間接部門の仕事の一部を外注するアウトソーシングサービスへの注目度が高まっている。そのメリットやデメリットとは。「派遣社員との違い」など、気になるポイントも解説する。
社内の「何でも屋」と称されることもある総務。雑多な業務を任されることから「勤務が長時間になりやすい」という問題を抱えてきた。昨今では、企業の働き方改革の波を受けて、間接部門である総務の負担はますます増えている。そこで、注目を集めているのが「総務アウトソーシング」サービスだ。本稿では、企業の総務を取り巻く最新事情を踏まえ、総務アウトソーシングとはどのようなものなのか、そのメリットやデメリットを整理したい。
まずは、組織の要ともいわれる総務部門が、今どのような課題を抱えているのか紹介する。
『月刊総務』が各企業・組織の総務部門を対象に実施したアンケートによると、総務部門における課題のトップは「業務の明確化と効率化」であった。一般に総務の仕事というのは属人化しやすい業務が多い。とはいえ、業務を可視化しなければ、効率化のためのITツール導入というメスを入れることもできない。総務部門の各担当者が日ごろ何を行っているのかブラックボックス化している状況では業務効率の検証できない。
また最近、総務のような管理部門を取り巻く環境には大きく以下のような変化が起きており、それらがアウトソースへと目を向けることにもつながっている。
(1)人材の不足
(2)働き方改革
(3)人の流動化
(1)の人材不足については言うまでもなく、日本社会の少子化に起因する流れだ。景気のよい企業であればいざ知らず、人を多く雇い入れる余裕がない大多数の企業では、間接部門に振り分けるリソースも少なくなる傾向にある。そうした人材不足への対策の1つとして総務の業務アウトソースという選択肢が生まれている。
(2)の働き方改革に関連した課題としては、改革を背景に勤務時間が減少する一方、1人当たりの仕事量は減ってはいないという現状がある。これは総務部門にも等しくふりかかる問題だ。総務のコア業務に体力を割くためにも、仕事をアウトソースし、業務を効率化するという選択肢が浮上している。
そして(3)に挙がった人の流動化については、昨今、会社を辞めることに対するハードルが低くなっており、企業が急に退職した従業員の穴を埋めるべく、業務をアウトソースする流れが生まれている。
とりわけ、上記に挙げた「働き方改革」という視点については他にも特筆すべきものがある。働き方改革を全社で進めるに当たって、総務部門はワークプレース変革といった創造的な施策を担う部隊だ。余談だが、総務部門は、人々が働くオフィスというプラットフォームを管理運用する「プラットフォーマー」であるという見方もある。
施策を推し進めるとなると、オフィスのレイアウト変更をはじめとする大きな仕事が重要な業務として加わる。総務が目先の仕事に忙殺され、そうした仕掛けをすることもままならない状況は、経営に関わる問題といえるだろう。そうならないために、まずは総務が目先の既存業務を効率化し、コア業務に割くための時間やリソースを確保することが必要だ。その手段の1つとして、アウトソーシングという選択肢があると認識する必要がある。
その時気を付けるべきは、総務のアウトソーシング自体を目的にしてはいけないということ。もちろん、上記に課題として挙げたような、人材不足や労働時間の削減、人材の流動といった課題の短期的な解決方法として総務アウトソーシングを選ぶという流れは間違っていない。しかし、あくまで最終的な目的は、総務がメインストリームの業務に注力することであり、その変革の武器として総務アウトソーシングがあるのだ。
次項では、アウトソーシングできる総務の業務を明らかにし、総務アウトソーシングのメリットを整理する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。