コンカーの三村真宗社長は、国内企業の経費精算実績のうち51%が近隣交通費であり、経費精算にかかる生涯日数は全体平均で52日という数字から「これへの対策なくして働き方改革はなしえない」と語る。SuicaのデータをJR東日本サーバから直接転送できることにより、Suicaを利用したJR、私鉄、バス、そしてタクシーの乗車情報がそのまま取り込めることは大きなメリットになるという。
現在、日本交通、国際自動車、大和自動車交通3社の都内を走るタクシーのうち、約3台に1台がSuicaに対応しているという。この比率を2020年の東京五輪までに半数程度にまで上げるという業界目標もあり、コンカーは「全ての近隣交通費の精算を自動化する」ことを目指している。
なお、今回の実証実験期間は2017年10月から約2年を見込んでおり、5社500人程度の規模でトライアル企業を募る。この期間に、市場規模の調査や利便性、そして他のICカード事業者や地域での連携ビジネスの可能性を検討するという。
気になるのは「個人情報」の管理だ。コンカーによると、実証実験期間が2年という長めの設定であるのは、JR東日本のシステムとの接続部分におけるセキュリティ整備や、他のICカード事業者の参加に関する調整期間も含んでいるという。コンカーは現在、地方のICカード事業者とも協議を続けており、「実証実験期間中に2社ほど発表できる」(三村氏)という。現時点において利用料金は未定で、今後の実証実験内での結果を基に検討を行う。
今回の仕組みにおいては、コンカー、JR東日本に対し情報連携を承諾した従業員の情報のみが連携できるようになるため、データを利用されたくないという従業員は連携を拒否するか「仕事用、個人用の2枚のSuicaを利用し、仕事用のみ連携を許可する」という方法が採れるという。
「タクシー業界としてもこの動きは注目している」と日本交通代表取締役会長の川鍋一朗氏は述べる。全国ハイヤー・タクシー協会の会長でもある同氏は「グループ会社のJapanTaxiでは、タクシー配車サービスのアプリ『全国タクシー』で既にコンカーと提携し、経費精算を自動化する仕組みを提供している。しかし、日本はタクシーを配車して乗車するというよりは、「流しのタクシー」を利用するケースが多く、アプリ自体のまだ利用率は低い。選ばずに乗りこんだタクシーでもSuicaで支払いができ、経費精算が自動化できるようになれば、圧倒的に利便性が改善する。すぐに参加を同意した」と述べる。
Concur プレジデントのマイケル・エバハード氏は「日本は鉄道、タクシー、バスなど他国と比べ近隣交通手段が多数あるため、利用者、企業、事業者それぞれに経済的な観点が必要。最適化への余地も大きい」と日本市場への期待を語った。
多くの従業員が月末に追われる「経費精算」という作業。Suicaで乗れば自動化できるという時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。
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