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脳で感じた印象を文字にする「fMRI脳情報デコーディング」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2017年12月20日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

fMRIからの情報をどう処理するのか?

 ものを見るというような日常的な知覚は、脳の高度で効率的な情報処理システムによって処理され、私たちは見たものが「猫」であるとか、それが「寝ていて」「かわいい」というように、言語化して表現できる。脳活動の変化(≒脳内の血流変化)から、「猫」を見たのか「犬」を見たのか、それが「かわいい」のか「怖い」のかなどを判別できるようにしようというのが、「fMRI脳情報デコーディング」の1つの目的だ。

 取材したNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室の西田知史氏は、研究の目標を「日常生活の自然な知覚を支える脳神経基盤を明らかにすること」と語る。その研究の過程で、fMRIで記録した脳の活動状況と、知覚内容を表す言葉とを結び付ける技術が具体化してきた。

 2015年3月に、西田氏の研究チームとNTTデータ、NTTデータ経営研究所、テムズの共同実証実験が行われている。この実験では、男女4人の被験者にそれぞれ3時間程度のテレビCM映像などをMRI装置内で視聴してもらい、そのとき得られた脳活動を解読することで、シーンごとの認知・印象内容などを単語にして抽出することに成功した。

 この技術はNTTデータがNICTからライセンス提供を受け、NeM sweets DONUTs(NTTデータの登録商標)という名前で広告意図と認知内容との整合性を定量的に測定するサービスとして2016年から一般向けに商用提供されている。

NTTデータのNeM sweets DONUTsサービス 図2 NTTデータのNeM sweets DONUTsサービスのイメージ(同社CMコンテンツの知覚推定)

 従来の技術では、推定できる認知内容はおよそ500単語程度であり、詳細な知覚推定にはまだ遠かったが、今回発表された技術では1万語の「名詞、動詞、形容詞」に脳活動パターンを関連付けることに成功した。これにより、視聴者が見た「認知対象物」「認知対象動作」に加え、視聴者が受けた「印象」までもより詳細かつ具体的に表現できるようになった(2017年11月NICT発表)。

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