「PHS」を覚えているだろうか? 携帯電話が爆発的な普及を見せた1990年代半ば、その通信料金の安さから若者に支持されたあの通信端末だ。正式名は「Personal Handyphone System」。愛称は「ピッチ」だ。
1995年7月にNTTパーソナル(現NTTドコモ)とDDIポケット(現ソフトバンク)がサービスを開始し、1997年の最大ピーク時には700万契約を超えた。通信料金が安価なだけでなく、地下でもつながりやすく、電波状況にかかわらず音質が高いといった特長があった。また、電波出力があまり大きくないのでバッテリーが長持ちするというメリットも人気の一因だった。だが、最近ではめっきり見かけなくなった。
ついにPHSの個人向けサービスが2020年7月末で終了する。むしろ「え、まだあったの?」と思う人も少なくないかもしれない。しかし、まだサービスは存在していたのだ。一体、どんな人が使っているのか?
今回、PHSサービス廃止の発表を行ったのはソフトバンクとウィルコム沖縄。DDIポケットから社名変更したウィルコムが2010年に経営破綻してソフトバンク傘下となり、「Y!mobile」「ウィルコム沖縄」としてPHSサービスを提供していたのだ。
廃止の理由はズバリ「個人利用者の数が低下し、回復が見込めないため」だ。携帯電話の音声品質と通信料金、データ通信速度は普及とともに改善され、今、あえてPHSを選ぶメリットは薄くなったということだろう。「ソフトバンクがダメでもNTTドコモがあったはず」と調べてみると、こちらは10年前にPHSサービスを終了していた。
2017年12月時点で、国内携帯電話の契約件数は約1億6700万回線。一方のPHSは278万回線。両者の差は歴然としているが、それでも278万回線も使われているのは意外といえば意外だ。本当に廃止しちゃっていいの?
実は、個人または法人で音声通話を利用しているユーザーは少数派だ。自動販売機や各種メーターのデータをサーバに送信するような、いわゆるテレメトリング用途で使われているのだ。通話は不要、データ送信も低速で構わないため回線利用料の安いPHSが適しているというわけだ。こちらのサービスは引き続き提供される。
だからPHSが滅亡するわけではない。しかし、一般的な使い方でピッチを手にすることはないだろう。1つの時代を築いた技術の終焉(しゅうえん)を目にすると、しみじみとした気持ちになってしまうな。
上司X: PHSが2020年に終了するという話だよ。
ブラックピット: へえー。
上司X: あれ、あんまり感慨深くない?
ブラックピット: 特にないですね。「H"(エッジ)」とかは懐かしいなあと思いますけど。
上司X: ああ、あったな。2000年になる前に、モバイルデータ通信用に1回線契約していた気がする。「PIAFS」とかいって通信速度は64kbpsだったかな。今の基準で考えると「遅すぎてどうしようもない」が、当時は使えたんだよ。
ブラックピット: ケータイが普及してくると、PHSは「子供用」というイメージがありませんでしたか? 高校生が初めて使う端末みたいな。
上司X: そうだったかもしれないな。そういや「XGP」とかいう次世代PHS規格が登場したような記憶もあるんだが、ゴタついている間にそれが「LTE」に進化しちゃって、いつの間にかPHSは忘れちゃったって感じだな、個人的には。もはや記憶も定かでないので間違っていたらスマン。
ブラックピット: いえいえ。僕なんて、すっかりPHSの存在を忘れてましたよ。ユーザーが離れたことで、結局使えなくなってしまうわけなんですから、もはやどう……
上司X: 「どうでもいい」とか言うんじゃない。悲しくならないか。感傷に浸っていても何がどうなるわけでもないが、一時代を築いたPHSのことを少しだけでも記憶に刻んでおくことにしようじゃないか。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。