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第4回 「ワークスタイル変革」実践編 資料で見る「人事制度」と「ファシリティ」の考え方成功事例から考える「働き方変革」(2/3 ページ)

» 2017年10月26日 10時00分 公開
[下田英樹ネットワンシステムズ]

人事制度の変革

 ネットワンシステムズでは、ワークスタイル変革推進の中核をになう施策として、テレワーク制度とフレックスタイム制度を導入している。導入の背景にはさまざまな要素があるが、ワークスタイル変革の支援につながるICTツールを導入したことで、働く時間や場所を柔軟に選ぶことができるようになったため、人事評価制度についても考え直す必要が出てきたことも、一因である。

図4 テレワーク制度とフレックス制度の概要 図4 テレワーク制度とフレックス制度の概要

テレワーク制度導入のポイントと成果

 ネットワンシステムズが定めている「テレワーク」は、自宅で仕事をする「在宅勤務」だけではなく、自宅やオフィス以外の場所(顧客先や移動先)で仕事をする「リモートワーク」の双方を組み合わせた働き方だ。いわゆる「どこでもオフィス」である。

 この制度の特徴は、制度の利用対象者や利用回数に制限を加えていない点だ。社員一人一人の自律的な工夫や有効活用を促し、制度や会社としての可能性を広げていくためである。そのため、利用条件は「自己管理が徹底でき、コミットした成果を創出できる人」と定義した。つまり、アウトプットをコミットすること以外の制限は加えておらず、ふさわしい仕事さえあれば新入社員でも利用が可能だ。これを判断するのは職場のマネジャーであり、互いの信頼関係が強く求められる。

 さらに東日本大震災を機に、「生活事情、交通事情によって出社が難しい人」といった条件も追加し、事業継続対策としても機能するようにした。これによって、台風や大雪などの悪天候や、公共交通機関が遅延したりマヒしたりすることがあっても、全社員が効率的に業務を遂行できるようになった。

フレックスタイム制度導入のポイントと成果

 フレックスタイム制度は、「1カ月の総労働時間の枠の中で自律的に計画を立てて時間効率を上げる工夫をする(労働時間を削減する)」という趣旨で、時間外手当の対象となる非管理職層を対象に導入した。当社の場合は、出社を義務付けるコアタイムを10時〜15時、始業および終業時刻を選べるフレキシブルタイムを7時〜22時としている。

 ただし、24時間365日体制で顧客のICT基盤の保守業務を預かる部門や、育児・介護などの理由によって時間を制限して働く短時間勤務社員に対しては適用除外としている。

 実は、当社がフレックスタイム制度を導入した2011年当時は、他の企業では逆にフレックスタイム制度が業務効率を下げてしまうという判断をして、制度を廃止する企業が増えていた時期だったと記憶している。しかし、当社社員には1カ月の中の繁忙期や閑散期に応じて働く時間を工夫するという前向きな取り組みを進めて欲しいという思いと、ネットワンシステムズの社風にも合っているという判断で導入を進めていった。

なぜ最初から全社員向けの制度にしたのか

 人事部としては当初、利用回数や対象者などの条件を絞り、小規模で制度をスタートすることを考えていた。しかし、経営層との議論を踏まえて、この制限を取り払った。その理由は、社員が工夫できる余地を最大限に残したかったからだ。性悪説を取り、デメリットを完全に排除した上で導入するのではなくて、性善説でまず導入して、問題があったら対応すればいいという考えだ。実際に始めると分かるのだが、この方法は非常にメリットが多かった。もちろん問題も多少生じたが、導入から約5年たった今も、当初の方針のまま、性善説で運用できている。

 全社員を対象にしたことのメリットもある。育児中の社員からは、「自分だけが特別扱いされているわけではないから、後ろめたさを感じなくて済む」という声が上がっている。また、育児中の社員が早いタイミングで復職できたり、時短勤務ではなくフルタイム勤務で働けたりといったメリットも生まれている。

 また、「定年までネットワンシステムズで働きたい」といった勤続意識の向上にも効果があった。若手社員ほど「仕事をする上で最も重視するものは何か?」という問いに対して「仕事とプライベートのバランス」と答える比率が高くなっており、ここにプラスに作用したようだ。若手社員の定着率増加は、今後の重要な課題になるだろう。

意識向上への取り組み

 人事制度を活用してもらうには、社内への適切かつ継続した周知が欠かせない。テレワークについては、2011年度の本格導入の前に、2010年に一部社員を対象にしたパイロット導入を実施した。その中でテレワーク制度の活用ガイドブックを策定し、導入時に不安の大きかった3要素(評価、コミュニケーション、マネジメント)について、運用ガイドラインを定めるとともに、テレワーク制度の導入に関する社内説明会を実施した。

 導入後もマネジャーとの意見交換会を継続して実施するとともに、毎年、全社員にワークスタイルに関するアンケート調査を実施し、その結果を社内イントラで報告している。また、管理職研修のメニューに「ワークスタイルマネジメント(テレワークの有効活用)」を追加し、ワークショップ形式による「有効事例の横展開」や「メンバー指導方法の共有」を図っている。

図5 ガイドラインの例 図5 ガイドラインの例

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