メディア

自動運転の影の主役「ダイナミックマップ」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/5 ページ)

» 2018年02月21日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

ダイナミックマップの実証試験が始動した

 SIPでは道路の画像データやレーザー測距による点群データ、車線レベルの詳細な道路地図、デジタル道路地図、位置参照基盤を整備して、準静的共用データと準動的共用データをひも付けるためのデータフォーマットを、ISO採用を視野に作成しており、フォーマット案はダイナミックマップ構築検討コンソーシアムが2017年に公表している。

 2016年6月にはダイナミックマップ構築検討コンソーシアムの6社と、自動車メーカー9社が出資するダイナミックマップ基盤企画(当時。現在はダイナミックマップ基盤)が設立され、ダイナミックマップの整備や実証、運用に向けた検討を進めているところだ。また名古屋大学を中心にしたダイナミックマップ2.0コンソーシアムも2017年に高精度道路地図仕様とクエリ言語仕様を公開している。

 このような動きの一方で、「競争領域」にあたる部分で先行すべく、民間各社がダイナミックマップのユースケース検討のための実証実験をスタートしてもいる。その一例が、2017年12月に公表されたKDDI、ゼンリン、富士通の3社の協働での実証実験開始の発表である。

 実証実験では、完全自動運転時代のダイナミックマップ生成に必須技術となる大容量データの収集、生成、配信基盤を構築し、動的情報と道路構造物の高精度地図とを連携させてデータ生成する処理性能や、配信に要する時間などを検証するという。

 ダイナミックマップ活用にあたっては、車載カメラや各種プローブ情報をセンターにアップロードすることと、動的情報や地図データのアップデートのための差分データ配信が必要になる。その両面で、通信モジュールとネットワークをどのように最適化するかを検証するのが、通信部分を担うKDDIだ。

 これには商用テレマティクスサービスにおける実績、トヨタと発表したグローバル通信プラットフォームの構築ノウハウも生かされるだろう。車両自身のセンサーネットワーク、車両専用の無線通信技術のDSRC(Dedicated Short Range Communications/専用狭域通信)、セルラーネットワークの3種類のネットワークを使い分ける必要があるが、KDDIはこれらの融合を見極めていくという。検証には、LTEのほか、5G技術も視野に入れている。

 ゼンリンは既に動的情報との連携や逐次・差分更新を可能とする高精度地図データプラットフォーム「ZGM Auto」を提供し、富士通はコネクテッドカーから得られるプローブデータなど大量の動的情報を収集、高精度地図と動的情報のひも付けや車両へのリアルタイムデータ配信などを行うMobility IoT基盤のダイナミックマップ管理機能を提供する。

 KDDIによると「各社が保有している技術を組み合わせてどのようなユースケースに対応できるか、多様なケースで検証する」のが目的である。これがすぐにビジネスにつながるものとは考えていないようだが、やがて検証の成果は自動車会社などが評価可能な形で明らかにされていくだろう。

 今後は準天頂衛星の高精度な測位性能も取り入れられていくに違いない。新たなプレイヤーの参入や、さまざまな企業の協業も盛んになりそうだ。まずは実際の運用ケースが公表されるのを、楽しみに待つことにしよう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。