RPA、AI、チャットbot。働き方改革を実現する手段として注目を集める業務効率化のツールだ。ツールへの期待が過熱する中、業務の自動化に関する企業の取り組みはどうなっているのか。
キーマンズネットでは、読者1549人を対象に「ITへの投資状況に関するアンケート調査」(2017年12月11日〜19日)を行った。
調査結果を踏まえ、キーマンズネット編集部が2018年に注目すべき7つのITトピックスを選定、「働き方改革」「改正個人情報保護法、GDPR対策」「Windows 10導入」「セキュリティ対策」「業務効率化(RPA導入など)」「データ活用」「AI(人工知能)活用」について、その実態を1カ月にわたり順次掲載する。
第5回となる本稿で取り上げるのは、「業務効率化(RPA導入など)」だ。昨今、働き方改革を実現する手段として注目を集める業務効率化のツール。例えば、RPA(Robotic Process Automation)は、異なるシステム間のデータ転記作業などを「ミスなく、素早く、正確に行う」ことに加え、「比較的低価格で導入できる」「システム化からあぶれた小粒の作業にも適用できる」ことなどが注目を浴び、空前のブームとなっている。あるいは、チャットbot機能やAIの検索機能などを活用した業務効率化のための製品も次々に提供され期待を集める。
ツールへの期待が過熱する中、業務の自動化に関する企業の取り組みはどうなっているのだろうか。調査の結果、幾つかの傾向を得ることができた。以下はそのサマリーだ。本稿で詳しく説明する。
調査結果サマリー
まず、「業務の自動化に取り組む意思があるか」という問いに対し、「業務の一部分だけでも自動化したい」と答えた方は48.4%、「できる限り業務を自動化したい」と答えた方は45.5%という数字を示した。この結果を見ると、自動化する範囲はどうであれ9割以上の方が「業務を自動化したい」と考えていると分かる。
「業務を自動化したい」と考える方を対象に、具体的に自動化したい業務を聞いたところ、「転記作業(Excelへの定型入力)」(63.3%)、「社内文書(日報、報告書など)の作成業務」(50.1%)、「請求書などの作成や発送業務」(47.5%)などが多くの票を集めた。「その他」と回答した方からは、「集計作業やオペレーション作業といったルーティン化できる業務を自動化したい」という回答も寄せられた。
この結果から、定型業務あるいは、業務の大半が定型作業である半定型業務を自動化したいと考える人が多いと分かる。一方で、非定型業務を自動化したいと答えた人はわずか14.8%にとどまった。
労働人口不足が深刻となる半面、長時間労働の是正や生産性の向上を求められる企業では、定型的な単純作業に割く労力や時間が惜しいと考える人も多い。また実際に、単純作業代替ツールに関するポジティブな情報が世の中に浸透したことから「自社でも定型業務なら自動化できるかも」という期待が高まっていると考えられる。
「業務を自動化」したいと考える人が多い中、それを実現するツールの導入状況はどうなっているのだろうか。
「業務自動化」につながる製品やサービスを利用しているかという問いに対し、「利用していないし、利用の予定もない」と答えた人は45.2%に上った。それに続き、「利用をしていないが、2018年には新規での利用を検討中」は30.3%の回答率となる。現状では、7割以上の人が「利用をしていない」状況であり、そのうち約3割は2018年の新規導入を検討中という結果となった。
一方で、既に「利用している」は17.0%、「既に利用しており、2018年には追加投資も予定している」と答えた人は7.6%と低い数字にとどまった。ちなみに、既に自動化ツールを導入している方の中には、「WinActor」や「BizRobo!」「UiPath」といったRPAツールを活用していると答えた人や名称は不明だがAIチャットbotサービスを利用していると答えた人もいた。
この結果から「業務を自動化したい」と答えた人の割合に比べ、実際に製品やサービスを既に導入している企業はまだ少ないということが分かる。
とはいえ、規模が大きい企業から、自動化の取り組みが徐々に進んでいるようだ。従業員規模別に結果を見ると、従業員数が増えるにつれて「既に利用している」「利用しており、2018年には追加投資を検討中」と答える人の割合が増える傾向にある。こうした結果から、リソースを確保しやすい大企業から業務自動化の取り組みが進んでいると分かる。
実際に自動化を実現するツールへの期待はどうだろうか。代替できる業務の範囲は違えど、昨今ではAI技術やRPA、チャットbotといった業務自動化に資するツールが注目を集めている。アンケートでは、こうした技術が業務の効率改善につながると思うかという質問も設けた。
最も多く票を集めたのが「まあまあ思う」という回答で、回答率は58.0%であった。続いて「とても思う」(20.1%)、「あまりそう思わない」(19.0%)、「全く思わない」(2.8%)という回答率となった。
「まあまあ」の解釈は人によって違うだろうが、一般に「非常にそうは思わないが、ある程度はそう思う」という意味合いが込められている。AIやRPAといった最新の技術に関し、最近では他社のベストプラクティスを見聞きするようになった一方で、本格的に自社に導入するにあたって必要となる情報を十分に得られておらず、「本当に期待通りの効果が得られるのか」「自社でも応用できるのか」懐疑的に思う部分もあるだろう。
実際に今回の調査では、「AIの良さがまだ見えないため、具体的にどの業務が向いているの分かっていない」というコメントも寄せられた。「まあまあ思う」の回答率が高い背景には、そうした製品がまだ一般化には至っておらず、導入に至るには情報を十分に得られていないと感じる人も多い状況が関係しているのかもしれない。
2018年は、最新の技術をもてはやすだけではない、より正確な情報が波及することで、中堅中小企業を含めて導入事例が増えていくことを期待したい。キーマンズネット編集部も、引き続き有用な情報の発信に尽力する。
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