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エンタープライズRPAを成功に導く勘所――NECネクサソリューションズが導きだした解

» 2018年09月05日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

「業務効率化」と聞いたとき、手段としてどのようなものを思い浮かべるだろうか。一例として、社内の業務を切り出し外部へ委託してしまう「アウトソーシングサービス」や、全面的に自動化する「システム構築」といった手法を挙げることができる。

こうしたさまざまな手法があるにも関わらず、昨年からエンタープライズを中心に「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」を用いた業務効率化に取り組む企業が急増している。その理由をすぐ答えられる方は、意外に多くないのではないだろうか。

RPA、アウトソーシング、システム構築のサービスをすべて提供しているNECネクサソリューションズ株式会社(東京都港区)は、2018年7月24日に自社セミナー「業務生産性向上・入力業務改善セミナー『エンタープライズRPAの活用とは』」を開催。ここに登壇した、同社サービスマネジメント事業部の高橋隆介主任に、業務効率化のプロから見たRPAの本質的な価値と、エンタープライズRPA導入の3つのポイントを聞いた。

RPA活用の本質は人間がより付加価値の高い業務へ就き、企業全体の価値を高めること

―まず簡単に、貴社のRPAに対する取り組みの現況をうかがいます。

当社は2015年に自治体受託業務にてRPAでの効率化を実現し、2016年からは社内でRPAの利用を始め、現在は人事部門・営業推進部門などの実務でエンタープライズRPAツールの「BluePrism」を合計5ライセンス使用しています。RPA担当は、社内での活用推進と社外への提案を兼ねた営業と、ロボットの構築・運用を担当するシステムエンジニアの混成チームで、合わせて約10人が所属しています。社内で得られた知見や失敗も踏まえた上でBluePrismのライセンス販売と導入支援を行っており、既に本契約に至ったユーザーを含めて現在数社でのテスト運用が進行中です。

―システム構築やアウトソーシングの事業も展開する企業として、RPAをどのように位置づけていますか。

システム構築との違いで言うと、RPAのターゲットとなるのは、相対的に“小粒”でシステム化が行き渡らない業務や、システム化によって新たに生じることもある転記などの付随的業務と考えています。

アウトソーシングとの比較で言うと、人間よりも速く・ミスなく作業を処理できるRPAの活用により、コスト削減や作業品質の向上が期待できます。私自身、アウトソーシングサービスを提供している顧客企業にRPAをご提案したのがきっかけで、現在のようにRPAを専任で担当するようになりました。

RPAは、単に「目の前の作業を自動化できればよい」という目的だけで使うツールではありません。ロボットの導入にあたって最も重要なのは「それを機に、人間がより付加価値の高い業務へ就き、企業全体の価値を高めていくこと」。つまり、RPAの活用とは本質的に「組織・業務の構造を改革する取り組み」だと考えています。

エンタープライズRPA導入のポイントは3つ:「対象業務」、「社内の体制」、「RPAツール」

―RPA導入にあたってのポイントについて「対象業務」「社内の体制」「RPAツール」の3つを、この順で検討すべきとの説明がセミナーでありました。なぜ、この順番なのですか。

「とりあえずRPAを導入する」ことが自己目的化し、運用を続けられなくなるケースが多いからです。「手間が多い工程を改善する」「ロボット化を機に、業務の属人化を解消する」など、検討の始めに、なるべく自社がRPAで目指すゴールを明確化するのが理想です。

もっとも実際には、改善を要する忙しい現場であるほど棚卸しの時間が取れないので「ロボット化を希望する業務のリストを渡しても3カ月戻ってこない」というケースがままあります。これでは前に進みませんから、あえて対象業務は決めずに「とりあえず」導入し、小規模なテストを重ねながら自社にとっての有効性を探っていくアプローチもありうると思います。「部分的なロボット化で現場に余裕が出てきたところで、本格的な検討に取り組む」ということです。

ただ、そのときでも「最終的にイメージするロボットのスケール規模」だけは、あらかじめ想定しておいたほうがよいと思います。「テスト用にロボット1台を運用する」という直近の条件だけでツールを比較すると、長い目でみたときのコストや必要な機能について正しい判断ができないためです。

―3つのポイントの最初となる、ロボット導入の「対象業務」についてですが、選ぶ際に全自動化を目指す必要はなく、6割程度を自動化できればよいとのお話がありました。

これは、あるユーザーの例が分かりやすいと思います。「RPAで作業時間を削減したい」というご依頼で、具体的には「受信メールに添付されているExcelファイルの内容に応じ、社内システムへ情報を入力する作業」を自動化したいというのが、当初うかがった先方からの希望でした。

この入力作業はパターンが非常に多く、ロボット化するとすれば相当複雑な作り分けが必要だったのですが、よくよく話を聞いてみると、実はもっとも時間を要していたのは入力作業ではなく、前段階でExcelファイルをチェックする工程だったことが分かりました。そこで、入力は手作業のまま、チェック作業のみロボットに置き換える方針へ見直した結果、それだけで従来の作業時間から7割の削減を見込むことができたのです。

―ロボット化に適したポイント・有効な範囲を見分けるのが重要ということですね。

はい。ですからわれわれがRPAの導入支援を行う際には、ロボット化のターゲットを選定するにあたって「その作業を、席の横で見せてください」とお願いしています。

RPAによる業務効率化を戦略的に進める上では、部署間の連携を含めた業務の全体像を把握することも重要ですが、まずは作業者レベルでの実情を知るところから出発すべきだと思います。説明を聞くだけでは分からないこと・隠れていることも多いですから、会議室でのヒアリングで済ませて現場を見ないような検討方法は避けたほうがよいでしょう。

エンタープライズRPAを成功に導くのは、業務部門出身と情報システム部門出身の混成チーム(BluePrism推奨)

―RPAに対するプラスのイメージを、社内で早めに広げる必要があるとも聞きました。

導入をスムーズに進めるためにも「社内アピール」の視点を持つことは重要です。これは当社がBluePrismを導入したときの失敗ですが、最初に投入した作業との相性が悪く、思ったほどの効果が出なかったのです。「こんなものか」という印象を持たれ、ネガティブな噂が他部署にまで広がってしまい、そのつまずきを挽回するのにかなり苦労しました。

エンドユーザー主導での開発運用が特長とされるRPAツールにもさまざまな種類があり、サーバーやクラウドでの大規模運用も想定したエンタープライズ向けの製品に関して言えば「現場で自由に使ってみてください」といきなり開放してしまうのは危険です。いたずらに「難しい」という印象を植え付けないためにも、構築のノウハウがきちんと学べる機会を設け、教育と開発を両輪で進めていく必要があります。

―2つ目のポイントである「社内体制」についてもうかがいます。ツールを扱う現場のスタッフを一時的にでも限定するのだとすると、業務部門主導で業務改革を進めるというRPAのコンセプトとの関係が気になります。

RPAを推進し、また必要な統制をかけるための組織横断的なチームを設けて、業務部門出身・情報システム部門出身のメンバー双方が役割を分担することが重要です。RPAというコンセプトを世界で初めて打ち出したツールベンダーのBluePrism自身がそうしたチームづくりを推奨しており、当社のチームも同様の考えのもとで構成されています。

従来ありがちだった「情報システム部門が音頭をとり、業務部門にヒアリングしてシステムをつくったのに、完成したシステムは現場で使いものにならない」という状況に陥らないようプロジェクトを推進していくことが、RPAを展開していく上での重要なポイントです。ロボット導入を立案し主導するのはあくまでも、業務改善に対する真のニーズを持っている業務部門の役割です。

また、業務部門はロボットの実装についても、簡易なものから始めてなるべく多く担当するのが理想です。これは、業務部門主導というコンセプトの問題であるとともに、ロボットを量産化するための条件でもあります。

一方で情報システム部門のチームメンバーは、メンバーのITリテラシーにかかわらずロボットを容易に、かつ適切につくるための仕組みやルールを設けて、できあがってくるロボットを審査するのが役割です。運用環境の管理などに加えて、難度の高いロボットの実装に関しては、やはり彼らが担うこととなるでしょう。

―最後のポイントである「RPAツール」の選定についても聞かせてください。手軽に始められる印象が強いRPAですが、全社的な運用が前提の「エンタープライズRPA」を採り入れるには相応の決意と準備も必要なようです。それでもなお、貴社がエンタープライズRPAのツールであるBluePrismを推奨するのは、なぜでしょうか。

RPAは遠からず、Microsoft Officeのように社内全員が使うツールとなり、今後新しく生まれる業務については「どこにロボットを使うか」を考えるのが当たり前になるでしょう。OCR(光学文字認識)やAI(人工知能)などとも連携しながら、あらゆる業務がデジタルデータでの処理に移行していく「デジタルトランスフォーメーション」の基礎を、RPAが形づくることにもなります。大企業で一般化しつつあるそうした認識が、2018年のうちに中堅・中小企業にもかなり浸透していくと考えています。

サーバー上で管理し、個別のロボットを一元管理するエンタープライズRPAは確かに、端末単位で導入・活用できるツールのような手軽さ・わかりやすさに欠けています。ただ近い将来、社内で数十台以上にわたるロボットを稼働させるのが確実であれば、そうなったときの統制やセキュリティの構築に対応しうるエンタープライズRPAを最初から導入しておくことで、将来的な移行のコストを抑制できるのも事実です。

業務部門主導での構築に適したユーザーインターフェースと、連携可能なシステムの豊富さ、あらゆる操作履歴を改ざん不能な形で自動的に記録するといった内部統制への適合性など、エンタープライズRPAにおいて最善・最高の機能を備えたツールがBluePrismだとわれわれは確信しています。検証段階から本稼働、全社展開までのサポートを通じて、1社でも多くの組織改革、業務改革をお手伝いできればと願っています。

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