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ITの進化がもたらす「ひとり情シス」の活躍機会すご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)

» 2017年08月23日 10時00分 公開
[岩上由高ノークリサーチ]
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自社がどの類型に当てはまるかを正しく把握することが大切

 ここでユーザー企業にとって重要となるのが、「自社はどの類型に属するか」や「事例などで紹介されている企業はどの類型なのか」を意識するということだ。例えば、IT企業の広告や提案書の中に「ひとり情シスの企業でも導入に成功した導入事例」が紹介されたとしよう。しかし、導入事例に取り上げられる先進的なIT活用の多くは「類型1」が対象であることが少なくない。

 「ひとり情シスの企業でも導入に成功した」といううたい文句だけを見て「類型2」や「類型3」の企業が導入事例と同じIT商材を導入しても、導入後の管理、運用において要求される費用面や作業面の負担が重くなる可能性がある。導入事例を見る際は「例として挙げられている企業はどの類型に該当するか」を確認するようにしよう。

 また、「自社はどの類型に属するか」を判断する上では担当者の心理面も大きく影響する。例えば、「兼任型ひとり情シス」の企業で担当者に会うと、実際のITスキルは決して低いわけではないのに、「私はITのことは良く分らないので、ベンダーなどに電話で問い合わせるのは気が引ける」と遠慮していることが少なくない。

 「兼任型ひとり情シス」の担当者は自身のITスキルを確認できる機会が少ないため、「自身のITスキルは低い」と思ってしまいがちな傾向がある。実際は「類型1」に近いけれども、「類型2」や「類型3」と自己判断してしまうことがあるわけだ。すると、もっと高機能で無理なく使いこなせるIT商材があるにもかかわらず、機能などが劣ったIT商材を選んでしまう可能性が生じてくる。

 IT関連の技術は日々進歩している。そのため、「ITのことは良く分からない」という状態はごく自然といえる。電話で問い合わせたときに、顧客のITスキルに合わせた対応ができないベンダーがあったとすれば、そうしたベンダーは候補から外すべきだろう。

 上記に挙げた3つの類型はあくまでユーザー企業が自社を客観的に見つめ直すための参考基準であり、ユーザー企業をランク分けするものではない。仮に、「類型2」や「類型3」に該当するという自己判断を行ったとしても、必要なときには遠慮せずにベンダーなどに問い合わせるという姿勢を持つことが大切といえる。

兼任型ひとり情シスでもこなせるITインフラ管理

 昨今では規模の小さな企業においても従業員数と導入PC台数はおおむね同じ数となっている。そのため、PC導入、管理は「兼任型ひとり情シス」の担当者にとって負担の大きなIT管理、運用タスクの1つだ。そこで、以降ではPC導入、管理を例にとって3つの類型ごとに「兼任型ひとり情シス」でも無理なく実践できるITインフラ管理のポイントを探っていくことにしよう。

 「類型1」の企業では「少人数で管理、運用が可能で、導入費用も抑えられる新しいIT商材」を積極的に試していくという取り組みが重要となる。複数台のPCを効率的に管理する手段としては「デスクトップ仮想化(VDI)」が既に大企業でも多く導入されている。

 従来、デスクトップ仮想化はサーバ側に仮想化環境を構築するための費用や作業が障壁となり、中堅・中小企業には実践が難しいIT活用分野だった。しかし、昨今ではサーバ機器のみで仮想化環境を構築できる「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」の登場により、デスクトップ仮想化に取り組む際のハードルも下がってきている。

 このように「類型1」の企業では「以前は取り組むことが難しかったIT商材について再度検討してみる」といったアプローチを試してみると新たな発見があるはずだ。

 デスクトップ仮想化を実践するにはサーバ側に仮想化環境を構築するだけでなく、PC側のOSやアプリケーションをデスクトップ仮想化向けに設定する作業(仮想デスクトップ環境のイメージ作成)も必要となる。そのため、「類型2」に該当する企業が今すぐに取り組むのは難しい場合がある。こうしたときには既存のPC環境はそのままにして、PC内のアプリケーションやデータを一元的に管理できる運用管理、資産管理のソフトウェアを導入するという選択肢がある。これによって、離れた拠点に置かれたPCについても効率的に管理することが可能となる。

 つまり、「類型2」の企業では「ITインフラの大幅な変更は避けて、ソフトウェアによって解決する方法はないか」をまず検討してみることが有効といえる。

 運用管理、資産管理のソフトウェアを導入する際は相応の費用が必要となる。管理用サーバの社内設置が必須となることも多いため、「類型3」の企業にとっては実践が難しくなる。そこで検討すべきなのがクラウドサービスやPCベンダーがオプションで提供するサポートサービスの活用だ。

 運用管理、資産管理ソフトウェアのベンダーの中には「類型2」で述べた社内設置型ソフトウェアの機能を絞った形で安価なクラウドサービスを提供しているものもある。また、PCベンダーがトラブル発生時のオンラインサポートをオプションで提供している場合もある。いずれも管理用サーバを社内に設置する必要はなく、費用も比較的安価に抑えられている。特に後者のオプションサービスは見落としているユーザー企業も少なくないので、「どのようなサポートをしてくれるのか」を再度確認してみると良いだろう。

 このように「類型3」の企業では「手軽に利用できるクラウドサービスやPCベンダーのオプションサービスの活用を検討してみる」といった取り組みが有効だ。

  3つの類型で述べたポイントに共通するのは「従来は高価だったIT商材が手軽に手に入るようになってきている」というIT市場全体における大きな変化だ。実際、企業がIT活用に取り組むための費用や人手に関連する負担は従来と比べ着実に下がってきている。

 新しいIT商材を取り入れることで、限られた費用と人手の中でも「兼任型ひとり情シス」の企業がIT活用に積極的に取り組むことが可能となってきているわけだ。「どの類型に該当するか」に関係なく、まずは自社に適したIT商材を見つけるための情報収集から始めてみると良いだろう。

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