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» 2018年05月26日 10時00分 公開

RPA、使いこなす企業は何が違う? 「第2回ロボットコンテスト」レポート

[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

2018年7月4日、東京にて「RPA DIGITAL WORLD 2018」(株式会社セグメント主催)が開かれた。ソフトウエアでPC上の定型業務を代替するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)関連の展示・セッションを集めた会場には今回、過去2回を超える4,398人が来場。出展者の顔ぶれやソリューションもさらに多彩となり、ブームの域を脱したRPAがいよいよ本格的な普及期に入ったことを如実に示した。

同イベントの恒例で、RPAの先進企業がコンセプトや技術力などを競う「ロボットコンテスト」には、今回23社が応募し、このうち書類選考を勝ち抜いた3社が、当日会場でプレゼンテーションを行った。それらのダイジェストと、披露された取り組みのバックグラウンドをダイジェストで紹介する。

“失敗してもなおチャレンジ”に高評価……住友林業情報システムの場合

今回のコンテストでは、会場からの得票と有識者3名の審査結果を総合した結果、住友林業情報システムの発表が頂点に輝いた。同社の取り組みについて、審査委員長の安部慶喜氏(アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル)は「既にロボット100体を稼働させていた時点で失敗を認め、新たなアイデアのもとで運用を構築し直した。続々と新技術が現れるデジタルの世界で『失敗は当たり前』と受け入れ、チャレンジを続けていく他社の模範になる」と評価した。

アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏

住友林業情報システムでRPAの導入当初から中心的役割を担うICTビジネスサービス部の成田裕一シニアマネージャーはこの日、過去4年の経緯を振り返るとともに今後2年間で実現を図るビジョンについて紹介。グループ企業や取引先にもロボットの活用を拡大し、現場レベルで気軽に作成・運用可能な体制を構築するため、ふさわしい基盤のあり方を検討した結果、ロボットの「パーツ化」「運用ポータル」という2つのコンセプトに行き着いたと述べた。

新たな基盤の導入で、ロボット製作の工数を5分の1に

こうしたコンセプトの背後にあった課題について、成田氏は「ロボットの導入を広げようとしても製作が思ったほど進まず、作った後もエラー発生時の処理やメンテナンスに不安があった」と説明。さらに「管理面においても、個々のロボットについて『アクセス権限の付与』『起動の指示』『実行状況の監視』をどう行うかという課題があった」と明かした。

その上で同氏は、1業務ごとに“フルオーダー”のロボットを作り込み、管理体制もその都度検討するのは非効率だと指摘。開発効率の向上と不具合修正の迅速化に向け、細分化した汎用的機能の組み合わせでロボットを構成し、共通部分は積極的に使い回す「パーツ化」の道を選んだこと、また必要な統制を保った状態で開発・運用ツールを広くユーザーに開放するため、ロボットの管理を一元化する「運用ポータル」を設置したことを説明した。

このうち、ロボットをパーツ化するプロセスは大まかに「パーツの作成」「作成されたパーツの管理・検索」「パーツを使ったロボットの組み立て」の3段階に分類できるという。プレゼンでは、各段階にRPAツール「BizRoboベーシックロボ」、データベースソフト「eBASE」、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)ツール「intra-mart」を割り当てた同社の事例が紹介された。

同社ではパーツ化の導入後、ロボット製作に要する工数が最大で5分の1未満に激減。各パーツの設定は基本的に数値変更のみという容易さで、解説文書をすぐ参照できる仕組みなどと併せて保守の時間短縮も実現しているという。

一方、運用ポータルにおいては、ロボットの起動や権限の管理、人が担う工程も含めた業務全体の可視化、ロボットの稼働状況の把握といった諸機能が求められる。これらについて、同社ではintra-martのほか、業務アプリ作成のクラウドサービス「kintone」など、定評があるツールの“合わせ技”で対応。「ロボットの監視もロボットでできる」(成田氏)との発想から、ジョブ管理を自動化するシステム「JP1」の検証も進んでいる。

住友林業情報システム株式会社ICTビジネスサービス部 シニアマネージャー 成田裕一氏

目標はロボット運用1,000体。狙うは「パーツ化」思考の拡大

「パーツ化」「運用ポータル」という2大基盤を整え、あらためてロボットの量産に挑む同社は、早期に「ロボット運用1,000体」を達成したい考えだ。

成田氏は「過去につくったロボットにはそれぞれ愛着もあるが、これからRPAを使う人のことを考えたインフラに育てることが重要。従来型の100体は、新たな基盤のもとで順次更新していきたい」とコメント。4月からRPA担当に加わった名雪聡チームリーダーは「今回構築された基盤は技術的にも非常にユニーク。ただ、それはあくまでもRPA本来の理念に従い、現場で使ってもらうことを第一に考えた結果だと思う」と話す。

基盤の構築に携わった庄司義昭チームリーダーは「エンドユーザーのためのRPA、そのためのパーツ化というコンセプトは、今後社外でも理解者を増やしたい。例えば『ネットバンキング接続用のロボット向けパーツ』が各銀行から提供されるくらいに、この仕組みが当たり前になれば」と、さらなる展開に意欲をみせていた。

最優秀賞獲得の喜びを語った、住友林業情報システムICTビジネスサービス部の(左から)チームリーダー名雪聡氏、成田氏、庄司義昭氏

社内開発者200人以上。決め手は「ヒトづくり×コトづくり」……LIXILの場合

「RPAを社内開発する企業で、開発者206人という規模は国内トップクラス」(審査委員長の安部氏)。その全容を明らかにしたのが、住宅設備・建材メーカーである株式会社LIXILのプレゼンだ。多くの社員を巻き込んで導入拡大の機運を高めた点に支持が集中し、会場からは多くの得票を獲得した。

この日壇上に立った同社情報システム本部RPA推進チームの竹内瑞樹チームリーダーは、LIXILグループの基幹システムを長く担当。グループ企業でのRPA導入に携わったほか、1万人以上が加入する労組の役員として各拠点の現場の声にも接してきた。

それらの知見を踏まえて同氏は、LIXILのRPA全社展開にあたっての姿勢を「ヒトづくり×コトづくり=モノづくり」という式で表現。「開発者育成というヒト、開発するための仕組みというコトがそろえば、(ロボットという)モノはおのずとつくられていく」と説いた。

集合研修を通じて、LIXILで社内開発者の養成が始まったのはこの2月から。素早い立ち上がりの背景について、竹内氏は「当社社長の瀬戸(欣哉氏)がRPAに理解を示し『2018年をRPA元年に』というメッセージがあった。その後、社内SNSでRPAの話題が盛り上がり、口コミによって加速度的にRPA活用の機運が高まった」と振り返った。

株式会社LIXIL 情報システム本部RPA推進チームリーダー 竹内瑞樹氏

SNSを通じた“ヨコ”の交流がモチベーションを高める

同社はRPAの社内開発者向けに検定試験を行っており、現在は合格した60人が本格的なロボット開発作業に携わっている。既に実業務で稼働しているロボット30体は、見積書作成や明細書送付の支援、情報収集用のウェブサイト巡回などを担当。練習用に試作されたものも含めると、ロボットの総数は全社展開の開始から半年足らずで150体近くにのぼっている。

206人の社内開発者は、ほぼ全員がLIXILやグループ企業の業務部門に所属。竹内氏らが所属するIT部門は、ロボット開発やメンテナンスに関するサポートを少人数で行っている。これは、5社合併で生まれたLIXILのIT部門がシステム統合に専念するための方策だったが、同氏は「業務部門にもIT部門顔負けのスキルを持つメンバーがおり、ロボット開発者間の情報交換をリードしている。特にマクロで独自に業務改善をしていた人は、RPAのマスターも早い」と、現場主導でのロボット運用に確かな手応えを感じているようだ。

経理・人事のシステム構築経験をもとにRPAの活用を見守る同社事業会社システム部長の西原寛人氏は、同社のボトムアップ的なロボット開発のムーブメントについて「社内SNSでロボットの話題が盛り上がると、お互いにうまくできない部分を助け合う動きがまず出てくる」と説明。さらに「そこで力量を認められた人は、所属部署を超えて注目されるようになり、頼りにもされる。これが継続的なモチベーションにつながっている印象だ」と分析していた。

RPA推進の機運が高まる社内の様子を語る、株式会社LIXIL 事業会社システム部長 西原寛人氏(右)と竹内氏

「9万時間の人的リソース創出」に向けて

「ヒトづくり」に成功したLIXILの「コトづくり」、つまりロボット開発運用の体制構築については、IT部門のほか、セキュリティ部門、さらに本社経理部門が一体となって取り組んでいる。

具体的には、この3部門がそれぞれ「より効率的なデータ取得方法」「機密ランクに応じた暗号化などの実装」「内部統制との関係」という観点から、事業部門が試作したロボットをチェック。本稼働に支障のない仕様にブラッシュアップを行い、統制から外れて想定外の動作をする“野良ロボット”の発生を未然に防いでいる。

完成したロボットのリストはオンラインで全社に公開。機能の概要をはじめ、ロボットが受け取るデータ・出力するデータの一覧表示により、開発部署以外でのヨコ展開も推奨しているという。「ログの出力」「メールの送信」など汎用的な機能のロボットは、他のロボット開発に使える形でも提供しており、今回のコンテストで目立った「パーツ化」の発想がうかがえる。

「次回コンテストには、ぜひ業務部門の第一線からロボットの開発者を呼びたい。全社的な盛り上がりの熱気をもっと伝えられたら」と西原氏。竹内氏は「作成を待つロボットのアイデアは既に550体分あり、すべて稼働すれば9万時間以上の人的リソースを創出できる計算。そのためにも、やはり『ロボットを継続して作り続けること』が重要と考えており、より高度な社内教育プログラムも準備していきたい」と抱負を語っていた。


いずれ劣らぬ充実の発表となった今回のコンテスト。審査員の1人で、昨年の第1回コンテスト優勝者でもある湯川政延氏(株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングSI事業部執行役員)は「今年はロボットに関する技術よりも、実用化するための工夫に重点が移ってきた印象」と総括。さらに「来年には、相当多くの企業でRPAが定着しているはず。『RPAがあるのが当たり前』という状況で、活用を競う様子を見るのが楽しみ」と期待をかけていた。

審査員をつとめた(右から)株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングSI事業部執行役員 湯川政延氏、北陸先端科学技術大学院大学客員教授 奥和田久美氏、アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏

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