「兼任型ひとり情シス」の負担軽減を考える際には、実態をもう少し詳しく理解しておく必要がある。同じ「兼任型ひとり情シス」であっても、抱える悩みは企業によって異なる。「製品やサービスを購入する予算が確保できているが、ITを理解できる人材を採用、育成することができず、IT活用がなかなか進まない」という場合もあれば、逆に「ITに関する知識を持つ若い人材はいるが、製品やサービスを購入するための予算を確保できない」といった場合もある。
こうした企業の声を多く集めてみると、「兼任型ひとり情シス」の企業が抱える課題の根本には以下の2つの要因が深く関係していることが分かる。
この要因1と要因2のそれぞれについて、
の2通りのパターンが想定されるため、全体では以下の2×2=4通りのパターンが存在することになる。
パターン1
「製品やサービスを購入する費用」:○、「人材の採用、育成に要する費用」:○
パターン2
「製品やサービスを購入する費用」:○、「人材の採用、育成に要する費用」:×
パターン3
「製品やサービスを購入する費用」:×、「人材の採用、育成に要する費用」:○
パターン4
「製品やサービスを購入する費用」:×、「人材の採用、育成に要する費用」:×
同じ「兼任型ひとり情シス」の企業であっても、この「モノ」と「ヒト」に投じる費用が確保、捻出されているかどうかによって、負担を軽減するための取り組みも変わってくる。
そこで、「ひとり情シス」の企業に対して、上記の4つのパターンのどれに該当するかを尋ねた結果が以下のグラフである。
パターン1、パターン2、パターン4はそれぞれ全体の3〜4割を占める一方で、パターン3はわずかにとどまっている。そのため、「ITを理解する人材の採用、育成には費用を投じるが、製品やサービスに充てる予算はない」という企業は非常に少ないことが分かる。「ヒト」に投資しているのに「モノ」に投資しないと企業がごくわずかであるという結果は確かに実感とも合致する。
従って「兼任型ひとり情シス」は残りのパターン1、パターン2、パターン4に応じた3つの類型に分類することができる。
類型1
パターン1と回答した企業。「兼任型ひとり情シス」の43.0%が該当する。「モノ」と「ヒト」の双方に費用を投じている企業であるため、担当者のITスキルは比較的高く、IT予算も確保、捻出しやすい。IT活用における先行事例や導入事例としても取り上げられやすい。
類型2
パターン2と回答した企業。「兼任型ひとり情シス」の28.5%が該当する。「モノ」に費用を投じているが、「ヒト」に対する投資が少ない企業といえる。そのため、担当者のITスキルは「類型1」と比べるとやや低い。IT活用においては担当者にかかる人的負担を最小限に抑えることが重要課題となってくる。
類型3
パターン4と回答した企業。「兼任型ひとり情シス」の23.8%が該当する。「モノ」と「ヒト」の双方において十分な費用を投じることが難しい企業といえる。IT活用に際しては従来と比較して導入、運用における費用や作業負担が大幅に軽減されたIT商材を選ぶことが重要となってくる。
これら3つの類型を図示すると以下のようになる。
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