2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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“完全失業率3%割れ”の定着で、ビジネスの現場はいま、事実上の完全雇用状態にある。ハローワークの求職者1人あたりの求人数を示す有効求人倍率でも正社員が定常的に“1倍超え”するなど、空前の採用難時代を迎えている。
自社の未来にふさわしい人材を迎え入れながら、希少化した人的リソースの補完としてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)をどう活用すべきか。多くの企業経営者、人事担当者が抱く疑問に答えるセミナー「RPA × HR Forum 2018」が、さる4月18日に都内で開催された。共催者である株式会社ビズリーチ、RPAテクノロジーズ株式会社によるセッションの模様をレポートする。
この日のセッションには、ビズリーチから取締役キャリアカンパニーカンパニー長の多田洋祐氏が登壇。Webを基盤に人材サービスを展開するHRテック企業の視点から、採用と業務効率化の最新事情を解説した。
多田氏は冒頭、テクノロジーの発達で日本の職業601種類のうち49%が数十年内に自動化されうるとした、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授らと野村総合研究所の共同研究「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」(2015年)に言及。「国内には約1万7,000の職業があり、この研究の対象はそれらの一部にとどまる可能性がある」と指摘した上で「これまでも機械やシステムが人間を代替してきたが、今なお人が担う仕事はなくなっていない」とも述べ、「自動化で人間の仕事が失われる」といった短絡に陥らないよう注意を促した。
実際のビジネスの現場における人間とRPAの関係について多田氏は、「RPAが担う仕事と人間が担う仕事とのすみ分けが必要」として、それぞれについて類型化したモデルを呈示。具体的には、RPAに「定型作業の処理」「データの収集と分析」「システムのメンテナンス」「自動応答によるカスタマーサポート」を任せ、人間は「コミュニケーション」「イノベーション」「リーダーシップ」の3領域に集中すべきと説いた。
多田氏はまた、“RPA時代”を迎えた企業が特に採用すべき3つの人材像を提示した。その人材像とは、「経営上の課題解決や戦略策定に参画できる高度な専門性」「提案型営業や業務提携を企画する創造性」「業務の標準化を担う意欲・関心」の持ち主。新たな時代にマッチした戦力をオフィスに迎えることで、生産現場に比べ遅れているロボットとの協働を加速させるべきだとした。
人事を含む経営的な観点からRPAの導入に成功した取り組みとして、多田氏は複合機などの販社であるリコージャパン株式会社の例を挙げた。同社では、消耗品の受注といった事務作業を各地の営業拠点から専門部署へ集約する中でRPAを採り入れ、結果として月間3,000時間相当の人的リソースを創出。導入に携わった担当者がセミナーで事例の解説に立ち、営業にも同行している。その結果、顧客企業の業務フロー見直しを支援するBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の提案強化に貢献しているという。
こうした成果を引き合いに多田氏は「RPAの導入を契機に、間接部門を、売上に寄与する『プロフィットセンター』へ変えることもできる」と評価。RPAが導入企業にもたらす広範なメリットを強調した。
RPAテクノロジーズの最高執行責任者・笠井直人氏によるセッションでは、近年の例に漏れず採用難に悩み、試行錯誤を続けてきた同社の内情が明かされた。
笠井氏は「“待ち”の採用から“攻め”の採用への転換が求められるいま、優秀な人材を探すためのあらゆる手段が必要だ」と強調。複数のルートで同時進行し、作業負荷も高まる採用活動をサポートする存在として、PC上での単純作業を早く・正確に・休みなくこなせるRPAのメリットを説き、求人サイトの複数ページへのアクセス数を自動集計するロボットの実演も行った。
また笠井氏は、RPAの導入を支援する立場から市場の現況を報告。IT投資を見送られたような比較的小規模の作業に応用し、作業速度向上や人員抑制の成果を挙げている企業がある一方、活用の深化・拡大を進められないユーザーも散見される実態を踏まえ「自社にとってRPA導入の成功とは何か」というゴール設定の有無が成否を分けていると分析した。
その上で同氏は、これまでの成功事例からRPAの導入が有望な分野を4パターンに分類。定型的な単純作業から人間を解放する「ルーティン型」と、AI(人工知能)との連携で非定型的な処理までカバーする「クラス2型」が効率化を志向するのに対し、それらを受託して新規事業を興す「イノベーション型」や、仮説に基づく試行を容易にする「アイデア実行型」の用途では収益拡大に役立てることも可能だと説明した。
経営陣と人事部門は、今後いっそう深刻化する労働人口減少に直面する国内企業で「リソース不足」への対処を求められる。集まった約200人を前にセミナー主催の2社からは、迫り来る難題の解決に向けた方策も示された。
ビズリーチの多田氏は「企業規模・立地・業界・求める職種によって、採用に有効な手法は異なる。一般的な求人サイトへの掲載以外に、人材獲得のさまざまな手法を社内に抱えておくことが重要だ」と強調。人材紹介会社などを利用する従来の採用手法に加え、企業側から候補者に直接接触する“攻め”の採用手法も取り入れた採用活動として広まりつつある「ダイレクト・リクルーティング」の支援で得られた知見を紹介した。
多田氏によると、採用市場のターゲットとなる人材のデータベースは従来、求人サービス各社が門外不出としてきたが、近年は採用予定企業にデータベースを公開し、ダイレクト・リクルーティングの機会を提供するのが一般的な流れという。
そうした環境下での採用成功に向けて、同氏は「志望者への『面接』ではなく、欲しい人材を口説くための『面談』を行う」「役員自らスカウトメッセージの文面を考え、その役員名で送る」「他社との獲得競争に遅れないよう、スカウトは1人ずつではなく同時に大量送信する」などのコツを伝授。「面談にあたっては現場をよく知る責任者からの説明が重要」ともアドバイスし、人事部門と自社の総力を挙げて取り組むよう呼びかけた。
RPAテクノロジーズの笠井氏は、企業が人的リソースだけを頼っていてはいずれ限界を迎える以上、人間の労働力を補完するテクノロジーの調達や運用についても人事部門が統括すべきと提言。仮想的な労働者(デジタルレイバー)と称されるRPAのほか、システム構築なども含むテクノロジー全般を視野に入れた上で、戦略的に業務部門へリソースを提供していくという「次世代人事」のビジョンを示した。
このうちテクノロジーの採用に関して同氏は、RPAツール単体で行うデータ処理のほか、紙資料をデータ化するOCR(光学文字認識)や、データをもとに判断を行うAIなどとの連携が生じる見通しと、それら工程を一気通貫で管理する必要性を説明。リアルタイムの進捗を可視化でき、作業フローの継続的な改善にも取り組めることから、RPAと併せたBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)ツールの導入が有用と結論づけた。
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