図4は、ブロックチェーンを用いた本人確認ソリューションを提供している米国のベンチャー企業Civicがデモンストレーションとして展示した、ブロックチェーンとアプリケーションで年齢確認を行うことができるビールの自動販売機だ。アルコール飲料の販売は年齢確認が必要なため、購入者が未成年でないとどうやって確認するかが問題となる。
Civicのアイデンティティーソリューションは、ユーザーが自分のスマートフォンにパスポートや免許証番号などの身分を証明する情報を暗号化して登録し、スマートフォンの指紋リーダで自身の生体情報とひも付けて管理する。
そのデータを一度公的機関で確認された後は、証明されたという情報がパブリックブロックチェーンに登録される。ブロックチェーン上の証明の記録は改ざん不可能なため、必要に応じてユーザー自身が別のサービスに個人情報の認証状況を教えることが可能になる。
お酒の自動販売機の例では、まず未成年でないことを証明するためにCivicのアプリで事前に年齢を登録、証明しておく。その後、スマートフォンアプリからブロックチェーン上の「自分が20歳以上であると証明された」という記録にアクセスすることを自動販売機に許可することでビールが購入できる仕組みとなっている。
日本ではタバコの自動販売機でタスポが発行されているが、発行に時間がかかり、なかなか普及しなかった。また、お酒の自販機では別のカードが発行されたものの、結果として普及しているとは言いがたい。これらは中央集権的に作られたシステムであるが故に個別に作られてしまっており、他のサービス提供者と相乗りすることが難しく、普及しにくいという側面もあることを示している。
Civicのようなサービスであれば、ブロックチェーン上で認証された結果を共有することで新たなサービス提供者にアイデンティティーの証明を提供することができる。過去に20歳以上であると証明された結果は改ざん不可能なため、新しいサービス提供者が個人情報を再取得して自己で検証しなくても信用できるからだ。
このような緩やかな個人や組織間の合意のネットワークの実現が、ブロックチェーンが「Web3.0」「Internet3.0」と呼ばれるゆえんだ。本来水平的であったインターネットに、GAFAのようなメガプレーヤーに頼らずともアドホックに協働する機会を再び実現する可能性を秘めていると期待されているわけだ。そこで起こるビジネス上のインパクトは、仲介者(ミドルマン)が不要になること、人手を介していた確認作業が自動化されること、組織を超えたビジネスコラボレーションが加速することである。
このような変化は、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションにどう寄与するかという観点からも検討する必要があろう。ブロックチェーンはフィンテックのための技術にとどまらず、さまざまな産業やシステムの在り方を変えていく可能性がある。
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