みは次回に掲載)

 また通販/EC事業では、商品の移動などの業務の他、入荷後にはカタログやECサイトに掲載するための商品撮影、採寸、原稿作成(業界用語で「ささげ」)の作業が必要になる。スピード化が求められる現在、倉庫内で「ささげ」の完結を望む企業も多くなっており、DPL流山ではそのためのスタジオスペースなどを設ける他、在庫情報と「ささげ」情報の一元管理して連携させる「フルフィルメントサービス」を利用して業務プロセスを合理化することができる。これ以外にも、カテゴリーごとに必要になる特有の業務サービスも利用可能にする予定である。

図4 通販/EC業界のカテゴリーマルチ物流センターの機能連携の想定例 図4 通販/EC業界のカテゴリーマルチ物流センターの機能連携の想定例

 なお、ロボットやAIなどの新技術の適用に当たっては、特にOPEXに関連する研究開発が不可欠だ。これには大和ハウスグループの既存物流拠点であるDPL市川を利用して自社で各種新技術の検証を行い、その結果をもとにDLP流山での正式サービス化を図るという。既に2018年の完成を待たずにこの作業は開始されており、DPL流山の運用開始後に投入される新技術も、DPL市川で既に検証を行ったものが正式サービス化となるため、テナント企業はそれぞれで検証・評価作業を行う必要がないとのことだ。

 以上、今回はDPL流山のコンセプトと物流のプラットフォーマー兼サービスプロバイダーとしての大和ハウスグループの取り組みについてポイントを紹介した。次回はこのコンセプトに賛同し、パートナーとして参画するGROUND、Hacobu、アッカ・インターナショナルの計3社の物流に関する考え方と取り組みを紹介する。

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