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» 2018年05月07日 10時00分 公開

2018ロボット化をリードする金融機関の現況、システム監査普及連絡協議会セミナーレポート

[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語「FinTech」が急速に浸透するなど、金融の世界はグローバルな規模で大転換期を迎えている。2017年6月に発表された日本銀行の「決済システムレポート」によると、携帯端末で支払い・送金を行うモバイル決済は、中国で利用率98.3%に達した一方、隣国である日本はわずか6.0%。既存の金融サービスが充実し、高い信頼性も確立していたことが、かえって新たな技術への移行を遅らせる“イノベーションのジレンマ”に直面している。こうした逆風下でも各金融機関はサービスの改革を進め、その一環としてバックオフィス業務などの効率化を図るRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)にもいち早く着目。メガバンクのほか、地方銀行でも導入が相次いでいる。

デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも称されるRPAは現在、金融機関でどのように活用され、いかなる課題を抱えているのか。また今後、どのような方向性で進化が見込まれているのか。さる3月9日、都内で開かれた「システム監査普及連絡協議会」(吉武一会長)のセミナーから、それらの一端を紹介する。

RPAテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 大角 暢之氏

ロボットに置き換え可能な業務を6類型にあてはめてみる

金融機関のシステム監査を担う実務家らを前にこの日登壇したのは、国内のRPA草創期から普及に取り組んできたRPAテクノロジーズ株式会社の大角暢之社長と、金融機関の導入プロジェクトで100以上のRPAプラットフォーム構築に携わってきたRPAエンジニアリング株式会社の坂内裕章マネージャーだ。まず大角氏が「働き方革命『日本型RPAの実態と今後の方向性』」と題してRPA市場全体を概説。続いて坂内氏が、現場での事例をもとに今後の普及に向けたポイントを解説した。

このうち大角氏は、現在RPAに分類されるソフトウエアを自身が初めて知った当時は、金融機関のITシステム開発においてテスト作業を省力化する用途で使っていたことを紹介。さまざまな開発経緯を持つ自動化ツールがホワイトカラー業務の有用な効率化手法になりうるとして、2016年春ごろから「RPAブーム」を迎えた経緯を振り返った。

RPAを普及させる意義について大角氏は「人間がルーチンワークから解放され、楽しい時代へ進化するために必然性のある技術」と説明。将来的にはPCやインターネット、スマートフォンに匹敵するインパクトを社会にもたらすとした上で「単にツールを販売するのではなく、誰もが当たり前にデジタルレイバーを働かせるための環境づくりを加速させたい」と自社の方針を示した。

国内RPA市場の現況について大角氏は、導入企業数や導入規模という「ヨコの広がり」と、活用の高度化という「タテの広がり」が同時に進む一方、既に導入した企業では規模拡大や活用形態の深化が思うように進まないケースもあると指摘。活用領域を広げるためには「マクロ類似のツールを購入する」という考えでRPAを導入するのではなく、人間と協働しながら多様なタスクに対応可能な「デジタルレイバーという新たな労働資源」として捉えることが重要と説いた。

今後さらに希少化していく社内人材の温存も念頭に、デジタルレイバーへどのような業務を委ねていくかについて大角氏は、ロボット化に適した6類型の業務を解説。取り扱う情報が電子化されていることを前提に「システム・サービス間の連携」「入力・登録」「帳票の出力・作成」「確認・判断」「集計・加工」「検索・抽出」という観点から社内の業務を切り出し、人間からデジタルレイバーへの移管を進めていくべきと述べた。

RPAの適用領域(出典:アビームコンサルティング株式会社「RPA導入企業の調査レポート」(2017年11月30日 RPA SUMMIT 2017 in OSAKAより)

大角氏はまた、RPAの導入シーンが拡大し、活用形態の高度化が進むに伴って、多数のデジタルレイバーを管理・統制する重要性が増していく点にも言及。具体的な転換点として「デスクトップ型のツール(RDA)からサーバ型(RPA)への移行」「デジタルレイバーを増やす段階から運用管理を担うデジタルレイバー専門部署の設置」を挙げた。

課題は「ロボット開発プロセス」の確立

続いて登壇した坂内氏は、金融業界でのRPA導入支援とトラブルシューティングを3年にわたって手がけてきた経験から「300項目以上ある転記作業をロボットへ移管」「ターゲット業務内の単純作業を100%自動化」といった具体例を紹介。その一方、導入後に課題を残した事例についても、それぞれの概要と対処について説明した。

RPAエンジニアリング株式会社 マネージャー 坂内裕章氏

坂内氏によると、RPAの導入プロセス途中で問題が生じる一因は、ロボット化が必要で、かつ実現可能な業務を切り出すのが難しく、RPAに不向きな業務までがターゲットとされてしまう点にあるという。このうち、自動処理の対象となるデータの様式が不統一だった帳票処理業務については、処理可能と確認できた一部の帳票に絞り込んでRPAを導入。また、あるシステム間連携のプロジェクトでは、専用システムの構築がふさわしいプロセスについてもRPAツールでの実装を求められたといい「極度に品質要求が高い場合はRPAでの対応が困難。適合しない場合は、その旨を現場から説明し続けることが必要」(坂内氏)という。

また、適切な業務をロボット化できても、導入先で用いられる社内向けシステムが不具合修正を行った直後には、このシステムに接続していたロボットの多くが動かなくなったり、途中で止まったりする事象が発生したという。坂内氏は「システム側の再修正を待つか、ロボット化した作業を手作業に戻した上でRPAツールの側で改修するかを判断するルールが必要」と指摘。ロボットの運用可能時間や、業務のバックアップ体制について事前に定めておき、その範囲で具体的な対処法を決めることになると説明した。

さらに同氏は、開発・運用の歴史が浅いRPAは開発プロセスが十分に確立されておらず、ロボットの実装においても標準化ができていない点に言及。「継続的なロボット開発と運用に必要な人材やノウハウが不足している。IT普及期に「IT部門」が多くの企業で設置されたように、ロボットの実装と運用を行う場合も、『RPA推進部門』といった部署を設け、業務の実態に即したロボットを開発運用できる人材を育てていくのが理想だ」と提言した。

坂内氏はこのほか、RPA推進部門と業務部門が主導してロボットを開発・運用する際にIT部門が果たすべき役割についても触れ「サーバー型RPAの多くがパブリッククラウドを基盤とする現在、きめ細かな設定で負荷やムダが減らせるクラウドの利点をもっと生かせる余地がある。ここを担うのがIT部門ではないか」と述べた。

1,000ロボット、10,000ロボット増えるロボットの一元管理が今後のテーマ

両氏の説明後に設けられた質疑の場では「社内でRPA導入を検討している」という担当者をはじめ、経験豊富なITプロフェッショナルからデジタルレイバーの可能性や課題についての問いが続々と寄せられた。

このうち「(RPAと同様に)現場主導型の業務改善手法として以前試みられたEUC(エンドユーザーコンピューティング)との違いは」との質問に、坂内氏は「EUCはユーザー個人の端末を統制しづらかったが、RPAはサーバー上で集中管理できるため、使い方に一定の歯止めをかけられる」と回答。ロボットの機能に関して「データの一致・不一致を判断した後、判断結果に応じた別々の処理をさせられるか」との問いには「可能だが、条件分岐が連続する業務では組み合わせが膨らみ、開発負担が重くなる。ITシステムを構築した場合との比較で考えると、RPAは開発着手から40日以内の実用化がコスト上の目安。すべて新規開発するのではなく、単機能のロボットを部品として組み合わせる開発手法によってスピードアップが図れる」と応じた。

また「ロボットがエラーで止まるのではなく、間違った判断に基づいて動き続けることはないか」との懸念に対しては、大角氏が「ありうる」と回答。実際にも、最安値を目指すECサイトが価格算定の基礎となる競合サイト調査を自動化したところ想定外の価格がついて多額の損失が生じた事例を引き合いに、「現在のステージでは、完全にミスを防ぐことは困難であることを認識することが重要。対策としては、設定した基準値を大きく超える増減は認めない仕組みなどが考えられる」と解説した。

デジタルレイバーによる代替で生じうる余剰人員や、エラー発生時に備えた人的なバックアップに対する考え方を尋ねる声も挙がったが、大角氏は「ロボットの導入に伴って人を減らした日本企業はまだない」と回答。職場の人員配置はそのまま、ロボットに任せて創出された時間的余裕を、本来注力したかった業務に充てているのが現状だと説明した。

質疑ではこのほか、運用するデジタルレイバーが千・万単位にのぼったときのマネジメント手法も話題に上り、大角氏は「業務のデジタル化を戦略的に進めている企業は、自社内外に働きかける業務のすべてを一元的に管理したいと考えている」とコメント。「そうした管理と、業務自体の再構築を可能にするBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)ツールがRPAとの連携を急速に進めており、いずれRPAはBPMの一部になっていくだろう」と展望を示した。

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